表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/200

第67話 覚醒

 ――ブライトvs風香



 ブライトの反撃により、風香はブロックした腕を打撲するダメージを負ってしまった。


(ブロックしてもこれ程…本当に悪魔ね。能力有りだと絶対に近寄らせちゃいけない…でも、あのスピードにいつまで着いていけるか…)


 風香は、ブライトと自分との実力差を冷静に分析する。



 水谷風香は鬼島平吉の外孫であり、6歳でギフトを発現した。しかも、二つ。どちらもギフトのランクはA以上と、正に将来を嘱望されるエリートだった。

 それまで鬼島は、自分の子供や孫に有能なギフト能力発現者がいなかった事もあり、風香の事を特段可愛がった。


 可愛がるにも二種類あり、兎に角猫可愛がる。そして、鍛えに鍛える意味の可愛がる。鬼島はその両方で、風香をとことん可愛がった。

 変な色眼鏡を避ける為に、一部の人間を除いて、早い段階で風香が自分の孫である事実を隠して。…だが、風香があまりにも優秀過ぎた為にその気遣いは裏目に出て、国防軍の一部から話題先行の存在だと揶揄される理由にもなっているのだが…。


 結果的に、風香は鬼島の期待以上のスペシャリストとして成長し、()()()最年少で少将に抜擢され、新設された白虎隊の隊長を任せられる程になった。



 そんな風香が、今目の前にいる漆黒の悪魔と呼ばれるブライトに脅威を感じている。


 これまで、ここまでの強者と手合わせした相手は祖父である鬼島しかいない。だが、鬼島は人類最強クラスのスペシャリストなのだが、祖父としての愛情のせいか、風香には鬼になりきれない部分があったし、風香もそれは分かっていた。


 でも今、目の前にいる男は、祖父に並ぶ実力かもしれない上に、祖父と違って躊躇なく自分を殺せるのだ。



 戦闘において初めて、風香は自分が負けるかもしれないと云う不安を初めて抱く。


「どうした?…やはり女のか細い腕では俺の攻撃を防ぎきれんか?」


「あら?たった今私に体術でやり込められてた人のセリフじゃありませんね。言っておきますが、能力バトルなら勝てるなんて思わないで下さいね?」


 風香の頭上に巨大な氷の刃が出現する。そして巨大な氷の刃がブライト目掛けて放たれた。



 風香のギフト能力。一つは“ウォーター・マスター”。地上に存在する水分を支配下に置き、温度や性質を操る能力。ギフトランクはA+。



 だが、放たれた氷の刃を、ブライトは残像を残して回避する。


「どうした?もう表情が変わったぞ?」


「…あら、そう見えるなら貴方の目はおかしいんじゃないですか?」


「ふん、その余裕がいつまで続くかな?」


 スピード・スターを発動。一気に間合いを詰めようとするが、風香はこれを氷のマシンガンで応戦して近づけ様とさせない。


「甘い!こんなもので俺を止められるか!」


 風香が放った氷の弾丸は、ブライトがロンズデーライトで創った盾に防がれる。


(詰められた!?)


 風香が危惧していた接近戦。先程までとは違い、スピード・スターを発動したブライトの攻撃は、速度は勿論、威力も格段に上がっている。


「オラオラオラァ!!」


 高速の拳!だが風香もその身に()()()()、ブライトの攻撃を柳の様に受け流す。


 風香の二つ目のギフト能力、“ワールド・オブ・ウインダム”。ワールドを冠するギフトランクS-の能力だ。



(スゲエ。この女、本当に冴嶋より強い!)


 ブライトの中で、風香の評価が格段に上がる。だが、風香からは先程までの余裕は消えていた。


(クッ…これじゃあいずれ攻撃を喰らう!なら…)


 風香は神経を集中させる…。自分の能力の中で、何がブライトに効果があるのかを、脳細胞をフル回転して考える。そして…



「真空斬!!」


 風香は大きく後方へ後退し、速度と風圧で真空を作り上げる程の突風を放つ。斬れ味も勿論だが、この能力にはもう一つの効果が存在する。



「そんな物…あがっ!?」


 ブライトはその風を避けずに目の前でブロックした。すると、ブロックされた衝撃で風が霧散。霧散した風がブライトの頭部を包み込み、その部分を真空状態にしたのだ。


「ごがっ…がっ…」


(息が出来ない!肺が潰れる!?)



 効いている。自分の攻撃は効いている!勝機と見た風香は、飛び上がって自身の持つ究極奥義の一角を惜しげも無く発動する!


「とどめと行きましょう!オーロラ・ブリザード!!!」


 先程の吹雪を上回る鮮やかなオーロラ色の吹雪がブライトを襲う。



(これはヤバイ!)


 自分の危機を察したブライトは、再びロンズデーライトで全身を包み込もうとするが……ここで()()()()()横槍が入った。


「ワールド・マスター!!!」


 比呂が叫ぶと、突然、ブライトは身動きが取れなくなった。


「俺はもう逃げない…。ブライト…お前には感謝してる。隠していた気持ちを吐き出して、せいせいする事が出来たから…。でも、俺は…()()()()()()国防軍の軍人だ!だから、お前を倒す!」


 比呂が、ブライトの()()()()()したのだ。


(なんだと!?相手の動きすら支配するだと!!!それに、ワールド・マスター?コイツ…()()しやがったのか!?)



 砕け散ったプライド。長年積み重ねて来た負の感情…。それらから解き放たれた比呂の脳裏で、()()()()()()()()()()()()のだ。



『…条件を満たした為、エリア・マスターは“ワールド・マスター”に進化しました』



 ギフト能力には上下互換が存在する。そして、条件次第で、ギフトは進化する。

 比呂のエリア・マスターは、覚醒を経て、“ワールド・マスター”、ギフトランクS+に大幅に進化していたのだ。



 ワールドマスターとは、始祖アンノウンとの決戦において亡くなった、世界中のスペシャリスト達の中でも最強と言われた英雄・『エルビン・クルーガー』が所持していた能力だ。



(なんなんだよ、この主人公補正は!?コイツ、やっぱり只のクズじゃ無かったってのか!?)


 ブライトの中で比呂が、殺す価値も無い皮を被った糞野郎から、倒すべきライバルに変わる。


 それは、比呂が長年渇望していた、光輝が比呂を()()()瞬間となった…。



(挫折したエリートの都合の良い主人公補正だと?…ふざけやがってえぇ~…)


「グゥゥウオオオアアアアアーーーーッ!」


 悪魔の様な雄叫びを上げるブライト。その身には、オーロラ・ブリザードが容赦なく降り注ぐ。



 そして…荒れ狂う暴風が止んだ。そこには…



「なっ…やっぱり、この男は…悪魔なの…?」


「くっ…力が強大過ぎて支配出来ない!」


 そこには、漆黒の鳥人装備を更に強化するかの様に、ロンズデーライトのプロテクターで覆われたブライトが、悠然と佇んでいた…。



 ブライトもまた、危機を迎え、そして新たなライバルを()()()得た事で、()()したのだ。



『…条件を満たした為、スピード・スターは“フラッシュ”に進化しました。

 …条件を満たした為、エレメンタル・ウィンダーは“ワールド・オブ・ウインダム”に進化しました』



 そして、覚醒した事でスピード・スターはギフトランクS、フラッシュに進化し、エレメンタル・ウィンダーは奇しくも風香と同じワールド・オブ・ウィンダムに進化する。

 更に、上位互換能力が存在しないインビジブル・スラッシュ、サイレント・ステルス、ロンズデーライトは大幅に熟練度が上がった。



「……クックック、スゲエ!力が溢れ出て来るぞ!!比呂……俺は…人間を辞めるぞぉぉぉっ!!」


 その姿を見た者ならば、誰でもこう言うだろう。まるで、この世界に降臨した…世界を破滅へと導く、()()()()()だと…。


キリが良いので今日はここまで。


主人公を成長させるのは、やはりライバルの存在です。


比呂は懺悔イベントを経て、幼馴染ライバルルートへと進むこととなりました。

この展開を望んでいなかった方も多いかと思いますが、今まで以上に気合いを入れて盛り上げていきますので、宜しければ今後ともご覧頂ければと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] サイレント•ステルスは、上位互換あった方が良かったのでは…
[良い点] >幼馴染ライバルルートへと進むこととなり 接待プレイにならなければ皆さん特に不満は無いのではないかな。 手加減して逃がしてを繰り返すとか。
[一言] 面白い  面白いけど、主人公が目指すダークヒーロー像が全く見えてこない。 不当な扱いを受けている野良ヒーローの待遇改善や自由を求めてぶっ怖そうとしてるのは知ってるけど、 何をもってダークヒー…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ