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第79話 主役は遅れてやって来る

「フハハハハハハハ! 良い機会だ! 黒夢を倒し、そして反逆罪で貴様等全員俺が処刑してやる! 一体誰が国防軍のトップなのか、世界中が知る事になるのだ!!」


 上空では、現場を生中継しているカメラが権田を捉えている。その様を見ている人々は、権田がこの国の正義の象徴である国防軍、その大将だとはとても思えない状況なのだが、権田は既に勝利を確信して自分に酔っていた。


(フッフッフッ、白夢の助っ人として黒夢がこの場にいるのも情報通り! こちらの戦力が強力であればあるほど、黒夢側も主力が……桐生本人が出て来るのも予想通り! その話を遠回しに鬼島に伝われば、鬼島も現場にやって来て桐生と決着を着けようとするのも予想通り! 結果的に俺にとっての邪魔者が全員疲弊するのも予想通り!!

 …仙崎が生きていたのだけは予想外だったが、概ね予想通りだ!!)



「ボス……今からでも撤退しますか?」


 ジレンが桐生に提案する。ジレンもまた、予言の結果を知る一人だが、現状を考えればブライトの覚醒を待つのはリスクが大き過ぎる。ジレンとしては、国防軍の内輪揉めに付き合ってやる義理も無い。


「まだだ。もうすぐ、アイツがこの場に来る。それこそが、俺の本当の目的だ」


「ボス、俺達にとってアイツが覚醒するのと、ボスの命を天秤に掛ける訳にはいかない。それなのに……」


「大丈夫だ。アイツは覚醒する。()()()()お膳立てしたんだ。必ず来るさ」



「権田ああああっ!!」


 仙崎が権田に刀を振るう。ダメージからワールド・デリートは発動していないが、それでもその一太刀の鋭さは衰えていない。だが、権田はその一太刀をかわし、仙崎を横薙ぎに地面に叩きつけた。


「死にぞこないが。大人しく死んでいれば良かったものを。余計な口を叩く前に、この場で息の根を止めてやるわ」


「連・拳!!」


 トドメを刺そうと腕を振り上げた権田を、鬼島が連・拳が襲う。が、その拳を権田は能力で禍々しく肥大化した腕でブロックした。


「軽い! 英雄ともあろう者が、よほど桐生にやられたと見える。ふん!」


 そして、その腕で鬼島の鳩尾に掌底を放つと、鬼島は堪える事が出来ずに吹っ飛ばされてしまった。



「ハッハッハ!! 見たか鬼島! 過去の栄光にぶら下がっていつもいつもデカイ顔をしおって! 国防軍のトップは、この俺だ!」


 仙崎と鬼島があっさりとやられ、その上指揮官だった佐藤も殺された事で、残された陸軍の精鋭隊は動揺してしまった。


「ふん! ビビったなら大人しくしておけ。貴様らにもあとでしっかり上官に逆らった罰を与えてやる。だが、その前に……」


 権田の視線が桐生に向けられる。桐生の目の前には、ジレンとヴァンデッダが立ちはだかるが……


「どけ、ジレン、ヴァンデッダ。今のお前らでは権田には歯が立たない。むしろ、エネルギーを吸い取られかねん」


「ですがボス……」


「案ずるな。俺の防御力は世界最硬。こんな状態でも時間稼ぎくらいは出来る」



 権田が大きく跳躍する。そして、あっという間に桐生の目の前に着地した。


「積年の恨み、晴らさせてもらうぞ!!」


「恨み? 妬みだろ?」


「ぐっ……ほざけえええええっ!!」


 権田が腕を振り下ろすが、桐生は盾を創ってガードした。


「……悲しいな、権田。俺達が疲弊してなければ向かっても来れないとはな。死んでいった同期達に合わせる顔が無いんじゃないか?」


「やかましい! 勝てば良いのだ。最後は、勝ったものだけが正義なのだ!」


「お前みたいにして勝っても、そんな正義は俺は認めないけどな」


「うるさい! 死ねえええっ!」


 権田がヴァンプス・アームを桐生に振り下ろす……瞬間、桐生は身体を翻し、硬化した拳で権田の腹を打ち抜き、権田は大きく吹っ飛ばされた……。



「がはっ……なに!?」


「甘かったな。例え追い詰められても、最後の一絞りの力くらいは残しておくのが、真の強者だ」


 血反吐を吐く権田。桐生の最後の力を振り絞った攻撃は、権田に致命傷を与えたのだ。


「ふう……アイツの出る幕は無かったか? 少々あっけなかったがな」


 倒れた権田が上体だけを起こす。口からは血を吐き、桐生の一撃が内臓を損傷させた事が目に見えて分かった。



「おのれ……まったく忌々しい奴だ、お前は。だが! これで俺に勝ったと思うなぁ……」


 権田が胸元からカプセルの錠剤を取り出す。それを見た仙崎が声を上げた。


「まさかそれは! まだ試験段階のハズ…」


「俺はこの機に賭けたのだ! 桐生を殺し、国防軍を支配する為になあっ!!」


 そして、権田はそのカプセルを口に入れると……


「ぐうううううわあああああああああああああっ!!!!」


 激しく苦しみだした。



「仙崎、あれはなんじゃ!?」


「あれは……陸軍の研究機関が極秘に開発していたハイパー・ドーパミング剤です。まだ試験段階だったハズですが、人間の力を極限まで……いや、何倍も引き上げる悪魔のドラッグです」


「そんなものを……。副作用は測り知れないじゃろう?」


「……それだけ、権田も覚悟を決めたと云う事でしょう。鬼島大将、ここは私に任せて、貴方だけでもお逃げください。国防軍は、貴方を失う訳にはいかない」


「ほっほっほ、今更この老いぼれが逃げ帰ってどうする? 逃げるのならお前らじゃ。古き遺産の死に際に、あの化け物(権田)を道連れにしてやるわ」


「鬼島大将……」



 蒸気が立ち昇る権田の身体は1.5倍に肥大化し、肌の色は紫色に変色していた。その姿は、最早人間と言える生物では無かった。



「キイイイリュウウウウウーーー!!!」


 次の瞬間、権田は力任せに桐生に体当たりを敢行した。咄嗟に創られたロンズデーライトの盾をあっさりと砕かれ、桐生は吹っ飛ばされた。


「くっ……!? 本当に哀れな奴だな、権田。まさか、人間を辞めるとは!」


「うるさい! 俺は人間を超越したのだ!! 身体中に力が漲ってくる……最高に気持ちイイイイイイッツ!!」


 権田の飲んだカプセルは、肉体を強化させるだけではなく、麻薬の様に精神にも影響を与えていた。



「さあ……今トドメを刺してやるぞ……」


「させるか!」


 権田が倒れる桐生の元へと近づいて行く途中で、ジレンとヴァンデッダが阻止しようと飛び掛かったが、どちらも一撃で地に伏せさせられた。


「クソッ……ボス!逃げてくれ!!」



「……この時をどれだけ待った事か。覚悟はいいか? キィリュウゥ~」


「フッ、そうだったのか? 俺にとってお前なんざ眼中になさ過ぎて、意識した事も無かったが」


「最期の最期まで気に食わない奴だぁ。いいだろうぅ、その口ををを、永遠に黙らせてやるうううぅっ!!」



 今まさに権田の腕が桐生に振り下ろされる寸前、桐生は見た。


「…………来たな。全く、待たせやがって」


 桐生がそう言うと、白夢のアジトから()()()()()()()び出して来た。



「フハハハハハハハッ! 死ね、きりゅうう…うおっ!?」


 突然、権田の背後に、漆黒の何かが着地した。



「ふうぅぅぅぅ……」


 立ち上がり、マントを広げたその姿は、まさに漆黒の鳥人……いや、漆黒の悪魔だった…。



「我が名は闇の閃光・ブライト。()()()()()()()()()()……」

役者は揃った。権田とブライト、二人の対決は壮絶な結末を迎える!


次回、「あれよあれよとラスボスに」 この先、長生きしたけりゃ覚えとけ。


※活動報告にて、閑話エピソードを募集致します。宜しければ覗いてみて下さい。そして、この作品が気に入って頂けたなら評価・ブクマの方も宜しくお願いしますm(__)m

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― 新着の感想 ―
[良い点] とても面白く素晴らしい小説です。 [気になる点] 最近投稿頻度が落ちてきたと思います [一言] 身体に気をつけ無理しないようにしてください。 更新、待ってます。
[一言] ありゃ、今日最新だったんですね! ブライトと風香が気になりますねー 最新楽しみにしてます。
[良い点] 吉田……さん……もう……ダメだ…
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