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第58話 作戦会議

 ―黒夢本部・作戦指令室



 黒夢本部作戦指令室は、年に一度使うか使わないか、非常に機密性の高い任務を行う際にのみ使用される部屋だった。


 そこには、黒夢のボス・ナンバー1・桐生辰一郎。

 黒夢の兄貴的存在、ナンバー2・ジレン。

 お色気お姉さん、ナンバー4・ヴァンデッダ。

 謎の魔術師、ナンバー9・イーヴィル。

 そして漆黒の鳥人、闇の閃光・ブライト。

 任務関連を統括する運営面での実質ナンバー2、ライン。


 この6人が集まっていた。



「さて、お前らには事前に伝えていた通り、今回の任務では白夢のアジトで待ち構えて国防軍の戦力を削ぎ落とす」


 まず、桐生が口を開いた。そして、ラインが続く。


「じゃあ、詳しい説明は僕から。情報が洩れているとは知らない国防軍は明日、少数精鋭部隊でアジトに乗り込んでくる予定だから、黒夢(ぼくたち)でそれを撃退するYO」


 この作戦にラインは情報伝達班として参加する。白夢本隊の新しいアジトへの諸々の移送と、万が一此方の作戦が見抜かれた際の守りを固める為だ。


「国防軍から今回の任務に参加が予定されてるのは、少数精鋭の国防軍兵士。メイン部隊として白虎隊の20名。ネイチャー・ストレンジャーも3人で参加する模様。あとは、全体の指揮を執る中将が1人。

 で、実際アジト内に進入してくるのは白虎隊とネイチャー・ストレンジャー、場合によっては中将だろうNE」



 ネイチャー・ストレンジャーは、ブライトによってリーダーであるレッドとグリーンが殺されたので3名での参加となる。今となっては、ブライトにとって彼らは力量も既に計れてるし、恐れるに足らない相手だ。

 ただ、白虎隊…あの女少将の事は、少しだけ気になった。殺したい程憎い訳でも無いのだが、肩を貫かれた借りは忘れていない。



「今回の戦場となる白夢のアジトは、中が地下迷路の様な造りになっている。国防軍が順調にアジト内に進入すれば、最終的には四つある各部屋に誘い込む様な通路になってる。そして、白夢のメンバーで、なるだけそれぞれの部屋に少数で分散させる様に誘導するから、それぞれ誰が何人来るかは分からないけど思う存分に戦ってくRE」


 あくまでメインはブライトを含むナンバーズの4名。各々が一部屋ずつで待機し、国防軍を待ち構えるのだ。



「…もし、一つの部屋に全員でやって来たら?」


 ブライトが質問する。当然、可能性のある話だからだ。


「誘導を行う白夢のメンバーも有能だから可能性は低いと思うけどね。でも、実は各部屋には隠し扉があって、他の部屋に通じてるから、その時は隣の部屋から応援に駆け付けてNE」


(結果的に、4つの部屋に向こうの戦力を均等に誘き寄せて勝負に持って行きたい訳か…。どうしてもあの女少将と戦いたいって訳でも無いけど、どうせ誰かが戦うんなら俺が相手したい気もするな…)



 と、ここでブライトは部屋が4つなのに、メインはメンバーが5人いる事に気付く。


 そんな疑問に答える用に、イーヴィルが手を上げる。


「あ、俺はタイマンは遠慮だ。だから、確か白夢のアジトって4つの部屋の奥がボス部屋みたいになってたから、そこで待機してるわ。根本的に俺の能力は戦闘向きじゃないからな~」


 イビル・アイのイビルレーザーは充分驚異的な能力だと思ったブライトだったが、メインの選抜に特に文句があった訳では無いので何も言わなかったのだが、ラインが待ったを掛ける。


「いや、イーヴィルにも戦ってもらうよ?ボスはあくまで緊急時の為待機だからNE」


「ええ~」


 あからさまに嫌そうな声を上げる崇彦。すると桐生は…


「…仕方ない。そんなに嫌ならやはり俺が…」


「ボスは待機。いつも好き勝手やってるんだから、今回は我慢して下さい。以上、作戦会議を閉じまーSU」


 光輝は項垂れるナイスミドルを眺めながら、戦闘狂の桐生は本当は戦いたいんだろうな~と呆れていた。





 ―国防軍ミナト支部・作戦指令室




「…今回の作戦に失敗は許されない!各自、全身全霊を以て任務にあたれ!」


「「「はいっ!!」」」」



 作戦指令室では、今回の任務の指揮を取る陸軍中将・仙崎(せんざき)の指令に、この場に集まった“白夢討伐作戦”の参加者達が大きな声で返事をしていた。


 部屋には陸軍大将である権田がいる事もあってか、兵士達に緊張が走っている。



 ここで、今までは作戦会議を部屋の隅で静観していた権田が前に出て来た。


「今回の作戦は、我が陸軍が総指揮を担っている。絶対に失敗は許さんから、死ぬ気で任務にあたれ。以上だ」


 陸軍のトップ・大将の言葉だ。権田は身内には若干甘いが、他の軍の兵士にはとことん冷たいと言われている。


 今回、総指揮を取る仙崎は陸軍。しかしおかしな事に、戦闘のメインを勤める白虎隊は空軍の所属だし、ネイチャー・ストレンジャーは海軍の所属だ。権田が失敗した際の責任逃れの編成だと、この場に居る者なら誰でも勘づいている。つまり、もし失敗すれば、その二組に全責任が集中するであろう事は、この場にいる全ての兵士が知っていた。



 会議が終わる。


 それぞれの兵士が部屋を出ていく中、白虎隊副隊長・斑目清二( まだらめせいじ)は、会議を欠席している隊長の水谷風香に代わり、隊のメンバーを集めていた。


「…今回、もしかしたら水谷隊長は作戦に不参加になるかもしれない。事情は、お前らも現場にいたから分かるだろうから敢えて言わないが…」


 白虎隊は、あの日ショッピングモールの現場にいた。そこで、自分達の隊長が、一般人の男が死んだ事にショックを受けて茫然としている姿を目撃している。


「…まぁ、所詮()()()()で隊長職に就いた人だ。驚く様な事でも無い…。だろ?」


 話題先行…。国防軍最年少の、しかも女性少将の風香に、斑目を含む血気盛んでプライドの塊の様な白虎隊の一部のメンバーは反感を持っていた。


「つー訳だから、当日は多分俺が指揮を取る。宜しく頼むぜ」


 白虎隊メンバーから拍手が起こる。それが、風香の白虎隊での環境を表していた。



「あ、ついでにお前らにも紹介しておく。今日から白虎隊(ウチ)に入った新入りだ」


 斑目に紹介されたのは…比呂だった。


「…真田比呂二等兵です。ギフト能力はA+、エリア・マスターです。宜しくお願いします」


 比呂にとって、本来なら白虎隊への配属は願ったり叶ったりだった。若手の有望株が揃っている精鋭軍隊…。つまり、自分も力を認められた証なのだから。だが、比呂の表情はどこか優れなかった…。


(確かに、白虎隊への入隊は名誉な事だ。でも…なんでだ?ネリマ支部では結果的に逃げたと罵られ、先日のショッピングモールでもブライトに一撃で伸されて気絶してただけだった。

 …何より、俺は幼馴染を…光輝を()()()()()()()()()()んだぞ?こんな俺が、なんで白虎隊なんかに推薦されたんだ?)



「真田のギフトは強力だ。実力も申し分無い。ただ、一つ言っておく。…白虎隊(ウチ)に一般人に助けられる様な臆病者はいらねぇ…」


 白虎隊のメンバー全員が、比呂を嘲笑している。


 彼等は知っているのだ。ネリマ支部での件、ショッピングモールでの件、肝心な所で、比呂は戦闘から逃げ出したり、役に立たなかった事を。



 言われるままで黙ってられない程には、比呂にもまだプライドが残っていた。


「ネリマの件は、国防軍の一員として、伊織中尉の命令で冴嶋中尉を医務室まで運んだ結果です!

 それに…自分はショッピングモールでは、あのブライトに立ち向かいました!結果的に気絶させられましたが…」


「ああ、そうだな。お前の取った行動は間違いじゃ無いさ。でもな、白虎隊の一員として…戦闘系の軍人として…男として、お前の様な恥知らずはいらないし、俺達ならブライトであろうが一撃でなんてやられてない。…白虎隊の一員になったんだから、今後は気を引き絞めてくれよ?」


 斑目は笑いながら去って行った。同じ様に他のメンバーも、比呂を見下す様に笑みを浮かべながら斑目に続いて行く。

 …つまり、白虎隊のメンバーは誰1人として比呂の事を認めていなかったのだ。



 1人残された比呂は、血が出る程唇を噛み締めていた。


「…くそっ、結局俺なんてこんな扱いなのか……!」


 脳裏に浮かぶのは、闇の閃光・ブライト。全て、ブライトに関わった事で比呂の評価は著しく低下したのだ。


 だが、今の自分ではブライトには到底勝てない。それを理解しているからこそ、やり場の無い感情にただただ怒る事しか出来なかったのだ…。

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