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十色の追想  作者: 詩庵
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色の交差とすれ違い。

ー響視点ー

「じゃあ、翔ぶよ!」

そう言った怜燈兄さんの身体は淡く輝き出した。次の瞬間私達は、空の上にいた。


景色が流れ世界が移り変わる。

そして一分も経たないうちに、私達は知らない場所に降り立っていた。

「怜燈兄さん、ここは?」

「風の大陸近くの島だよ。

ここは集落がないからしばらくはゆっくりできるはず。桜花、体調は大丈夫か?」

怜燈兄さんがそう聞いても、桜花は何も答えなかったが小さく頷いていた。


「怜燈兄さん!早く住まいを作ろう!夜が明けちゃう!」

紫音がそう言いながら怜燈兄さんの手を引っ張った。

「わかった、わかった!今作るよ!ちょっと待ってね。」

「うん!今回は大きめのがいい!!」

「任せろ!兄さんが大きい洞穴作ってやる!」

「ありがとう!」

「土層彫刻!」

怜燈兄さんがそう唱えると、サッと音がして山肌に穴が開いた。


「できたよ!まだ日の出まで時間があるから、三人は寝てていいよ。」

そう言って怜燈兄さんは荷物を洞穴に運び始めた。


怜燈兄さんと旅をするようになって色んな事を学んだ。

特に兄さんは気の扱いが上手い。

さっきも土の気を使ってあっという間に住まいを作ってしまった。


普通なら気は自分の最適性の属性を基本として、後は気の相性で使えるか使えないかが変わる。

けど兄さんは、その能力に差はあるにしろ、五属性全てを扱っていた。


私も水の最適性を持っているが、兄さんほどは使いこなせていない。

兄さんは、発想と場数次第と言うけれど、私にはできそうになかった。

それより、神力の方が使いやすかったのだ。


荷物を運び終えると、あんなに元気いっぱいだったのに疲れたのか、紫音はすぐ寝てしまった。

桜花もうとうとしていたので、私は桜花を布団に寝かせて外に出た。

外に出ると、怜燈兄さんが姿を変え何処かに行こうとしていた。


「怜燈兄さん!どっか行くの?」

「あぁ、響。周囲を少し見てくるだけさ、すぐ戻る。」

「今回は夜も一緒に過ごせるの?」

「そうだね、今回は夜もみんなと過ごすよ。だから先に寝てて。」

そう言って怜燈兄さんは出かけてしまった。


怜燈兄さんと旅をし始めてもう二年になるが、兄さんは夜になるといつも出かけていた。

それがたまらなく不安で、心配なのだ。


ー怜燈視点ー

響、心配してたな。

そう思いながら私は、山を駆けた。

響の言うとおり私は、夜のほとんどを外で過ごしている。

なぜなら私は元々夜行性で、夜の方が力が強くなるのだ。

それに普段は、誰が来るかわからない山で過ごしている。

特に夜は周囲を警戒しなければならなかった。

不安にさせていると知っていながらも、私はどうしようもできなかった。


しばらく走ると、私はあたりを見回し痕跡を探し始めた。

誰か住んでる。

空から見た景色では、少なくとも集落はなかった。

しかし、目の前には誰かが歩き回ったような足跡があるのだ。


大人一人と、子供一人……いや二人か。

生活跡。

おそらく危険ではないが注意する必要があるな。

そう思い私は引き返したのだった。


ー鬼鐵視点ー

……何か来たな。

ある晩、外に何かの気配を感じた。

断定はできないが、人ではない何かの気配だった。

異質ではあったが、危険だとは思わなかった。

むしろ、懐かしかった。

その気配はしばらくあたりを動き回った後、静かに消えていった。

時雨がここに来てから二年。凪が来てからもうすぐ一年が経つ。

ようやく二人とも、安定してきたところだ。

何も起きなければいいが……


ー時雨視点ー

ある朝起きると、師匠にしばらく南の方には行くなと言われた。

わけを聞くと、「何かいるかもしれん。」とだけ言われた。

よくわからなかったが、一応守ろうとは思った。

しかし、その意味を俺はすぐ知ることとなった。


ー紫音ー

朝目を覚ますと、朝ごはんの時に怜燈兄さんから

「北の方には、人が住んでるから近づいたらだめだよ。」

と言われた。

そう言われて少し驚いた。

普段なら兄さんは、そんな近くに人がいる所に住まいを作ったことはなかったからだ。

「わかった!」そう返事をして私は食事に戻ったのだった。


食事が終わると、私達は四人であたりを散策した。

あたりには、今までに見たことのない珍しい植物が沢山あった。

「ここの植物珍しいね!」

そう言うと

「そうね、独自の生態系があるのかしら?新しい薬が作れるかもしれないわね!」

そう姉様に言われて、ここで過ごすのがもっと楽しみになった。


昼前に住まいに戻って、昼食を摂った。午後も出かけてもいい?と言ったら、

「いいわよ!日暮れまでには戻ってきてね!あと、お水を汲んできて頂戴!」

そう頼まれた。


植物採取の前にお水を汲みに行こうと思い、川辺に行って水を汲んでいると、

「何してるの?」と急に声をかけられた。

思わず叫び声を上げてしまった。

恐る恐る振り向くとそこには、海のように青い瞳をした男の子がいた。


ー凪視点ー

「南の方には行くな。」

朝起きてすぐにそう言われた。

「わかりました。」と答えたその日の昼過ぎ、水を汲みに行くとそこには小さい女の子がいた。

ここに俺達以外の人?!

最初は驚いたが、それより好奇心が勝って声をかけてしまった。

「きゃーー!」

振り返った女の子は大きな叫び声をあげた。

紫の大きな瞳が印象的な可愛い子だった。

驚いて、固まると女の子はすごい勢いで逃げていってしまった。

追おうとすると

「凪!今叫び声が聞こえたけど何があった!?」

そう言いながら時雨が走ってきた。

「女の子がいたんだ。」

「ここに?嘘だろ?」

「本当だよ!小さい女の子がいたんだ!」

「……まさか、師匠が言っていた何かって、凪!南へ行くぞ!」

そう言って時雨は走り出した。


「先生は行くなって言ってなかった?!」

「言ってたな。」

「だよね!?じゃあなんで走ってるの?!」

「そりゃ、報告する前に確かめてみたいだろ?やばいと思ったらすぐ戻るさ!」

こうなったら時雨は止まらないだろう。

それに面白そうだ。俺は時雨に続いて走り出した。


ー怜燈視点ー

「きゃーーー!」

叫び声が聞こえた。紫音だ。

慌てて外に飛び出すと、紫音が息を切らしながら山を登って来る所だった。


「大丈夫か?!」

そう聞くと、紫音は目に涙を浮かべながら

「兄さん、違うの私は北になんか行ってない!

約束破ってないの、でも……でも、ごめんなさい。

人に見つかっちゃった、わざとじゃないの、ごめんなさい、ごめん、なさい……」

相当驚いたのだろう。紫音はかなり動揺していた。


心配事が的中してしまった。彼等から来てしまったのだろう。

「大丈夫。わかってるよ。だから落ち着いて。」

紫音を撫でながら私は、急いで洞穴に幻術をかけてその場を離れた。


「時雨ー!待って!速い。」

「凪が遅いんだよ!」

そんな会話をしながら二人の少年が走ってきた。


「おかしな、この辺だと思ったんだけどな。」

「おかしくはないと思う。だってここに焚き火の跡がある。誰かはいたんだよ!」

「逃げたか?……ここ、何か変だな、何もないようで、あるような。」

「時雨?」

「凪、後ろに下がってろ。ここを斬る。」

「…… え?ここ壁だよ?!刀が折れちゃう、先生に怒られるよ……」

「大丈夫、俺の予想ではここには壁はないはずなんだ。はぁーー!」

そう言いながら、橙色をした少年が、響達がまだ中にいる洞穴の入り口を斬ろうとした。

そこで私は慌てて飛び出した。


「待ってくれ!斬ってはいけない!!」

刀は寸前のところで止まり、少年はうっすらと笑みを浮かべた。

「やっと出てきた。あなたは誰ですか?どちらからお出で?」

「答える義理はありません。我々に戦いの意志はありません。

次の満月には出ていくので見逃していただけませんか?紫音少し下がっていて。」

「そんな答えが許されるとお思いで?

ここは我ら一族の山。素性のわからぬ者を留め置くことはできかねる。」


チッ、交渉は無理だな。

……いっそ消すか?

そう判断し、静かに気を練った。

手を出す直前、少年の頭には拳骨が降り注いだ。

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