閑話 ヒーローになった男
※25日更新の第四章・第53話から二日後の時系列です。
俺が死んでから3日後…。近所のお寺では、俺の葬儀が行われていた…。
学校ではずっと崇彦としか喋らない期間が長かったんだが、かなり多くの生徒が俺の葬儀に駆け付けてくれている。
最近は少し愛想が良かったからかな?…こんな事ならもっと前から周りとの接し方を考えるべきだったと後悔しても仕方ない。
母は…泣き腫らした目のまま、茫然としていた。父が支えてやらなければ起きていられない程に窶れていた。
最大の親不孝は、親より先に死ぬ事だって言うけど…本当にそうなのかもしれない。…ごめん。いつか必ず、周防光輝として会いに行くから。
梓と遥は、そんな母の代わりに、テキパキと葬儀の手伝いをしてくれていた。二人とも何故か顔や身体に絆創膏や包帯を巻いている。
そして、意外だったのが吉田だ。
吉田もまた、梓や遥と共に、葬儀の手伝いをしてくれていた。そして、これもまた梓達と同じく身体中に絆創膏や包帯を巻いていて、三人で協力して動いてくれている。
…アイツら、仲良かったっけ?
あと、瑠美も来てくれていた。ティザーはブライトにメールで友人が死んだって連絡くれてたけど、まだ会って無いんだよな。…なんか騙してるみたいで申し訳ない。
いずれタイミングを見て、俺が生きてて、俺がブライトなんだって教えてあげよう。
比呂は、この場には居なかった。…薄情な奴だなと思う反面、来辛いんだろうなとも思うので、仕方ない。
そして、何故か風香も、この場に姿を見せて居なかった…。
でも、それで良かったのかもしれない。ここで風香に会ってしまったら、俺は生きている事を風香にバラしてしまっていたのかもしれないから。
…いつの間にかそれ程好きになってたんだな…。くそぅ。
必ず!必ず平等な社会を作って、必ず会い行こう!それまで風香が他の奴と付き合ってなければだが…。…いや、他の男?……風香に近づく男には秘密裏に警告しよう。…あれ?それじゃ吉田と同じか。
そして驚いたのが、俺の葬儀には多くの一般の人と、多くのメディア関係者が訪れていたのだ。
俺の隣で、カメラに向かって喋っているリポーターの話を聞くと、なんと俺は、無能力者の一般人にも関わらず、危険を省みず、親友でもある国防軍の軍人・真田比呂を助ける為に命を落とした英雄として報道されていたのだ。
…あれ?これ、あとで俺が生きていたって言ったらバッシング起きるパターンじゃね?…いや、今は深くは考えまい。
後から聞いた話だが、俺の死は国防軍にとって都合の良いスケープゴートだったらしい。
俺と比呂、無能力と能力者の友情は、美談として語られ、今回の国防軍の失態を隠す役目を果たしたのだ。…ネイチャー・レッドとグリーンの死亡も報道されなかったし。
まあ、既に現場には一般人は逃げていて殆どいなかったし、いても何らかの報酬をエサに黙らされたんだろうが。
だが、安心は出来ないな。俺が能力者だった事は国防軍にはバレてる訳だし。そこから俺とブライトに結び付けないとも限らないのだから…。ボスに頼んで、ウチの父と母を監視対象にしてもらおうかな?
その時、俺の黒夢端末のバイブが鳴った。
『よう、相棒。表世界とのお別れはすんだかい?』
「…ああ。ま、サイレント・ステルスで眺めているだけだけどな。もうすぐ帰るよ」
『しっかし、皮肉なもんだよな~。あんなにヒーローに憧れてたお前が、今や本当に全国的なヒーローだぜ?』
「ああ。本当に皮肉だよ。死んだ事でヒーローになれるなんてな。その上、実際には俺は死んでも蘇るし、色々複雑だよ」
『それ、ウケる!』
「ちえっ…うるせえなあ~。よし、今日も張り切ってフェノム狩りにでも行くか!」
『お~う。んじゃ待ってるから早く来いよ~』
そう言って、俺の相棒は一方的に電話を切ってしまった。
さて…ここからだ。死んでヒーローなんて、俺のガラじゃ無い。
俺は、俺の力で、この世界を変えて、本当のヒーローになってみせるんだから!
そして、ヒーローになって帰って来るんだ。周防光輝として、この無くしてしまった日常に!
相棒って!?…と思った方は、次回をお楽しみに!
今回の閑話は、『トラブルズvs霊長類ヒト科最強のメス』…の案と、今回のお話で迷った結果、こちらを閑話で出しました。ご都合主義万歳\(^_^)/
だって、こっちの方が筆が進んだんだもの。
なので、トラブルズと吉田さんが傷だらけだったのは、お互い拳で語り合った結果、絆が生まれたと云う胸熱?展開があったからです。
本日15時に、第二回キャラクター紹介を更新し、0時よりいよいよ第四章を開始します!お楽しみに!