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十色の追想  作者: 詩庵
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優しい記憶。

ー怜燈視点ー

「私は、この家の地下にいる子供達の父親です。」

この言葉から始まった傀儡人形の話はこうだった。


先に話し始めた方が父親で朧 律、

もう片方の静かな方が、霞草 想奏という名だったそうだ。

二人はそれぞれ、かなり名のある神族の子だと言った。

しかし、考えの違いと結婚を許されなかったことから駆け落ちをした。

その後、二人の間に生まれたのが、

地下に隠されている、双子の優朝と優夜。


二人の一族はどちらも、裏の世界に属する別々の一族。

駆け落ちした二人は処罰対象だったのだ。

すなわち、この世からの抹殺を意味した。

二人は深い山奥に身を隠し、認識を阻害する強い結界を張っていた。

しかし、それも長くは持たず追っ手が来てしまった。

倒したものの、二人とも瀕死の重症を負った。


二人はそれを見越していた。

傀儡人形にある条件付きで自身の魂を吹き込み、子供達の世話をしていた。


俺達がここに来たのも、偶然ではなく呼び寄せたのだそうだ。

「そろそろエネルギーも限界にきていたので、賭けに出てほんとに良かった。」

今にも動かなくなりそうな音を立て、動いた律さんの傀儡人形がそう言った。


二人は魂を移すと同時に、家を中心に防護膜を貼っていたらしく、

害意があるものは、近づけなくなっていたそうだ。

そこを通りかかった俺達を、意識的にこっちに来るよう誘導した。

と言うのが事の真相だった。


律さんは俺たちに、自分達の神力の事を少し教えてくれた。

律さんは人や物の感情を読み、操るれる。

想奏さんは人や物の記憶を見たり、書き換えたりする事ができると言った。


俺も、今まで神族に会った事がないわけではない。

むしろ会っている方であったが、

二人の力はおそらく感情と記憶の加護を受けた一族の直系。

二人の能力の話を聞いて、流石にまずいと思った。

それを感じたのか律さんが、思い詰めたように懇願してきた。


「無理なお願いをしているのは、重々承知しております。

しかしこの子達にはもう、貴方様に頼るしか生きる術はないのです。

既に存じていらっしゃるかもしれませんが、私達のエネルギーはもう尽きかけております。

罪があるのは、一族を捨て自由を求めた私達だけなのです。

この子達に罪はありません。

ですが、この子達にはどうしても生きて欲しいのです。

神に至りし貴方様に、ーこのようなお願いをするのは身の程知らずかもしれません。

ですが、どうか……どう……かお願……い……いた……し…ます………」

律さんの最後の言葉だった。


この言葉を残して、律さんの魂の宿った傀儡人形は音を立てて崩れ落ちた。

きっと俺に、この願いを聞き届ける義務はないのだろう。

でも、大切な人の幸せを願うこの人達の願いを、聞かなかった事にはしたくない。


そう思いまだ少しばかりのエネルギーを残しているであろう想奏さんに向き直った。

「願いを聞き届けよう。そなた達の思い無駄にはせぬ。」

そう告げると、想奏さんは

「ありがとうございます。どうか二人をお願い致します。

二人とモ……アイ……シテ……ル……」

そう言い残し、この身体ごと崩れ去ってしまった。


この言葉を言う為だけに、魂さえもエネルギーにしているとは……

俺は親の愛と言うものを感じ、あらためて二人の願いを叶えようと思ったのだった。


こうしてはいられない。

俺は崩れ去り灰のようになった想奏さんの傀儡人形から、

目の部品だったのだろう。

ビー玉のようなものだけを拾った。


律さんの傀儡人形を綺麗に整え、地下に行き弱った双子を抱きかかえ家を出たのだった。

家から出ると、響達が心配そうな顔で近づいて来た。


ー響視点ー

怜燈兄さんが家から出てきた。

その腕の中には、二人の小さな赤子がいた。

しかし二人はとても弱っており、今にも死んでしまいそうだった。

兄さんは私に

「頼めるか?」

と聞いてきた。

それは、私が失敗するなんて事はないと信じているような

信頼に満ちた静かな声だった。


ー紫音視点ー

怜燈兄さんに、姉様が赤子達の治療を頼まれた。

姉様はずっと不安そうだった。

だけど兄さんの一言で安心したのか、とても穏やかな顔になっていた。

怜輝兄さんは完璧な人だ。

どこか神々しくて綺麗だし、まるで神様のようだ。


姉様の治癒術はとても綺麗だ。

父様譲りの腕前はもちろんだけど、その速度と美しさは父様以上だと思う。


父様の御実家の蝶花家は、治癒術に長けた人が多い家なのだそうだ。

私と姉様は血は繋がっているけど、

使える術は異なる。

姉様は父様の治癒術を、私は母様の薬草術を得意としている。

私は簡単な治癒術が使えるけど、姉様は薬草術は使えない。


この薬草術は特殊で、一度取り込んでしまえば完全に理解し使いこなせる。

取り込めば、取り込むほど力が増していくのだ。

でも物によっては、解析に時間がかかり苦しくなる時もある。

加減をしなくてはいけないから大変だ。

そんな回想をしている間に治癒が終わったみたいだ。

流石姉様は凄い人だ。

私なんかよりずっと……


ー優夜視点ー

これが今の僕が知っている出来事だ。

兄さんや姉さんが寝ている間にこっそり見た記憶、記憶に強く結びつく感情。

僕達は、父さんと母さんに愛されていた。

その事実だけで僕は幸せだった。

それに僕には父さんや母さんはもういないけど、ずっと兄さんや姉さんがいてくれた。

生まれてからずっと一緒の優朝まで。

僕はこれからも、こんな幸せが続くことを願わずにはいられなかった。

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