凄腕剣士の令嬢が、王子と手を取り合うまで
「オリヴィア、君との婚約を破棄したい」
このキャンベルト国の王太子であるイライアス殿下の言葉に、わたしは目を見開きました。咄嗟に何も言葉が出てきません……が、周囲のざわめいた声に、どうにか気持ちを落ち着かせます。
「何故でしょうか」
意図せず、絞り出すような一言が何とか出ました。すると、殿下が笑いました。今までよく見せていた穏やかな笑みではなく、口の端を上げて、ニヤッと。
「私は……いや、俺は俺でありたいからだ。第一王子じゃなく王太子じゃなく、次期国王じゃなく。俺は一人のイライアスという人間でありたいから。あなたとの婚約は必要ない」
殿下の「俺」という一人称に、さらに周囲がざわめきました。
殿下は、とても優秀でした。勉強面はもちろん、魔法の才能にも恵まれて、教師に教わりつつその才能を順調に伸ばしているという、もっぱらの噂です。
ざわつく周囲を、殿下がぐるっと見回します。
今この場は、そのイライアス殿下の誕生日パーティーの会場です。殿下の誕生日を祝うために集まった人々を見回し、そして最後に目をとめたのは、国王陛下であり殿下の父君です。
「父上、勝手を言って申し訳ありません。婚約の破棄だけではなく、俺は城を出て行きます。城を出て、俺という一人の人間として生きていきたいのです」
「イライアス、それはだな……」
国王陛下は何かを言いかけて、しかし詰まったようにそこで言葉が途切れます。その途切れた瞬間に、わたしは口を開きました。
「無理だと思いますよ、殿下。城で安全に守られて育った殿下が、一人で一歩外に出たところで、まともに生きていけるはずありませんから」
殿下の剣呑な目がわたしを捕らえます。まあ、真っ向から否定したのですから、それも当然でしょう。
「なぜ無理だと言い切る?」
「実際に無理だからですよ。街で買い物をした経験さえないでしょう?」
「あるさ、そのくらい」
殿下はあっさりそう言うと、懐からカードのようなものを取り出しました。それをわたしにポイと投げて寄越します。
「買い物はもちろん、物を売ったこともある。魔物を倒したこともあれば、捌いたこともある。調理もできるし、野宿もできる。無理だと言い切る理由、他にあれば聞くが?」
「………………白銀位」
殿下の言葉にまともに返すことなどできず、わたしはただ渡されたそのカードを見てつぶやきました。
白銀位とは、冒険者と呼ばれる人たちのランクの一つです。
冒険者は「困ったことの何でも屋さん」です。街中でのちょっとした仕事から、街の外での危険な仕事まで、色々な技能を持つ人たちの集まりです。
自分の持つ技能を「冒険者ギルド」に登録しておくと、その技能関連の困りごとが発生したときに、冒険者ギルドから連絡が来て、解決すれば料金をもらえる、というもの。
街中での仕事は、小遣い稼ぎ程度に登録している人が多いそうですが、実際に何かあったときにすぐ頼むことができるので、街に住む人々からすると、大変助かっているそうです。
そういった人たちは大抵、冒険者ランクの一番下である青銅位に属しています。
一方、街の外での仕事には命の危険が伴います。魔物と呼ばれる、力が強く動きが速い凶暴な生き物が存在していて、人を襲うからです。
そういった街の外で活動できるランクを持つのが白銀位であり、最高位の黄金位なのですが、冒険者ギルドもそう簡単に白銀位を与えてはくれません。何度も厳しい試験をくぐり抜けて、やっと与えられるランクが白銀位です。
まさか、そんなものを殿下が持っていると、思うはずもありません。
「納得したな?」
殿下は近づいてくると、わたしの手にあるカードを抜き取りました。そして、もうわたしに興味はないと言わんばかりですが、そうはいきません。わたしの方に俄然興味が湧いてきてしまったからです。
「ええ、納得しました。そこでご相談なのですが、わたしと一緒に冒険者やってみませんか?」
「………………は?」
殿下がポカンとしています。ついでに周囲の人たちもそうですが、そっちはとりあえず放置して、わたしも忍ばせておいたカードを出しました。殿下に手渡すと、目も口も大きく開きました。
「黄金位!?」
「はい。剣姫のビアって有名なんですけど、知りません?」
「……知ってる」
呆然とつぶやいて、わたしをマジマジと見てきます。その目がわたしの顔からその下へ移ります。
別に変な意味でも何でもなく、本当にわたしが"剣姫"なのか、体つきを見ようとしたのでしょう。けれど、今わたしが纏っているのはドレスですから、筋肉のつき具合とか、分かるはずないですけどね。
「で、どうですか?」
わたしの促しに、殿下の表情が改まったものになりました。
「せっかくの黄金位からのお誘い、受けない方が失礼でしょう。こちらこそ喜んで。よろしくお願いします」
「あら」
ガラッと口調まで変えてきましたね。
別に格上から誘いがあったからといって、受けなければいけない決まりなどはありません。けれど、白銀位から見ると、黄金位を持つ人は特別なのだと、わたしも知っています。
つまりは、それだけ殿下は本気なのだということです。
その殿下は、フゥと息を吐いて向けた視線は、国王陛下でした。
「父上、俺が何度も城を抜け出しても、何も言いませんでしたね。今だけはと、俺の自由を許してくれていることは分かっていました。そのお心に添うことができず、申し訳ありませんでした」
「イライアス……!」
蒼白な顔をした国王陛下に、殿下は一度大きく頭を下げました。そして、周囲を見回します。
「皆も良く聞け。今この場において、王太子イライアスは死んだものと思って……」
「パーティー中に申し訳ございません! 緊急のご報告です! 魔物が! 大量の魔物が、街に近づいてきています!!」
殿下の宣言は飛び込んできた兵士によって遮られ、その叫ばれた内容に、会場のざわつきは悲鳴に変わりました。
*****
その兵士の報告によれば、魔物の総数は多すぎて不明。ただ後方には、魔物の中でも特に強い力を持つ魔物の姿が複数確認できるとのこと。
近隣の町や村に急いで避難指示は出したものの、おそらくこの王都から遠い場所は間に合わないだろう、とも。
「避難してきた者の受け入れ準備を。街の者たちも避難させろ。そして、兵力を集められるだけ集めろ。迎え撃つ。総指揮は……」
「私にやらせて下さいませんか、陛下」
指示を出す国王陛下に、立ち上がってそう言ったのは、殿下でした。
つい先ほど出て行くと宣言した殿下だけれど、さすがにあんな報告があって、そのまま素知らぬふりで出て行くことはできなかったようです。まあ、それはわたしも同様ですが。
立ち上がった殿下が、陛下にさらに言います。
「親不幸者の私ですが、一つくらい孝行させて下さい。無事、収めてみせます」
殿下が強く言い切ります。自覚と自信に満ちあふれた将来有望な王太子、と呼ばれていた姿です。……というか、気付けば一人称がまた「私」に戻ってますね。
わたしと殿下は婚約者どうしでしたが、月一回の定期交流以外の交流はありませんでした。
わたしが殿下が城を抜け出していることを知らなかったように、殿下もわたしがほとんど家にいることがなかったことなど、知らないでしょう。その程度の間柄でした。
だから今の殿下が、何をどう思ってそれを言っているのか、全く想像もできません。
ただ、自信に満ちた殿下の目を見て、周囲の人たちが安心した様子を見せて、陛下が少し泣きそうになりながらも、それを堪えて頷いたのは分かりました。
「分かった。総指揮はイライアスに命じる。見事、魔物を全て打ち倒してみせよ」
「はっ、承りました」
礼をもってその命令を受けた殿下は、わたしに視線を向けました。
「オリヴィア、君にも協力して欲しい」
「もちろんです」
言われるまでもなく。
こんな状況で、逃げるつもりなどありません。
*****
今、わたしたちは城壁に上がって、向かってくる魔物達を見ています。すでに目視で確認できる距離。強い魔物の姿も見えますが、それはまだ後方。ここに来るまでには、まだもう少しの猶予があるでしょう。
魔物の前方向には迎え撃つための高い土壁があり、それを越えると今度は深い堀が待っています。魔物は高い壁を越えたと思ったら、今度は堀に落とされるわけですね。
壁と堀を逆にしたらどうか、という意見もありましたが、それをしてしまうと、堀に落ちた魔物にわたしたちが攻撃することができないので、却下となりました。
ですが、今はまだ壁も堀も出番はありません。こちらの魔法が届く距離に、魔物が到達しました。
「用意」
緊張が高まる中、殿下が言って、右手を挙げます。それを見て、魔法士たちが一斉に構えます。
「放て!」
殿下の号令とともに、魔法士隊が一斉に魔法を放ちました。
前方にいる魔物に魔法が突き刺さり、魔物が倒れていきます。けれど、そんなことを全く気にすることなく、魔物達は前進してきます。
「デカいのを使う」
殿下がそう言ったと思ったら、体から強い魔力が吹き出て、わたしは息を呑みました。魔法士隊の人たちが、愕然として殿下を見ています。
――その瞬間、殿下が放ったのは、爆発の魔法でした。
「嘘でしょう……」
それは、黄金位のわたしでもそうそうお目にかかれないような、大きな魔法です。それだけの魔法を放っておきながら、殿下は平然としています。
「次、用意」
殿下の言葉に、魔法士隊たちが慌てて構えます。そして、再び魔法が放たれました。
そんなことを何回か繰り返して、かなりの魔物を倒したと思います。それでも、倒しきるには至らず、ついに魔物達が壁に到達しました。
とはいっても、それは分かりきっていたこと。わたしは剣を握り、隣の殿下に告げます。
「そろそろ、わたしも下に降ります」
「分かった。……気をつけろ」
殿下に頷いて、城壁を下ります。
魔法士隊は壁を乗り越えてきた魔物に向けて、単発に魔法を放っています。ですが、これをやり過ぎると壁を壊す結果に繋がる可能性もあるため、無理はしません。
そして、壁を越えて深い堀に落ちた魔物は、その高低差に耐えきれずに大体が息絶えますが、耐えきった魔物は弓兵が打ち倒します。
そのサイクルだけで全て倒すことが叶えば、わたしの出番などないのですが……。
――ズンッ、と聞こえた大きな足音に、わたしはその場から上を見上げました。高い土壁をさらに超える身長で、顔が見えています。高ランクの石の巨人の魔物が、そこにいました。
「放て!」
聞こえたのは殿下の声。同時に魔法が放たれて巨人に命中します。グラッと後ろに倒れた、と思いましたが、すぐ持ち直します。魔法が命中したところを見ると、若干凹んでいるように見えますが、その程度です。
巨人が右手を振り上げました。それを見て、わたしは声を張り上げます。
「皆、離れなさい!」
右手の拳が、壁にめり込みます。壁は耐えたけれど、ここからでも放射状に罅が入っているのが分かります。
そして左の拳が同じ場所に命中し……壁が壊れました。同時に、壊れた土壁が、こちらに飛んできます。
「「うわぁぁあぁぁっ!?」」
兵士たちの悲鳴が響きますが、それを見越して離れろと言ったわけですから、当たることはないでしょう。
下がる兵士たちとは逆に、わたしは前に出ます。ジャンプして、飛んでくる土壁を足蹴にして、一瞬で巨人と距離を詰めました。
――閃!
剣を横に振り抜きます。固い石の体に、はっきり傷がつきました。
巨人の右拳が迫ってきますが、その拳にわたしは剣をコツッと当てて、自らの体を浮かせて躱します。普通そんなことできないと言われるのですが……できるものは仕方ありません。
巨人の右腕に着地し、腕の上を走ります。狙いは、右肩。
剣を振り下ろして大きく裂いて、そのまままた上へと切り上げ……切断に成功。
「――」
巨人の表情など分かりませんが、自分の肩を見る目は、驚いているように見えます。
わたしは自分の足場にしていた右腕を切り落としたせいで、一緒に落下していきますが、ちょうど下にいた魔物を足台にしてジャンプし、ほとんど垂直の巨人の腹を駆け上がります。
魔法を使うための力を、魔力と呼びます。しかし、その力は、魔法だけに使うものではありません。
剣に魔力を流すと、剣が白く輝きました。こうすることで、切れ味が増すのです。
「はあっ!」
首元が見えて、わたしは気合いを入れるように声を出しました。しかしほぼ同時に、巨人の左拳がわたしをめがけて振ってきたのが見えました。せっかくのチャンスだけど避けるしかないか、と悔しい思いをしたときでした。
ガンッ、と飛んできた何かが拳をはたき落としました。その瞬間、わたしは足に力を込めて、剣を振り抜きました。首が白く光り、確かな手応え。そして、そこにあったのは、首が切断された巨人でした。
「よしっ」
小さくつぶやいて、倒れる巨人の体から飛び降りて、無事着地します。そして城壁を見上げれば、そこに見えたのは予想通り殿下の姿。殿下が魔法で、左拳をはたき落としてくれたのです。
軽く頭を下げて、わたしは剣を構えます。
巨人は倒しましたが、壁は壊されました。ここから魔物が流入してきます。ある意味、これからが本番です。
*****
――斬!
わたしの剣が魔物を捕らえ、そして倒れました。その瞬間、大きな歓声が上がりました。
「これが、最後ね」
その歓声の中、わたしはつぶやいて笑いました。さすがに疲れて、そのまま座り込んでしまいました。でも、何とか戦いきりました。魔物をすべて倒して、勝利したのです。
「オリヴィア、ありがとう」
「殿下」
魔物の血にまみれたわたしに、全く臆することなく近づいてきた殿下は、わたしに手を差し出してきました。
「やはり黄金位はすごいな。剣を振るって魔物を倒す姿が、まるで舞っているように見えて、空から降りてきた天女かと思った」
差し出された手に捕まりながら、わたしは大げさすぎる褒め言葉に、顔が熱くなるのを止められませんでした。
「ず、ずいぶん、口が達者なんですね」
「……え、あ、いやその別に変な意味ではなくてだな」
わたしが少し視線を逸らせて言うと、面白くなるくらいに殿下が狼狽しました。この方はこんなに面白い方だったんだろうかと、わたしも戦っている時に思ったことを素直に言うことにしました。
「そう仰る殿下こそ、魔法の種類や使うタイミングがバッチリでしたね。先々をすべて見通している聖人様なのかと思いましたよ」
「い、いや、魔法を使う者は、あの程度できなくては……」
赤い顔をしてまるで言い訳をしているような姿は、はっきり言ってとても可愛いです。クスクスと笑ったら、とても不満そうに見られてしまいましたが。
さて、わたしたちはお互い立ち上がって、兵士たちを見ます。勝利した、誇らしげな顔がたくさんあります。……もちろん、それだけではありませんが。それでも、この瞬間だけは。
わたしが殿下を見ると、殿下もわたしを見て頷きました。そして、いきなりわたしの手首を掴んだと思うと、腕を上に上げました。
「皆の者! この剣の女神に感謝を! 我らの勝利だ!」
「「おおーっ!」」
「え、ええ~っ!?」
殿下の宣言と、まるでそれを当たり前のように叫ぶ兵士たちに、わたしは顔が熱くなったのでした。
*****
城に戻ったわたしたちは、改めて被害状況を確認します。勝利は勝利です。けれど、無傷のはずがありません。報告を聞いて、わたしよりも殿下の方が辛そうな顔をしています。
やはり、魔物によって壊滅してしまった村があるとのことです。生き残りがいるかどうかは、現在捜索中。戦った兵士たちは大半が負傷したものの、死者は劇的に少ない。とはいっても、ゼロとはいきませんでした。
「そうか」
一言つぶやいて、殿下は目を瞑りました。死者を悼んでいるのでしょうか。
――そして、しばし。目をあけた殿下はわたしを見て、言いました。
「オリヴィア、すまない。やはりあなたに付いていくことはできない」
「え?」
「城を出て行くと言ったことも、撤回する。もっとも、一度発言をしてしまった以上、信用を取り戻すのに時間は掛かるだろうが」
殿下は笑いました。穏やかに。
「俺は俺でいたい。イライアスという一人の人間でありたい。それは紛れもない本心だ。だがそれ以上に、この光景に目を背けることはできない」
戦場の、戦った後の悲惨な光景を見て。
「一人になってしまえば、目の前の人しか救えない。無論、それが必要なことだってあるだろうが、王太子という立場は、さらにもっと多くの人を救うことができる。……そういう王になりたいのだと、思っていたことを思い出した」
「殿下……」
「すまない、オリヴィア。黄金位に誘われたことは決して忘れない。そしてもちろん、婚約の破棄はそのままだ。私の瑕疵だから、しっかり賠償も支払う。どうか、あなたはあなたの道を進んで欲しい」
一人称が"私"に変わりました。きっとこの人は、もう迷わないでしょう。一度「城を出て行く」と言ってしまった、その代償は大きいです。けれどそれを飲み込んで、この人は自らの目指すものに邁進していくのでしょう。
――であれば、わたしは。
「いえ、殿下さえ良ければ、婚約はそのままにして下さい」
「――!」
殿下が、目を見開きました。
「短い間でしたけど、あなたという人間に初めて触れました。わたしは知りました。王太子としての勉強もしながら、白銀位も取る、大変な努力家であることを」
それがどれだけ大変なことであったか。わたしも王太子の婚約者としての勉強をしていたから、何となく分かります。どちらも中途半端にすることなく、やりきれるだけでも、才能だと思うのです。
そして思い出します。魔物に放った強大な魔法。わたしをフォローするように放たれる、的確な魔法を。
「きっと、冒険者としてもあなたは大成できたでしょう。黄金位に上がることだってできました。わたしの最高のパートナーに、きっとなったでしょう。最強のタッグとして、名を馳せることだってできたと思います」
――だから。
「わたしはそれらを知りました。ほんの一端かもしれないけれど、あなたという人を知りました。だから、あなたがあなたでいたいという願いは、わたしに叶えさせてくれませんか? ――イライアス」
「オリ、ヴィア……」
呆然とわたしを見て、つぶやいて。そして、破顔しました。
「ああ、ありがとう。ありがとう、オリヴィア」
「…………っ……」
そんな嬉しそうな顔、反則です。そんな顔をされたら……好きになってしまいそうじゃないですか。
*****
キャンベルト国の国王夫妻は、とても仲睦まじい夫婦として知られていたが、それ以上に最強の夫婦としても有名だった。魔物との戦いの折には、国王夫妻揃って前線に立って戦うものだから、周囲のハラハラは止まらなかったらしい。
結局、それが一番被害が少なくて済むという事実がある以上、誰も何も言うことができなかった。
だが、後世までイライアスとオリヴィアの名が残ることになった理由は、そこではない。
魔物と戦う力を持たない街や村を守るための、大規模結界の魔法。そして、魔物を任意の場所に誘導・おびき寄せることのできる魔法。
それらにより、街や村を守るための兵力を割く必要がなくなった。人間の戦いやすい場所で戦うことができるようになり、格段に魔物と戦いやすくなった。
これらの魔法を作り上げるため、国王イライアスは専門の組織を作り、自らが長となり、冒険者ギルドへも支援を依頼。研究を重ねて基礎の魔法を作り上げた。
その研究が順調に進んだ理由の一つに、「実際に魔物で試した方がいいでしょう?」と、常に魔物の矢面に立ってくれたオリヴィアの存在があったからだと言われている。
この基礎の魔法を元にして、後世でも研究は続けられ、強化・発展していく。
やがて、魔物に怯えることのない生活が実現し、イライアスとオリヴィアの名は、平和の象徴として語り継がれていくのだった。