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十色の追想  作者: 詩庵
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願いと思い。

ー鬼鐵視点ー

あやつら、やはり行きおったか……

二人の気配が南に移動していく。

「全く……」

諦めに近いため息を吐きながら俺は、重い腰を上げた。


南に行くと案の定、戦闘が始まる直前だった。

刀を構える時雨を相手に、

少年は後ろに少女を庇いながらも、かなりの殺気を出していた。

少年の気の流れが変わった。

下手をすれば、二人は八裂きにされかねん。

そう思うほど空気はピリついていた。

これはまずい。

そう思い、俺は拳骨を振り下ろした。


ー怜燈視点ー

「馬鹿者!相変わらず時雨は、相手を見て動けといつも言っておろう!

凪もだ!駄目だとわかっておるなら身を張ってでも止めんか!!」

「「はい……」」

拳骨を振り下ろした男は、そのまま物凄い剣幕で少年達を一喝した。


振り向いた男は、初老に見えた。

ただ、老人には見えない気迫があった。


特に目を引いたのは、紅葉を思わせるほど鮮やかな紅に染まった右目だった。


老人は

「私の弟子がすまなかった。よくよく言い聞かせるゆえその殺気は仕舞っていただけぬか?」

と言ってきた。

そこで初めて自分が殺気を放っている事に気づいた。

「いえ、こちらも申し訳ありませんでした。

知らなかったとはいえ、庭に勝手に入り込んでしまい、申し訳ありませんでした。」

「いや、先に手を出そうとしたのはこちらだ。

貴殿が謝ることはない。それより挨拶をさせていただきたい。

洞穴の中の二人にも会わせてもらってもよろしいだろうか?」

「……わかりました。響、桜花、大丈夫だから出ておいで。」

そう言うと奥から二人が出てきた。


「怖い思いをさせてごめん。もう大丈夫だ。」

「大丈夫よ。兄さんのこと信じてるもの。」

「……こちらが私の家族です。四人で旅をしております。」

「そんなに警戒しなくても大丈夫です。金色の君よ。

私はこの島で、刀鍛冶をしておる鬼鐵と申す。

こちらは弟子の時雨と凪。

先ほどは怖い思いをさせてしまい申し訳なかった。

お嬢さん達もすまなかった。」

さっきの怒り方からは想像できないくらいの丁寧な口調で、老人は喋り出した。

それにこの感じ、私達の正体に気づいている……


ー鬼鐵視点ー

気配を感じた時から只者ではないとは思っていたが、これは想像以上だ。

少年少女達は皆人の姿をしていたが、その内に秘める気配は人ならざる者の気配だった。

特に、金色の少年と桜色の少女は少なくとも、神世代に匹敵する血の濃さだろう。

気になったのは紫の少女と赤紫色の少女だ。こちらも只者ではない。

何か別の存在が、混ざっている気配があった。


金色の少年は相当警戒しているようで、

その殺気は落ち着いたとはいえ、危険なものに変わりはなかった。


「金色の君よ。我らは貴方達に手を出すつもりはない。

出来れば話し合いをしたいのだが、一度こちらの家に来てはいただけぬか?

ここにいるもの以外は誰も居らぬ。それだけは信じていただきたい。」

「わかりました。」

返事を聞き届け歩き出すと、少年達はゆっくりと後をついてきた。


家に着くと、俺は

「貴殿達は、何用でこの地へいらっしゃったのだ?」

と一番気になった事を聞いた。


「妹の療養のため、人のいない場所を探していたのです。

ここは集落も無さそうでしたので、ここに落ち着きました。」

「そうか、だが、この島は海流の流れが特殊な場所。

故に道を知らぬ者が辿り着けるような場所ではないはずだ。

それに貴殿達は、そこの姉妹を除いて血は繋がっていないように見えるが。」

「その通りです。

ですが、互いを思い合う気持ちだけは、本物よりも強いと自負しております。

それと鬼鐵殿は私達の正体に気づいているのに、なぜそのような質問をなさるのですか?」

ここにきて予想外の問いに驚いた。

俺の見立てではこの少年はかなり若いはずだが、ここまで頭が切れるとは……

「いや、私にわかるのは貴殿達が人ではないと言うことだけ。

その正体を見ることは叶わぬ。強い同族の気配を感じたまでだ。」

そう答えると少年は、何かを思ったようで急にその姿を変えたのだった。


ー怜燈視点ー

これ以上の探り合いは不毛だろう。

そう思い、私は変化を解いた。

「私の名は怜燈。見ての通り月夜族です。そう言う貴方の正体は?」

「信じてもらえるかはわからぬが、私は天狗族だ。」

天狗族、噂には聞いていたが、ここまで人と変わらぬ姿とは。

「信じましょう。それともう探り合いはいいのではないですか?」

「そうだな。余計な事をしようとするのはやめにしよう。

貴殿達も楽にするといい。」

「ご配慮恐れ入ります。

そして、不躾かもしれませんが一つお頼みしたいことがございます。

聞いてはいただけますか?」

「聞こう。」

「私達をしばらくここに置いて欲しいのです。もちろん対価は払います。」

「……わかった。好きなだけいるといい。

だが対価はいらぬ、自分の家だと思って過ごすといい。

それと私の事は鬼鐵と呼んでくれ。」

老人、いや鬼鐵さんはそう言ってくれた。

この人は、聡明で優しい方だ。

だからこそ何かできれば。

そう思い私は言葉を発した。


「お気遣い傷み入ります。

ですが、それでは私の気がすみません。

何かできることがございましたら、おっしゃって頂きたいのです。」

そう言うと、鬼鐵さんはしばらく思案するかのように静かになった。

そして、一つの提案をしてきた。


「そう言ってくれるなら、貴殿達が再び旅を始める時。

弟子二人を一緒に連れて行ってはくれぬか。

もちろん無理にとは言わぬ。

貴殿達を守る力くらいはある。迷惑はかけんだろう。

一度外の世界を見せてやってはくれぬか。」

「?!師匠!それはどういうことですか?!俺達のことが邪魔になったのですか?!」

「先生!なんでですか?!さっきのこと怒ってるんですか?!」

私が返事をする前に二人の少年、時雨と凪がそれぞれ抗議の言葉を発した。

「怒ってはおらんし、邪魔だとも思わん!お前達のことは大事に思っておる。

だが、二人は少し外の世界も知るべきだ。

この島はお前達には狭過ぎる。

生きるということは、知ると言うことだといつも言っておろう。

だが、これは俺が勝手に言ったことだ。

二人が望まぬならば無理強いはせん。自分達で選びなさい。」

「……承知いたしました。少し時間をください。」

「……わかりました。一度考えます。」

二人が返事をすると、

「ああ、そうするといい。怜燈殿もそれでいいだろうか?」

「はい。私はどちらでも構いません。

お二人の選択を尊重いたします。皆もそれでいいかい?」

「ええ。」

「いいわ。」

「……」コク

三人に確認をすると、そう返事が返ってきた。

「はい。皆構わないそうなので、後は二人に任せることにします。

あと、私の事は怜燈とお呼びください。

年長の方に、そこまで気を使われると気恥ずかしいですので。

響、紫音、桜花。私は荷物を取りに行ってくるから三人ともここで待っていてくれ。すぐ戻る。」

そう言い残し私は、家を出たのだった。

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