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第68話 エリートの明暗

 ―イーヴィルvsバカップル



「ライジン!!」


「うおっ!?速ええっ!」


 イエローの高速の動きに、イーヴィは苦戦していた。そして何より…


「頑張れ!虎次郎!!」


 回復担当の為、直接戦闘に参加していないホワイトの黄色い声援が非常にウザかった。



「いいかげんに…しろっ!」


 イーヴィルがイビルレーザーを発動する。だがイエローの姿を捉える事が出来ず、イビルレーザーは壁に穴を空けまくっていた。


(もう!だから俺は後方支援タイプだって言ったのに!しかもこの黄色い奴、加速系じゃん!相性最悪じゃん!)


 ここでイーヴィルは考える。


(確か、部屋と部屋の間は繋がってるって言ってたな…。よし、ここはこのバカップルを相棒(ブライト)に丸投げしちゃおう!うん!)



 隣の部屋への扉は確認済み。しかも、このバカップルの標的は、本来ならブライトだった事も聞いている。


(よし!じゃあ頼むぜ相棒!!)


 逃げる様に、イーヴィルはブライトがいる部屋の扉を開けた。そこには…。



「……比呂……俺は、人間を辞めるぞぉぉぉっ!!」



 …漆黒のオーラを漂わせた悪魔が吠えていた…。



 いきなり吠えたブライトに遭遇したイーヴィルは、その姿が見慣れたブライトよりもゴツくなっていた事に目を擦った。


「………あれ…ブライト?だよなぁ?」


 イーヴィルは辺りを見渡す。


(比呂と…風香!?あちゃ~、なんと云うかまた、ドラマチックな展開だなぁ、相棒…)



 遅れて、イエローとホワイトもやって来る。


「…あっ!?あれは……ブライト?な、なんてオーラだ…」


「………あわわ…悪魔…」


 覚醒したブライトの姿に、イエローとホワイトは復讐する気も消え去るほど、恐怖でおののいてしまった…。




「カハァ~…さあ、掛かって来いよ…()()()()…」


 ブライトの中で、比呂と風香は正に物語の主人公の様な存在に見えていた。


 将来を嘱望されるエリートと、逆境から覚醒した男。物語の主人公が持っている要素を多分に含んでいる二人。

 一方、能力に目覚めずに落ちこぼれ、漸く力を手に入れた瞬間に絶望に叩き落とされ、闇の世界でしか生きる場所が無くなった自分。


 一体何が違ったのか?光輝く未来が待っている二人と、進めば進む程闇の世界へと足を踏み入れていく自分。


 ヒーローになりたかった。ヒーローに憧れた。そんな叶わない自分の夢を、今目の前にいる二人は、現在進行形で叶えようとしている。



 感じるのは絶対的理不尽。だがそれ以上に、自分は、自分の信じるヒーローに…ダークヒーローになってやるんだ!!と、魂が叫んだ瞬間、脳内に言葉の様なものが鳴り響いたのだ。



「くっ…化け物が更にパワーアップするって…どんだけだよ!」


「弱音を吐かないで、真田!来るわよ!」



 比呂と風香の前に立ちはだかるブライトを見て、イーヴィルは思う。まるで正義の味方たる主人公達の前に立ちはだかる()()()()だな…と。



「なっ!?」


 比呂が驚きの声を上げる。目を逸らしてはいなかった。なのに、気が付くとブライトはその場に居なかった。


「消え…たはっ!?」


 比呂は突然頬に衝撃を受けて吹っ飛ばされる。恐らく攻撃を受けたのだろう。だが、全く見えなかった。


 それは、周りで見ていた者も同じ。誰一人としてブライトの姿を捉えている者はいなかった。



 今まではサイレント・ステルスを発動しても、目を凝らせばブライトの身体は歪んで見えたが、今は全く見えていない。

 弊害として、発動時にインビジブル・スラッシュを使うとステルス状態が解けてしまうのは変わっていない。



 目に見えない恐怖が、イーヴィル以外の者を襲う。


(今の、サイレント・ステルスだよな?今まではよーく目を凝らせば見えてたのに、今は全く見えない。しかも、物音一つ聞こえない…。

 まさか…これが覚醒ってやつか?噂には聞いてたけど…これ程までの進化を遂げるのか?)


 イーヴィルは、とばっちりを受けるのを避ける為、壁際に移動している。


(光輝の奴…もう単純な戦闘能力なら、ボスに並んだんじゃないか?)




「くっ!何処に…」


 風香もまた、ブライトを見失っていた。只でさえ純粋に戦闘能力だけ見れば自分を凌駕する存在だったのが、更に見えなくなってしまったのだからたまったものではない。


「…ここだ…」


 耳元で、囁く様な声が聞こえた…


 反射的に風香は腕を振るう。が、空を斬るのみ。


「…こっちだ…」


 今度は反対方向から…。


「こっちだ」


「ほらほら」


「どこ見てる?」


 何度も何度も拳を振るう。だが、その拳は空振りを続ける。



「ハァ!ハァ!ハァ!ハァ!ハァ!ハァ!何処よ!?」


 自分の想定外の状況に、風香は瞳孔が開き、最早平静を保てない程に焦っていた。



「何処?何処よ?何処…ヒッ!?」


 突然、目の前にブライトが現れた。


「お前の目の前にいるじゃないか?」


「ヒッ……イヤァ!!!!!」


 至近距離で、ハリケーンミキサーを発動させたが、その瞬間、ブライトの身体が光ると同時に遥か遠くへと移動していた。


「フン…臆したか?小娘…」


 次の瞬間、放たれたインビジブル・スラッシュが風香の上半身を切り裂いた。



 辛うじて後方へ飛び退いた為致命傷では無かったが、風香の胸元のプロテクターは破壊されてしまった。


「……くぅっ…なんで?なんなの…あなたは…」


 風香は己の力に自信を持っていた。決して過信では無い自信を。そんな自分が、今は成す術も無くやられている…。自分がこれまで築き上げて来た戦闘スキル、軍人としての誇り、その全てが音を立てて崩れる音を聞いた。



 比呂と風香。偽りのエリートと本物のエリート。どちらも一度は己のプライドをズタズタにされた。


 だが、二人のエリートは、ブライトと云う最強の敵を前にして、今ここで明暗を分けた。



「ワールド・マスター!!」


 覚醒した比呂の能力が、ブライトの身体を拘束しようとする。…が、思うように支配出来ない。


 ワールド・マスターがどれだけの物を支配できるかは、経験と熟練度で変わるのだろう。だが、少なくとも現段階では、ブライトの様な強大な力を持った人間を支配するには至っていなかった。


「…どうした?俺は何とも無いぞ?もっと本気を出せよ…ヒーロー(比呂)



 拘束は出来ない。だが、新たに進化したワールド・マスターなら、もっと他の戦い方があるかもしれないと、比呂は考える。例えば、対象を支配できないのであれば空間を…更には、()()すらも支配できるのではないかと。



「そっちから来ないならこっちから行くぞ!」


 ブライトの身体が光った。さっきは、光った瞬間に別の場所に移動していた。つまり、瞬き一つした次の瞬間にも、ブライトは自分に攻撃を仕掛けて来るのかもしれないのだ。


「うおおおおおおっ!!」


 全神経を研ぎ澄ませ、比呂は()()()()()()に置こうと試みた!すると…


(見える!ブライトは光ると共に瞬間移動してるんじゃ無い!光の速さで移動してるんだ!)


 時間を支配下に置くと云っても、今の比呂では、時間の流れを()()()()()()()()()()()位しか出来ない。いや、それだけでも途轍もないチート能力だ。



 時間の流れを遅くしても尚、ブライトのスピードは覚醒前のスピード・スター発動時と同等。それでも、殺す気で放たれたブライトの突きに反応した比呂は、カウンターでブライトの顎にアッパーカットを喰らわせた!


「ぬっ!?」


「さっきのお返しだ!」



 ブライトは一旦距離を置く。覚えたての能力とは云え、フラッシュのチート性能は充分理解している。なのに、比呂は対応したのだ。

 おまけに、油断していた為に喰らったカウンターパンチで少しだけ脳が揺れていた為、正直、追撃されれば少しだけピンチではあった。


「ハハハッ…お前も()()()()()()()()になって来たじゃねえか!ヒーロー!」


「チッ…こっちは今ので拳が砕けたってのに…()()()()()()()()に言われたくないよ!」



 二人のエリートの明暗は、くっきりと分かれた…。


 自分との力の差に畏縮してしまった風香…。


 遥か格上の相手でも、立ち向かう比呂…。




「くそっ!私は戦わなきゃ…戦わなきゃ!光輝君の様な人が、二度と悲しまない国防軍を創る為に!私は…戦わなきゃ!」


 風香は己を鼓舞する為に叫んだ。だが、その身体はガクガクと震え、動く事は出来なかった…。

ブライトと風香の絡みはホラーを意識しました(笑)おかげで風香に精神異常の効果を与えたようです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 3章までは本当に面白かったです。 [気になる点] 主人公に葛藤させすぎて芯が折れちゃった感があります。 ヒロとの関係も葛藤というより、ただ作品がブレてるようにしか見えない… [一言] こ…
[一言] ごめんなさい割とマジレスって感じになっちゃうのですが光の速度で動いているのであれば(言葉の綾の可能性もあるが)相対性理論によって時間を遅くしたところで早さは変わらないのでは?必要エネルギーの…
[気になる点] ちょっと話が遅い気がする。 別に崇彦の話は、全て終わった後でも良かった気がする。ホワイトとイエローが突然崇彦と入って来ようと 今回の話と関係ないのでは?後今回で幼馴染か水谷を退場させて…
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