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【こぼれ話】リラのメガネ

2000ブクマありがとうございます記念こぼれ話です。

といってもブクマ2000いただいたわけではないのですが。キリのいい数字いただけそうかも→記念話書こう→できた→ブクマ2000なくてもありがたいものはありがたい\(^^)/→公開しちゃう!

というわけで、ブクマに評価に感想に誤字報告! ありがとうございます

 ケインと婚姻したあとも、リラはメガネをかけている。

 はじめは隣国でメイドに紛れ込むため、変装用に手に入れたものだ。入手経路はわすれものボックス。王宮に来た人が忘れていったものを、しばらく保管するところ。だから、リラのメガネには少し老眼矯正が入っている。

 多分忘れ主はちょっと困っただろうし、忘れ物の問い合わせをしたかもしれない。それより早くリラが失敬した。

 まあ忘れるくらいの存在感だろうし、王宮に来て忘れ物ができるくらいの身分だろうから、無くしてもすぐに代わりは買えるだろう、とリラが勝手に判断したのだ。

 もちろん探している人がいれば返すつもりだったが、持ち主は王宮で忘れたかすら覚えていなかったのだろう。リラの知る限り探している人はいなかったようだ。

 老眼矯正はリラにはいらない機能だが、他人からリラの顔を隠すのには役に立った。視界は悪くなるが、あまり細かいことを気にしないリラとメガネは常に共にあった。川に落ちてもリラから離れなかったし、ヒビすら入らなかったのは、長年リラが愛用したおかげでメガネにも加護が働いていたのかもしれない。


 ケインはリラの瞳が好きだ。

 色も形も、微笑みに緩む曲線も、頬に影を落とす長い睫毛も、いつまでも見ていたいと思っている。

 だからメガネは邪魔なのだ。

 ここにはリラに害するものはいないのに、リラがメガネをかけていると綺麗な瞳が堪能できない。


「これがあると、強い風が吹いても砂が目に入らないのです」


 すましてリラは言った。

 この地方は風が強く吹く。乾いた砂が舞い上がることもよくある。砂が目に入ることもよくある。


「だったら室内ではメガネなしでも良いのでは」

「嫌です」


 はじめてのリラの『嫌』にケインは固まった。

 これまでリラはケインを拒んだり、否定したりすることは何一つなかった。そのはじめての『嫌』がメガネとは。

 それほどまでにリラはメガネを大事にしていたのかと、ケインはメガネに嫉妬しそうになったが、このメガネはケインの知らないリラを支え続けてきたものだ。蔑ろにしてはいけないものだ。

 リラだって常にメガネをかけているわけではない。寝室では外して、綺麗な瞳で見つめてくれる。

 仕方なくケインはメガネと折り合いをつけることにした。リラの瞳は好きだが、他にも好きなところは沢山あるのだ。むしろ好きなところだらけだ。そこにメガネを加える努力くらいできる。してみせよう。


 ケインがメガネごとリラを受け入れようと心に誓っているさまを、リラは無表情に見つめている。

 朝食はいつもテーブルを挟んで向かい合わせで座る。

 

 ケインの大きな手が滑らかにカトラリーを扱う様子を見ているのが、リラの密かな楽しみだ。リラの顔をすっぽり包み込むくらい大きな手。

 相変わらずリラに触れる時はおっかなびっくりで、ちょっと力加減を間違えると壊すのではないかと思っているようだが。不器用そうなのに、とても繊細な手だ。

 その大きな手をリラが見つめていることに、ケインは気づかない。メガネがいい感じにリラの視線を隠してくれている。良い相棒だ。

 加護もちのリラの目にゴミが入ることはない。

 このメガネは、リラの密かな楽しみのためにかけている。リラが見つめていることを知ったら、ケインは意識してギクシャクしてしまうかもしれない。

 だからリラはメガネをかけてケインを見つめる。

 大好きな手、逞しい腕、やさしい笑顔。

 視線を、気取らせないために。

またふわっと何か書きますね!

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