あの日は霧の深い春の明け方だった。
あの日は霧の深い明け方だった。
自分で見たわけじゃない。
でも僕にはわかる。
だって、観えるから。
僕には双子の兄がいる。
僕達には不思議な力がある。
僕は、人や物の記憶を観て、改竄できる。
だから僕は兄ですら知らない、あの日の真実を知っている。
この力に気づいたのは三歳の時、春の夕暮れ時だった。
ふと地面に触ったら、いろんな情報が流れてきてびっくりした。
でもそれが、地面の記憶だって事はすぐにわかった。
きっと本能なのだろう。
僕は少しずつ能力を試していった。
木は、見たものを。
風は、会話を。
水は、変化を教えてくれた。
だからあの日、何があったか僕は知っている。
僕は三歳になるまで、自分の親の事を知らなかった。
僕らを育ててくれたのは、兄さんや姉さんだった。
でも兄さんや姉さんは、血の繋がった家族ではなかった。
皆、身寄りのない子供達。
家族になる事で身を守っていた。
僕達も同じなのだろうと思っていた。
ー怜燈視点ー
あの日は霧の深い春の明け方だった。
響達とまた、安全な土地を求めて翔んだ先は、霧の立ち込める山の中だった。
本来なら、このような場所に出るはずではなかったから驚いた。
また翔ぼうにも、月が沈みかけていたため力が使えず翔べなかった。
仕方なく、歩いて移動しようという話になった。
歩き始めようとしたその時、聞こえてきたのは小さな泣き声だった。
俺は耳が良い。
おかげでかなり遠くの音を聞くことができる。
だから泣き声が聴こえるだけなら、そこまで驚かなかった。
しかし、翔んだ場所があまりにも人里離れた場所だったから、とても驚いた。
そうしているうちに、響が人がいると言い始めた。
「微かだけど生きてる」
それを聞いて俺達は、辺りを探り始めた。
俺は音を辿った。
見つけたのは古ぼけた一軒家だった。
そこには二体の傀儡人形がいた。
エネルギーが足りないのだろうか、その人形はいつ止まってもおかしくないように見えた。
それに、傀儡人形にしては様子がおかしかった。
操り人が見えないのだ。
その異様さに固まっていると、あろう事か傀儡人形が滑らかに話し始めたのだ。




