第57話 プレデタームーブ
「スナイパーだ!スナイパーが狙ってるぞ!」
「おいお前ら!周囲を警戒しろ!」
今回、フィルズ組織グローリーは、2台の貨物トラックを襲撃し、その荷物を根こそぎ強奪する計画を立てていた。
貨物トラックが東京を離れた際に、護衛の姿は無かった。その後も暫く警戒をしながら貨物トラックを見張っていたが、漸く安全だと確信して襲撃を実行したのだ。
なのに現在、襲撃を阻止されている。
(何故だ!?この場所で襲撃する事を決めたのはつい先程だそ!?まさか…内通者!?……いや、それより今はここを乗り切らなければ!)
グローリーのボスも、突然の妨害に動揺している。
「あがっ!?」
更にもう1人、太股を狙撃されて倒れた。
「警戒!敵はこちらをスナイプしている!場所を特定しろ!」
ボスの命令で、グローリーのメンバーは全員遠方から来る攻撃への警戒を強める。
…直ぐ隣に、獰猛な捕食者がいる事も知らずに…。
「ごぼっ!?」
突然、グローリーの一人が、身体を自分でくの字にして倒れる。
「あべしっ!?」
「ひでぶっ!?」
「たわばっ!?」
「されぼっ!?」
その後も次々と、ひとりでに身体をくの字にしてメンバーが倒れていく…。
「なんだ!?今度はなんだ!?」
焦りから叫び声を上げるボス。だが、彼も小規模とは云えフィルズ組織のトップだ。頭を冷静にして眼をこらす……すると、空間が歪み、その歪んだ何かが動いて、メンバーを攻撃しているのが見えた。
「透明人間だ!眼をこらせ!少しだけ空間が歪んで見える奴がいるぞ!」
ボスの言葉に反応し、他のメンバーも眼をこらす。…が、見えていようがいまいが、そもそものスピードに眼が追い付いていけず…。
更には、透明人間に気を取られてる隙にレーザービームのスナイプにより狙撃され、グローリーのメンバーは次々とやられてしまった。
自分以外のメンバー全員が踞っている光景を目にし、ボスは襲撃の失敗を知る。
即座に思考を生き残る事に切り換えた。ある程度狙撃されている方向は把握出来ている。そして、透明人間に関しても自分は、姿はギリギリ捉える事が出来ているのだ。なので、狙撃の方向に気を使いつつ、透明人間が自分を狙った瞬間にカウンターで迎撃し、その隙に逃げる!
……聞こえて来る音は、貨物トラックのエンジン音のみ。自分は今、得体の知れない何者かに狙われている。しかも、敵は二人。
絶対絶命の状況下で、グローリーのボスの集中力は極限まで研ぎ澄まされていた…。
!?遠方からレーザービームが飛んで来た!それに反応したボスは、避ける方向に透明な何かがいないのを確認して、レーザービームを回避した。…が!
「うぎゃっ!?」
突然、斬撃を背中に受けた様な衝撃がボスを襲う。
致命傷では無い…。だが、もう立ち上がれる様な軽傷でも無い。
…足音が自分に近付いて来る…。見ると、背景に溶け込んではいるが、確かに人型の歪みが自分に向かって歩いて来ていた。
「…な、何もんだ?一体…なんで俺達を…」
透明な人型の歪みが、足元から姿を露にした。その姿は、漆黒の鳥人の様な姿だった。
「我は闇の閃光・ブライト…。貴様らを屠った者だ…」
闇の閃光・ブライト。グローリーのボスでも聞いた事がある。最近、国防軍ネリマ支部を壊滅に追いやり、その際にあの冴嶋中尉を倒した。更には、あのネイチャー・ストレンジャーのレッドとグリーンをも倒したと噂されている、現在フィルズの世界でも大きな話題になっている程の男だ。
「く…黒夢か…」
「そうだ。組織の命を受け、今回お前らの襲撃を邪魔させてもらった」
「こ…殺すのか?」
ブライトは残忍な男だ。先にあげた冴嶋やネイチャー・ストレンジャーの二人の他、国防軍の兵士を100人も無慈悲に殺したと聞いている。
グローリーのボスもまた、己の死を覚悟していた。
「…殺しはしない。俺は無駄な殺生は好まない。ただ今後、また黒夢に害となる動きを見せれば……その時は殺す。いいな?」
見逃してくれる!?生に希望を見たグローリーのボスは、激しく首を上下に振った。
…その後、グローリーのメンバーは全員生きたまま、電柱や電線に宙吊りにして放置された。要は、見せしめである。
グローリーがここにいるメンバーで全てであるハズが無い。誰か他のメンバーが、もう少ししたら様子を見に来るだろう。そんな時、この光景を見たら…絶対に黒夢に…漆黒の鳥人に逆らおうなんて気を起こさない様にする為の見せしめ。
そして、ブライトは貨物トラックが無事に運転を再開するのを見届けると、再び空間に溶け込む様に消えてしまった…。
―待機場所のホテル
「本当に全員生かしちまったな~。ネリマ支部で兵士100人をぶっ殺した奴とは思えない優しさだな」
ブライトが待機場所へ戻って来ると、既に任務を終えた崇彦は、フードを取ってベッドに寝そべっていた。
ブライトも、再びベルトに手を置いて変身を解除する。
今回光輝が崇彦にお願いしていたルール。それは、誰一人殺さない事だった。
「あの時は……いや、あの時だけじゃない。多分、リバイブ・ハンターで蘇生した後って、何故か“殺意”の衝動が沸いて来るんだ…」
「殺意の衝動ねぇ…。…なぁ、なんで蘇生する度、殺意が沸くんだ?」
「それは分からないけどさ…」
「…今、何気にゴッド・アイ発動したけど、お前の深層心理からも情報は得られなかったな。なんか、常時レジストされてる様な…」
「…お前のゴッド・アイって、かなりタチ悪いよな。あんまり俺に使うなよ?」
「でもまあ、今の質問みたいに、見れない情報もあるんだよ。つか、やっぱり質問が複雑だと見れない物の方が多い」
殺意の衝動…。それが、光輝が過去に人を殺して来た言い訳にはならない。それは自分が一番よく知っている。だからこそ、普段は出来るだけ殺しは控えようと考えていた。
それは、彼に残った最後の正義感か?ただの偽善か?自分でも説明は出来ない。
既に正統なヒーローになる夢は捨てた。それでも、自分は只の悪党にはなりたくない。どうせなら、せめて自分だけは自分の事を誇れる様な、そんなダークヒーローになりたい。そう思っていたのだ。
これがしたいが為に、サイレント・ステルスをゲットさせました(笑)
若干別作品と演出が被っているのはご愛嬌と云う事で(^_^;)