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第89話 同じ能力者

 光輝の背中を貫いたレーザービームは、勢いそのままにエスディスまでも貫いた。



「……あ~あ、やっちゃったね、デストッド兵長」


「いや、不可抗力だ! まさか、狙った訳じゃ無い!」


「君達は僕の研究が邪魔されずスムーズに行われる為に雇われてる警備兵だろ? それが、僕の研究の成果を殺しちゃあ……存在意義を疑っちゃうよ。でも、実は、前から()()()()()()()()()んだよね。だから好都合っちゃあ好都合だったのかな」


 好都合と言われても、デストッド兵長には意味が分からなかった。彼はリバイブ・ハンターの能力を知らないのだから。



「折角だ。まだ時間があるだろうから、兵長には特別に僕が発見した世紀のギフト能力であるリバイブ・ハンターの事を教えてあげよう」


「リバイブ・ハンター……。蘇る……って意味か?」


「そう。実際、首を落とされたエスィデスが復活したのを見ていただろうから話は早いだろう?」


そう言うと、シュトロームは得意気に語りだす。それを、光輝は死んだフリをして聞いていた。


(おっと、まさかこんな早くにリバイブ・ハンターの情報を得られるとは……死んだフリもしてみるもんだな)


先程の攻撃は確かに普通なら致命傷になりうる攻撃だった。だが、光輝は敢えてその攻撃を受けたのだ。リバイブ・ハンターの秘密を知る為に。



「リバイブ・ハンターとは、殺されても蘇る能力だ。……しかも、殺された際に使われたギフト能力を習得してね」


「死んでも蘇る? しかも、その能力を身に付けて? ……馬鹿な。そんな能力、聞いた事も無い」


「そりゃそうさ。僕が発見したんだから。でも、恐らく過去にも何人かはこの能力に目覚めた人間がいたかもしれないね。でも、これまでは発見されていなかった。だから、世界中のどんな文献や記録にも載っていない。それには理由があって、この能力には条件が存在するからなんだ。」


ここまでは、光輝でも知っている情報だ。聞きたかったのは、むしろここからだ。


「まず、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

そして、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

この二つの条件を掻い潜った場合のみ、自分がリバイブ・ハンターの能力者だと云う事に気付く事が出来るんだ」



……ギフトによる攻撃以外では発動しない。


……同じ相手に二度殺されると発動しない。



同じ相手に二度殺されると発動しないは、仮説として可能性はあると考えていたが、ギフトによる攻撃以外で発動しないと云う事実は、光輝の背筋を凍らせた。


(マジかよ……。じゃあ、交通事故や病気でも、死んでいたら蘇生は出来なかったってことか?)



「今挙げた条件から、発動する事無く死亡した者や、発動しても直ぐに死んでしまった者は過去にもいたであろう事が考えられるね。

 で、僕はこれまで四人のリバイブ・ハンターの能力者を見付ける事が出来た。内一人には逃げられちゃったし、二人は実験中に死んじゃったから結局今も手元にいるのはエスィデスだけになっちゃったけど、尊い犠牲のおかげで色んな情報を得る事が出来たんだ。

それに、まだまだ気付かないだけで他にもこの能力を潜在的に眠らせている人間がいるハズ。だから無能力者を拐っては実験してるって訳さ」


「……だからあんなに大勢の人間を。アンタの研究のせいで、一体何人の人間が無駄に死んだと思ってる?」


兵長は別に正義感が強い訳でも無いし、仕事は仕事だと割り切る性格だが、なんの罪も無い一般人が、何も知らずに実験材料とされている現場を見てきて、研究者と云う人種に嫌悪感を抱いていたのだ。


「おいおい~。君もかなりの人数を処分してるだろ~? 僕は実験台を必要とし、君達は僕の期待に応えられなかったガラクタを弄ぶ……お互いウィンウィンな関係じゃ無いか」


「ガラクタを処分するのは、それがアンタ等から俺達に与えられた仕事だからだ。アンタ等研究者と一緒にしてもらっちゃあ困る。

 ……それで、アンタの話だとこのエスィデスって男はまた蘇るんだな? しかも俺のデス・イレイザーを習得して」


「その通り。でも安心して良いよ。だからといって君が能力を失う事は無いから……失う事はね……」



 シュトロームの言葉の真理を把握出来ないまま、兵長はエスィデスの死体を眺める。すると、死んでいたハズのエスィデスがむっくりと起き上がった。その身体に空いていたハズの穴もしっかり塞がれている。


「……本当に蘇りやがった。この目で見てもまだ信じられん」


「おはようエスィデス! これでまた一つ、お前は有能なギフトを手に入れた訳だ。今日は素晴らしい日になったな!」


 起き上がったエスィデスは軽く首を回し、自分の身体が正常かを確認する。


「ああ……とてつもなく良い気分だ。今直ぐにでも誰かを殺したい程に」


本当に蘇ったエスディスに兵長が声をかける。


「おい、お前。本当に俺のデス・イレイザーを使える様になったのか?」


「ん? 博士、コイツにはリバイブ・ハンターの事、ちゃんと教えたのかい?」


「勿論さ! 発動条件から能力習得までね」


「そうか。それじゃあ足りないだろ?」



 兵長は念の為自分の能力が失われていないか確かめてみる為に、壁にデス・イレイザーを放っていた。


「……なるほど、失ってないな。それにしてもリバイブ・ハンターか……羨ましい能力だな」


「羨ましい? 博士、やっぱり肝心な事を兵長には教えて無いんだな」


 シュトロームはわざとらしく惚けた仕草をする。兵長は何の事を言っているのか理解出来ていない。すると……


「肝心な事? それはどういう……がはっ!? な、なんで……?」


 ……兵長の腹に穴が空いた。エスィデスから放たれたデス・イレイザーによって。



「ああー、しまった~! ごめんね兵長。リバイブ・ハンターによって蘇生すると、漸くは抑えられない殺意の衝動に駆られるんだ。特に、自分を殺した者への殺意は強烈だから、直ぐにでも逃げた方が良い……って、もう遅いか」


 兵長は、倒れたままもう動かなかった……。



「くそぅ、あんまり呆気なく殺しちまったせいで、まだ殺意が収まんねえ! 博士、ガラクタを用意してくれ! 十人程なぶり殺しにしないと気が済まねーよ!」


「おいおい~、簡単に言うなよ~。人間十人用意するのだって大変なんだぞ? ……でもまぁ、今日はご褒美だ。特別に用意してやろうか」


「おう! 早く頼むぜ……ん? おい、博士……()()()()()、俺が眠ってる間に何処かに連れて行ったのか?」


 言われて、シュトロームも倒れていたハズの光輝を見る……が、その場に光輝はいなかった。あるのは、床に貯まった光輝の物であろう血のみ。



「いや……何処にもやってないぞ? なんだ? どういう事だ!?」


 今まで余裕な態度が崩れる事が無かったシュトロームが突然焦り出す。彼は自分の想定外の出来事に対して過剰に不安を抱くタイプだった。


「まさか、生きてたのか? いや、あの傷で生きてられる訳は無い! …………まさか、アイツもリバイブ……」


 言い掛けて、途中で止める。その可能性が低い事は、シュトロームがよく知っていたから。


 先程条件でも挙げていた通り、リバイブ・ハンターの発動もしくは発動してからの生存率は低いのだ。これまでの研究で、()()()()()()()無しでリバイブ・ハンターの能力者が、()()()()()()()()()()()()()成長する可能性はほぼ0に近い結果が出ていたから。



「くそぅ……何処だ? 何処にいる!?」


 シュトロームが赤外線ゴーグルを装着して、部屋の中を探す。すると、中央部に人が立っているのが見えた。


「エスィデス! 奴はあそこだ!」


「……俺はゴーグルが無いんでね。ちょっと待っててくれ、今のところゴーグルを……いや、ゴーグルなんかいらねえな……」


 エスィデスは既に死んでいる兵士のゴーグルを拾うが、禍々しいまでの気配を感じて、ゴーグルを投げ捨てた。



 ……光輝が姿を現す。禍々しい黒いオーラを身に纏い、漆黒のコスチュームに身を包んだその姿は、シュトロームでも聞いた事がある、正に、漆黒の悪魔の異名通りの姿だった。



「……我が名は闇の閃光・ブライト。貴様ら悪党を地獄に叩き落とす者だ……」



「ま、まさか、お前があのブライト!? あの日本人が!?」


 突然のブライトの登場に、シュトロームは動揺を隠せない。だが、エスィデスは違った。


 蘇った事で新たな能力を手に入れた自信。そして今だに収まらない殺意が、己とブライトとの戦力差を見誤らさせたのだ。


「貴様があの有名なブライトか……? クックック、なら俺は、お前の能力を習得した事になる訳だ!」


 エスィデスの表情は、自分がブライトよりも優れた能力者だと信じて疑っていない表情だった。



「いいのか? 同じ相手に再び殺されたら、永遠の死を迎えるんだろう?」


「ハッハッハ! どうりで殺意が収まらないと思ったら、俺を殺したお前が生きてるからだった訳か! なら教えといてやる! リバイブ・ハンターにとって、一度自分を殺した奴を殺す瞬間が最も昂るって事をなあ!」


 因みに、ブライトの言葉は日本語なので、日本語を理解できるシュトロームには伝わっているが、エスィデスには伝わっていない。逆にドイツ語に関しては崇彦による同時通訳でブライトには伝わっている。



 エスィデスが右拳を刃に変え、サイレント・ステルスを発動する。エスィデスの身体が透明に変わった。


「この刃……とんでもねえ堅さだぜ! その上この身体を消す能力! これだけでも無敵じゃねえか! その上……はぁっ!」


 エスディスの左手からデス・レーザーが放たれる。が、ブライトはそれをアッサリとかわした。


「そんな大声で喋ってたら、折角透明になってる意味が無いだろうが。……というより、レーザービームを放った時点で()()()()()()()()けどな」


 ブライトも、()()()()インビジブル・スラッシュなどの飛び道具を使用した際にはサイレント・ステルスの効果が切れていた。だが、今は熟練度が上がった事により、ステルス状態でインビジブル・スラッシュを発動しても効果が消える事は無くなった。


「なるほど……。そういう理屈か。なら、このままの状態でも良い訳だな!

くらえっ! 」


サイレント・ステルスを併用するのを止め、エスディスはデス・レーザーをブライトに向かって乱射するが、ブライトはそのレーザービームを避ける事無く、ロンズデーライトで掌を堅めて全て弾き飛ばした。


「レーザー・ビームか。この能力も悪く無いが、使ってる奴が馬鹿だと宝の持ち腐れだな」



 一連の攻防を見ただけで、シュトロームはブライトとエスィデスの間にある圧倒的な差を見極める。

 サイレント・ステルスにロンズデーライト、この二つの能力だけでも明らかに熟練度が違ったからだ。


「やめろ、エスィデス! その男は今のお前では……」


「シャアアアアーッ!」


 シュトロームの制止など耳にも入れず、エスィデスは再度サイレント・ステルスを発動し、ブライトに襲い掛かる。


「だから、いちいち声を出してたら透明の意味が無いだろう?」


 ブライトがエスィデスの腹にカウンターで前蹴りを放つ。


「ごはぁっ……な、なんで?」


「お前も分かるだろ? サイレント・ステルスを得た恩恵で、気配を察知する能力が高まってる事を。

 で、他には? 俺から能力を習得したんだろう?」


「かはっかはっ……なんだってんだ!? サイレント・ステルスとロンズデーライト、お前が持ってる能力を俺も持ってるって云うのに!」


(ふむ……なるほど。つまり、リバイブ・ハンター発動時に習得する能力は、()()()()()()使()()()()()()()()()って事か……)


 ブライトはエスィデスを殺した時、サイレント・ステルスを発動したままロンズデーライトでトドメを刺した。つまり、ブライトは他にも能力を持っているが、あくまで習得する条件は、殺した際に使われた能力のみとなる。


 これまではロンズデーライトの能力者である自分とそれ以外の能力者だったから意識した事も無かったのだが、おかげでリバイブ・ハンターの謎の一つが解明された。



「ふざけるな……俺は無敵のリバイブ・ハンターだ! 今までどれだけの地獄を生き抜いて来たと思ってる!? その俺が、こんな奴に負けてたまるかぁっ!」


 エスィデスはシュトロームの過酷な実験を耐え抜き、今の力を手に入れた。当然リバイブ・ハンターが発動すると云う事は、一度は死ぬと云う事。この感覚は、光輝も含めて死んだ事がある者にしか分からない苦痛を伴う。

 そして、同じくリバイブ・ハンターの能力を宿した同志とも言える二人は、実験中に死亡している。


 エスィデスは誓っていたのだ。無敵の力を手に入れた暁には、シュトロームを徹底的に痛め付けて殺すと。そして今は、その無敵の力が漸く手に入ったと確信していた矢先だったのだ。



「クソッタレエエエエッ!!」


 エスィデスが玉砕覚悟で飛び掛かって来たのを、ブライトは複雑な心境で待ち構える。


(敵とは云え、初めて会った同じリバイブ・ハンターの能力者。だが……)


 二人が交錯する。……そして、エスィデスの身体はブライトの刃と化した腕によって上半身と下半身が真っ二つに斬り裂かれ、そのまま二度と起き上がる事は無かった……。



「……悪く思うな。俺は()鹿()()向けられた殺意には、殺意を以て返す事しか(すべ)を知らないんだ……」

ブライトが驚愕の事実と対面している頃、ティザーは人質解放の為に研究所に来ていた。


次回、『天候を操る女神』


「私が黒夢ナンバーズだって事、思い知らせてあげるわ」



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― 新着の感想 ―
[一言] >内一人には逃げられちゃったし リバイブハンターをよく知っている組織ないし国が存在すると。  稀ではあっても探せば見つかる程度だから捨て駒になる組織を作って見つけた段階で証拠隠滅もかねて救…
2020/02/25 09:26 通りすがりの人
[一言] ああああああブライトつよぉぉぉぉぉぉ!
[一言] ここ間違っていると思います。 ……ギフトによる攻撃では発動しない。
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