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見習い魔術師と X X X  作者: Lumie
見習い魔術師と通り魔
5/23

家路

小一時間ほどフォトンソードの扱い方を習った。力のいらないフォトンソードは剣道のような扱い方とはかなり違うようだった(剣道を習ったことはないが)。


 「今日はここまでですね」


 先生に言われて時計を見ると短針が6時を指していた。フォトンソードのスイッチを切るとシューッという音がして剣先から根本へと光が消えていった。エネルギーの供給が止められたのだから普通なら根元から光が消えるのではないかと思ったが突っ込んだら負けだろう。


 マンションの最上階に戻り帰り支度をする。家で勉強する用の本を一冊とフォトンソードもカバンにしまう。その間に先生は白百合に持つものの指示をしながら紅茶を飲んでいた。

 

 「じゃ、また明日ね。白百合、美結をお願いね」


 「かしこまりました。マスター。」恭しく一礼する白百合


 「先生、今日もありがとうございました!」

 

 そういって玄関をあとにする。白百合も私の後ろについてくる。

 白百合は先生に作られたオートマタだ。ただし私が戦闘訓練で相手にしたようないかにも作りものですという感じは全くない。一見したら人形だとはわからないだろう。先生曰く無機質なオートマタにしたのでは日常生活の雰囲気が壊れるとのことである。


 帰りが夜になるときは必ず白百合が送ってくれる。先生曰くその辺の暴漢、悪霊、物の怪

は単独で圧倒できるらしい。


 エレベーターで一階へ降りる。白百合は口数が多い方ではないので自然と無言になる。 

 エントランスを出ると外の空気は少しひんやりとしていた。秋らしい香りもして気持ちが少し浮付く。

 やはり秋はいい。春も嫌いではないが、落ち着いた空気がとてもよい。駅までの短い道を歩きながらしっかり秋を満喫する。ついでに都会成分も吸収しよう。


 駅に着き改札を抜けちょうどホームに入ってきた電車に乗り込む。この時間帯は帰宅する人でぎゅうぎゅう詰めだ。白百合はちゃんとついてきていて私にしっかり張り付いている。

 一度痴漢にあったことがあるのだがそれを察知した白百合が、痴漢の手に強烈な電撃をお見舞いしたことがあった。白百合曰く二度とまともに動くことがなくなっただろうとのことだ。少々どころではないやりすぎ感である。


 そんなことを回想していると電車が走り出す。景色がホームから街明かりへと変わっていく。これから向かう私の家は都会とは言えない場所だ。今日も心の中であー都会よさらばとつぶやく。

 電車が止まり人を吐き出してそれよりも多い人を吸い込んでまた走りだす。十分ほど走るとまた止まって人を吐き出し吐き出したよりも多くを吸い込んで走り出す。それを数回繰り返すと今度は吐き出す方が多くなる。都心から離れていっている証拠だ。いつものことではあるが都会から離れることを認識すると少し心が落ち込む。私の心はどこまでも都会に焦がれている。


 そんなことを考えていると下車する駅が近づいてきていた。車両の密度は乗り込んだ時より圧倒的に減っていて立っている人はまばらだ。そして合成音声が下車駅の名前を発する。

 ゆっくり減速していく車両。まばらな家の明かりが明るいホームに景色が変わりいくらか進んだところで静かに停車した。

 ドアが開き私と白百合は電車から降りた。


 結局一時間半立ちっぱなしだった。目の前の人はだれ一人として途中駅で降りてくれなかった。まあ席に座れるかどうかは半々なので気にしてもしょうがない。


 到着した駅は都会ほどの規模はないが田舎の駅のように必要最低限の設備だけ整えましたというようなものでもない。良くも悪くもそこそこの駅だ。駅の中に飲食店や書店、理髪店などが入っている。

 特に用はないので全スルーで自宅へ向かう。

 

 私が住んでいる家はここから十分ほど歩いたところにある。まずは線路沿いを歩く。

 線路沿いの家々の明かりをライト代わりにすたすた歩く。ある家からは笑い声が聞こえ、ある家からは子供を叱る父親の声が聞こえる。

 あれらから遠ざかって約一年半か……。

 心に沸き上がりそうになる何かを振り切るように私は歩調を速めた

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