第65話 リーダーの責務
―白夢アジト前
残されたネイチャー・ストレンジャーは、国防軍からの援軍を待っていた。
仙崎の言葉に、ブルーは自分を見つめ直していた。
(何故、僕はさっき、僕達が行くと強く言えなかった?そりゃあ、全体を考えれば、全滅を防ぐ為には待機するのが当たり前だとは思っていた。でも、中将である仙崎さんを差し置いて、僕達が残る必然性は皆無だ)
「ブルー…あんま考え過ぎんな。仙崎中将は、自分で行きたいから行ったんだ。そして、お前は仙崎中将に任されてこの場に残ったんだ。誰もお前を責めやしねーよ」
「イエロー…すまない。君だってレッドとグリーンの為にも戦いたかっただろうに…」
「まあいいさ!俺達の仇は白夢じゃ無くて、黒夢のブライトだからな!アイツが中で待ってるってんなら、例え大将が止めても俺は中に行ってたけどな!」
いつも明るいイエローを、ブルーはウザイ奴だと思った事もあった。だが、今は違う。この明るさにどれだけ自分が救われているか…。
(多分…レッドもそうだったんだろうな…)
気を引き締め直し、援軍を待つ事に決めたブルーだったが、ここでホワイトの異変に気付いた。
「どうした?ホワイト…」
ホワイトは俯いていた。その様子は、これまで幾多の経験を共にして来たブルーをして初めて見る様な、とても思い詰めた様子だった。
「ホワイト…」
「ダメよ…行かなきゃ…だって、中では、ブライトが待ってるんだから…」
呟く様な小さな声だったが、今のホワイトの言葉を、ブルーもイエローもしっかりと聞いた。
「ブライトだと?おい、何を言ってるんだ?ホワイト…」
「え?私…何か言った?」
本当に知らずに出た言葉なのだろう。ホワイトは、今自分が呟いた事に気付いていなかったのだ。
「なあホワイト。今、ブライトって言ったよな?なんで黒夢のブライトがここにいるんだよ?」
いつも明るいイエローの口調が少しだけ厳しくなる。
不穏な雰囲気を察したブルーは、意識して優しくホワイトに問い掛けた。
「黒夢と白夢は友好関係にある。僕達の作戦が筒抜けだったとしたら、白夢が黒夢に救援を要請していたとしてもおかしくはない。でも、なんで君は今、確実にブライトがいる事を知ってる風に言ったんだ?」
ホワイトの顔が真っ青になる。その反応を見て、ブルーはホワイトのあり得ない行動を連想してしまった。
「まさか…君が今回の作戦の情報をリークしたのか?」
今回の作戦は極秘に行われるハズだった。なのに、現状は、恐らく待ち伏せされている状態。
敵にその種の能力者がいるか、もしくは内通者がいるか、どちらかの可能性は高かった。
「おい!おめぇ、自分が何したか分かってんのかぁ!?」
流石のイエローも、ホワイトに強く詰め寄る。
「だって!アイツは私の親友のグリーンと…私のレッドを殺したのよ!絶対に、絶対に許せない!!」
「ホワイト…まさか…」
ブルーは自分が大好きナルシストだから気付いていなかった。ホワイトがレッドに想いを寄せていた事に、今、気付いたのだ。
「…そっか、やっぱお前もレッドの事を。でも、レッドはグリーンと付き合っていたじゃねーか」
イエローから飛び出した爆弾発言に、ブルーはまたも驚いた。
「え?え?ちょっと待って?三角関係なの?ねえ?」
「いや…表向きはホワイトは一歩引いて2人を祝福してたよ。なぁ?」
「…我慢してたのよ。グリーンは親友だもの。私は…レッドへの想いを抑え込んでいたわ。でも!レッドは…グリーンが殺された事に冷静さを失って、ブライトにアッサリ殺されてしまった!それほどグリーンの事を愛してたんだって思うと…悔しくて…」
「え?えっと…取り敢えず、状況を…」
「ふざけんなよ!!」
突然叫んだイエローに、ブルーはビクッってなってしまった。とにかくもう状況が分からな過ぎたのだ。
「俺が…俺がいるじゃねえか…。グリーンにレッドがいた様に…俺がお前の傍にいちゃ駄目か!?」
「え?こ、告白?ちょっ…今それ所じゃ…」
「イエロー…貴方、私の事を?駄目よ!私は…私怨の為に情報を売ったのよ!」
ホワイトはイエローに背を向けた。肩を小さく震わせて、泣いているのだろう。
「俺は…お前の事をずっと見てた。だから、お前がレッドの事をずっと見てた事にも気付いてたんだ。…なぁ、俺じゃ駄目か?」
そう言うと、イエローはキャラに似合わず、ホワイトを背後から抱き締めた…。
(えー!?これ、なんかドラマの有名なシーンだよね!?ねえ!?)
「イエロー……私で良いの?こんな…嫉妬にまみれた私なんかで…」
「お前で良い。…お前が良いんだ!ホワイト!」
二人は見つめ合い…そして………
「よし!じゃあ、レッドとグリーンの弔い合戦だ。行くぞ、ホワイトいや…マリーン」
「ええ。レッドとグリーンのおかげで、私も誰を愛すべきか気付かされたもの。行きましょう、イエロー…いえ、虎治郎」
二人は、手を繋いで白夢アジトへと入って行った…。
後に残されたネイチャー・ブルーこと江口寿は、二人の後ろ姿を呆然と眺める事しか出来なかった。
「ねえ…僕って、リーダー失格…なのかな?」
「え?いや……ブルーさんは多分悪く無いっス…」
相良に慰められながら、もうリーダーは懲り懲りだと心に誓うブルーだった。
※どうだい?シリアスからのラブコメディ(笑)