ねこなで
その子を最初に見たのは、少年が十歳の頃だった。
酷く暑かった夏のあの日、小学校の裏山の中腹にある神社で、少年は友達数人と鬼ごっこをして遊んでいた。
その子を見たのはその時が初めてだった。
その子は上が白で下は赤の、何だか着物の様な服装をしていた。当時、少年は知らなかったが、俗にいう巫女装束という物だった。
その子は夏だというのに、透き通る様に白く、黒く長い髪をなびかせながら、小走りに少年達から逃げる様に身を隠した。
少年以外は誰も気が付いていない様子であった。その為、少年もその子の事を気にしながらも、皆と遊ぶ事に終始した。結果、その子はいつの間にか姿を消していた。
「ああ。その子なら又吉(またきち)神社の宮司さんの娘さんでしょ。たまにお手伝いしてるって聞くわよ」
何故かその子の事が頭から離れなかった少年は、母にその子の事を尋ねてみた。
「確かヒロより二つくらい年下じゃないかな」
少年は一度、その子に会いたかった。子供だった少年に下心などあるはずもなく。
ただ純粋に友達になりたいと思っていたのだ。なぜそう思ったのかは、当時の少年には説明出来なかっただろう。
何故か。その子には少年を惹き付ける何かがあった。
あの夏休み。少年は何度も神社を訪れた。その子に会う為に。
子供であったので許されたが、今ならば完全にストーカー扱いだろう。
だが、少年の努力も空しく、その夏、その子に会えることはなかった。時期に学校が始まり、いつもの日常が少年を包むにつれ、少年の頭から徐々にその子の事は消えていった。
思えば、これが少年の初恋だったのかもしれない。
いつの間にか時は過ぎ、少年も青年になり歳は十九になった。今年の終わりには二十歳になる。今は県内の私大に通っていた。
そして今また夏休みが訪れていた。
青年はこの夏休み、あの夏の事を思い出した。何故か?
その理由は単純明快だ。
十九歳の夏。青年はやっと出会えたのだ。あの夏。恋焦がれた。その子に。
それは、青年の人生に大きな影響を及ぼす、一生忘れることの出来ない、激動の夏休みの始まりであったのだ。
酷く暑かった夏のあの日、小学校の裏山の中腹にある神社で、少年は友達数人と鬼ごっこをして遊んでいた。
その子を見たのはその時が初めてだった。
その子は上が白で下は赤の、何だか着物の様な服装をしていた。当時、少年は知らなかったが、俗にいう巫女装束という物だった。
その子は夏だというのに、透き通る様に白く、黒く長い髪をなびかせながら、小走りに少年達から逃げる様に身を隠した。
少年以外は誰も気が付いていない様子であった。その為、少年もその子の事を気にしながらも、皆と遊ぶ事に終始した。結果、その子はいつの間にか姿を消していた。
「ああ。その子なら又吉(またきち)神社の宮司さんの娘さんでしょ。たまにお手伝いしてるって聞くわよ」
何故かその子の事が頭から離れなかった少年は、母にその子の事を尋ねてみた。
「確かヒロより二つくらい年下じゃないかな」
少年は一度、その子に会いたかった。子供だった少年に下心などあるはずもなく。
ただ純粋に友達になりたいと思っていたのだ。なぜそう思ったのかは、当時の少年には説明出来なかっただろう。
何故か。その子には少年を惹き付ける何かがあった。
あの夏休み。少年は何度も神社を訪れた。その子に会う為に。
子供であったので許されたが、今ならば完全にストーカー扱いだろう。
だが、少年の努力も空しく、その夏、その子に会えることはなかった。時期に学校が始まり、いつもの日常が少年を包むにつれ、少年の頭から徐々にその子の事は消えていった。
思えば、これが少年の初恋だったのかもしれない。
いつの間にか時は過ぎ、少年も青年になり歳は十九になった。今年の終わりには二十歳になる。今は県内の私大に通っていた。
そして今また夏休みが訪れていた。
青年はこの夏休み、あの夏の事を思い出した。何故か?
その理由は単純明快だ。
十九歳の夏。青年はやっと出会えたのだ。あの夏。恋焦がれた。その子に。
それは、青年の人生に大きな影響を及ぼす、一生忘れることの出来ない、激動の夏休みの始まりであったのだ。
プロローグ~第一章 再会
2021/06/27 08:37
第二章 神社
2021/06/28 07:01
第三章 猫
2021/06/29 20:22
第四章 約束
2021/06/30 19:32