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01話

 俺の名前は川瀬 明、どこにでもいるような普通の高校生だ。だが今俺の目の前に広がる光景は普通ではない。


 元々いた場所は人々が行き交う町中で、俺は学校へ登校する途中だった。ところが今俺がいる場所は青々とした自然に囲まれた所だ。


 いつも聞こえてくる車の排気音は鳥の鳴き声に、踏みしめていたアスファルトは土に変わっていた。


 一瞬夢なのではないかと思ったが足元の草の感触とサンサンと輝く太陽の光によって瞬時に現実であることを理解した。


 とはいえこのような状況に陥っていることを簡単に信じることは出来なかった。だが現実は現実、少し時間が経った後結局は受け入れることにした。


 それにしても何故俺はこんな場所にいるのだろうか。思い返してみれば今日の朝、俺はいつものように家を出て学校に自転車で登校していた。その時に途中にある川を渡ろうとしたところで何故か記憶が途切れていた。


 この間に何があったのかがどうしても思い出せない。もしかしたらこの間に何かあったのかもしれない。


 それと俺がさっきまでいた洞窟のことも気になる。暗くてよく分からなかったがあの中にあった人工物のようなものに触れた時に起こった頭痛、あれはいったい何だったのだろうか。


 ………いや、こんな所で考え込んでいてもただただ時間が過ぎるだけだ。それにそれが分かったとして元の場所に戻れるわけではない。


 それより今は自分のいる場所を知る方が大事だ。まずは自分の持ち物を調べることにした。


 今持っている物は制服のポケットの中に入っていたハンドタオルとティッシュぐらいだ。


 リュックサックの中にもいろいろと入っていたがそもそもリュックサックを持っていない。


 持ち物はこれぐらいか、こんな自然に囲まれた場所ではかなり心許ないがまぁしょうがない。とりあえずこの辺りに人がいないかどうか調べよう。


 そう思いその場から出発した。



        ―数時間後―



 かなりの距離を歩いたが一向に人の気配がしない。疲れによる汗をハンドタオルで拭う。


 歩いても歩いても景色が変わらず陽も落ちてきてかなり暗くなってきた。


 しまった、うかつに行動してしまった。今の所一度も出会っていないがもしかしたら危険な野生動物に出会う可能性もある。洞窟まで戻るにも距離が空きすぎて戻ることが出来ない。


 仕方ない、どこか違う洞窟を見つけるか木の上に昇るかしてとりあえず身の安全を守ることを優先しよう。


 「──────」


 そう思った時、どこからか正体不明の音が聞こえてきた。何だ、近くに何かいるのか?


 「────」


 警戒しているとまたもや音が聞こえてきた。いやこれはどちらかといえば鳴き声のようだ。


 鳴き声の大きさからしてかなり近い場所にいるようだ。本来ならば聞こえた場所からすぐに離れるべきだろう。


 だが二回目に鳴き声を聞いた時、何かが引っかかるような気がした。そしてゆっくりと鳴き声の聞こえた場所へ足を進めていく。


 少し進むと小さな影のようなものが見えたので、急いで近くの木へと身を隠す。そしてそーっと木から顔を出す。そこには今まで見たことの無い奇妙な動物がいた。


 大きさは約20cmぐらいで二足歩行だ。頭部はトカゲのような形をしており、頭頂部には小さな角のようなものが見える。胴体には無数の鱗が着いており、その色は蒼く透き通った色をしている。背中にはかなり小さいが、羽のようなものが見える。ダランと垂れ下がる腕には丸みを帯びた爪が生えており、短い尻尾には一つ棘突起が見える。


 どう見ても今まで直接見た動物はもちろん、図鑑などで見たあらゆる生物とも一致しない見た目をしている。俺にとっては明らかに異質な存在だ。


 ただ俺の引っかかることとは全く内容が一致しなかった。どうやら俺の思い違いだったようだ。


 そうと分かったら早くここから離れた方が良いだろう。見た目からは危険そうには見えないが、もしかしたらとてつもない強暴性や猛毒を持っているかもしれない。それにわざわざ姿を見せる必要もない。


 そう思い俺はその場から離れようとした、


 パキッ


 ……が足元にあった木の枝に気づかず踏んでしまい音を鳴らしてしまった。そしてその音で目の前の奇妙な動物に気付かれてしまう。


 …やってしまった。さてどうするか。


 相手は俺より遙かに小さい、それなら威嚇のような真似をして恐怖心を煽らせ追い払うか?いや、それで相手を刺激する結果になったらまずい。いっそ全力で走って振り切るか?だが野生動物には背中を向けて逃げるというのは場合によっては死を表す、かと言って後ろ歩きで少しずつ進んでは距離を離せない。どうしたものか。


 奇妙な動物に対する対抗策を練っていると不意にあの鳴き声が聞こえてきた。


 「あ、あのおじさんだれ?」


 それは鳴き声ではなく人の言葉だった。


 そしてその声の主は奇妙な動物からだった。

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