第49話 激突!ネイチャー・ストレンジャー
※一部描写を修正しました。フ◯ーザは流石にふざけ過ぎた(^_^;)
「さあ、己の罪に溺れて眠れ…」
ブライトは密かに考えていた決め台詞を披露して、禍々しいオーラを解き放った。
ネイチャー・ストレンジャー…引いては、国防軍に対して、光輝は今回の件で完全に容赦しないと決めた。周りから見たら自分こそが悪であり、自分のやって来た事、そしてこれからやるであろう事の業の深さは理解している。
だからこそ、この言葉は光輝の中で只の決め台詞等では無く、決意を秘めた宣言なのだ。
「これは確かに油断出来ない…ねっ!」
ブルーがブライトに蹴りを放つ。が、その蹴りをアッサリと避ける。
その後も、鋭い動きでラッシュを仕掛けるブルー。流石はネイチャー・ストレンジャー。加速系のギフトを持っていなくても動きが速い。
「っつ…、なんて奴だ!僕の華麗な攻撃を全て避けるとは!?」
「ならこっちだ!サンダーボルトッ!」
イエローのサンダーボルト。正に光速の一撃は、普通なら避けられるものでは無い。だが、ブライトはスピード・スターを発動してギリギリで回避した。
「なっ!?なんて速さだよ!?」
驚くイエローに続いて、ネイチャー・グリーンが攻撃を放つ。
「…ウィンド・カッター!」
先程光輝にトドメを刺した攻撃。これを、ブライトは冷静にインビジブル・スラッシュで相殺する。
「なっ!?今のはまさか、冴嶋中尉のインビジブル・スラッシュ!?」
古今東西のギフトマニアであるレッドは、一見しただけでブライトが冴嶋から習得したインビジブル・スラッシュを見破った。
「…だったらどうした?ほら」
レッドに向かってインビジブル・スラッシュを放つ。レッドは辛うじて避けるも、ブライトに対する警戒を更に強めた。
「クッ…コイツ、本気でヤバいぞ!皆、気を付けろ!」
ネイチャー・ストレンジャーに緊張が走る…。
今の所、ブライトにはどんな攻撃も掠りもしない。目で追うのがやっとな程のスピードを誇り、飛道具としてインビジブル・スラッシュまで使える。
レッドは考えを改めた。ブライトは、下手したら黒夢ナンバー2のジレンを凌ぐ脅威かもしれないと。
「さあ、どうした?かかって来ないなら、こっちから行くぞ」
ブライトが動き出す。最初のターゲットは……
「俺かよ!?」
イエローだった。
「クッ…“ライジン”!!」
イエローはブライトのスピードに反応し、攻撃を避けた。続け様の連続攻撃にも対応してみせる。
(なに?俺のスピード・スターと速さは互角!?)
イエローは雷を操るギフト能力、ランクA、エレクトロン・サンダーの能力者。攻撃として電撃を使うのは勿論、己の体内の神経を雷の電気で刺激する事で、限界を超えた速さで己の身体を操る事が出来るのだ。
「どうだ!速さなら負けないぜ!」
「速さなら…ね」
目にも止まらぬ攻防が繰り広げられるが、驚く事に、瞬発的な速さではイエローが勝っている。そして、イエローが勝負に出た。
「喰らえ!エレクトロン・チョップ!」
10000アンペアの電気を帯びた一撃がブライトを襲う。だが…そのチョップは、ブライトの硬化された腕でブロックされ、爆発を起こした。
「…フン、速さだけでも俺と渡り合えたのは誉めてやろう。だが、その速さで俺の身体に接触するのはオススメしないぞ?」
先程光輝の状態で使っていた為に温存していた…いや、最早温存する事が出来なくなったロンズデーライトを発動した。
接触部のみを硬化したので、光輝が使っていた能力だとはバレて無い様だが。
「ぐぎゃあああああああっ!」
イエローの腕が、あり得ない方向に折れ曲がっている。だが、如何に耐電スーツとはいえ、流石に今の攻撃は身体にビリビリと衝撃を受けた。
「先ずは一人…」
実際は身体が痺れているがおくびにも出さずに、苦しむイエローに近付く。
「やめなさいーーっ!」
その時、ロンズデーライトで創った刃でイエローの身体を貫こうとしたブライトを、グリーンの風の攻撃が妨害する。
…ブライトの心臓がドクンと跳ね上がった…。
(そうだ…。俺は、アイツに殺されたんだ。アイツだけは絶対に殺さなきゃ…)
グリーンに対して、強烈な殺意が溢れだす。そして、瞬く間にグリーンに接近し、首を掴んで片手で持ち上げた。
「ああ…ぐ、あが…」
「グリーン!や、やめろブライト!!」
グリーンの危機に、レッドが取り乱した様に叫ぶ。…他のメンバーも、ブライトから放たれた禍々しい殺気にあてられて、金縛りに掛かった様に動く事が出来なくなっていた。
「ヤラレタラヤリカエス…ワカッテルヨナ?」
「い…いや…死にたくな……」
首を掴んでいた手に力を込める。グリーンの細い首が軋む…。
…がその時、意外な人物が動いた。
「うあああああああああっ!!!」
比呂が、ブライトに飛び掛かったのだ。
(ここで来るか!?相変わらずコイツは、横槍が好きだな!)
折角ブライトのターゲットから外れたにも関わらず、比呂は突撃した。その胸の中には、長年光輝に対して抱いていた感情が大きく影響を与えた。
(お前まで…お前まで俺を無視するのか!ブライトッ!!)
が…、ブライトはグリーンの首から手を離し、突っ込んできた比呂に対してカウンターで後頭部に手刀を放つ。
「あがっ…!?」
結局、比呂は何も出来ずに激しく突っ伏してしまった。
「…フン、雑魚が」
そのブライトの言葉は、薄れ行く意識の中でしっかりと比呂の耳に残ったのだった…。
「よくやった!真田!」
少なくともグリーンの危機を回避出来た事で、比呂の攻撃は無駄では無かった。邪魔された事で気分を害したブライトに、レッドが襲い掛かる。
拳に炎を纏った連撃。これをブライトはダッキングとスウェーだけで避け続けてカウンターを狙うが、流石はネイチャー・ストレンジャーのリーダー。隙を見せない。
「僕達を忘れて貰ったら困るな!」
「だな!一気に仕留めるぞ!」
ブルーもまた氷気を身に纏い、イエローは今の間にホワイトに折れた腕を治療してもらい、腕と脚に電撃を纏わせてブライトに襲い掛かる!
これをブライトは両腕を硬化させて全てを捌く。既にロンズデーライトを出し惜しみする余裕は無い。しかも、ブロックはしていてもそれぞれ属性付きの攻撃はブライトに少しづつダメージを与えた。
(一対多が戦隊ヒーローの常とは云え、実際相対する側になってみると卑怯だな!)
これを静観していたジレンとヴァンデッダは…
「流石にこの展開は厳しいんじゃない?どーする?」
「…そうだな…。確かにブライトは攻撃力・防御力・スピードのバランスが取れてるが、この状況を打破する為の経験が足りてない気がするな…。攻撃を受ける様になったら加勢するか」
反撃する隙すら与えられない状況下だが、ブライトの気分は昂っていた。
(この感覚…冴嶋と戦った時と同じだ。少しの気の弛みも許されないこの緊張感。…たまらねえ!)
「フハハハハッ!その程度かネイチャー・ストレンジャー!三人がかりでも、この俺一人に一発も攻撃を与えられないとはな!」
「言ってくれるじゃないか…イエロー、頼む!」
「おう!なるだけ早くな!ライジン!」
ブライトの相手をイエロー一人に任せ、レッドとブルーは一旦離脱する。
向かい合うブライトとイエロー。
「さあ!スピードナンバー1を決めようぜ!」
「フン!望む所だ!!」
スピードはほぼ互角。だが、イエローもそれだけではブライトには通用しない事は先程のやり取りで思い知ったハズだが、それでも果敢にブライトに向かって行く。
イエローがブライトを足止めしている間に、レッド・ブルー・グリーンの三人が横一列に並んでいた。
「やるぞ、ブルー、グリーン!」
「ああ、派手にかまそうじゃないか」
「……わかった」
レッドを中心に、ブルーとグリーンがブライトに向かって掌を向ける。
「OKだ!イエロー!」
「やっとか!?おう!」
イエローがブライトから距離を取る。そして…
「ネイチャーズ…トリプル!!」
レッド・炎、ブルー・氷、グリーン・風。三つの力が織り成す、氷炎が風によって威力を増大させた攻撃がブライトに放たれた!
寸前までイエローと接近戦を演じていたブライトは、反応が遅れて回避出来ない。
(これは、ヤバイ!!)
巨大な氷炎がブライトを包み込む!
ヴァンデッダが思わず声を上げる。だがジレンは…
「ああ!これ、まずくない!?」
「いや…よく見てみろ」
氷炎が止む…。今までどんなフェノムもフィルズも、この技を喰らって立っていられる者はいなかった。
「やったか?」
レッドが、願う様に呟く。…が、そこにはロンズデーライトの盾で身を守ったブライトが立っていた…。
盾の面積を増やせば硬度が落ちる為、必要最低限…上半身及び頭部だけは守れるギリギリの大きさの盾で、なんとか致命的ダメージは避ける事が出来たが、盾で隠せなかった脚や腕などの一部はボディースーツごと火傷と凍傷のダブルパンチで焼けただれていた。
(クッ…痛ってぇ…)
「なっ…今のを防ぐのか?」
「なんて奴なの…」
ブルーとグリーンが驚きの声を洩らす中、レッドはブライトの盾を見ていた。
(あれは…さっきの少年と同じ能力?いや、まさか…あの少年は確かに死んだハズ…)
ブライトが盾を消滅させる。そして…
「…やってくれたな………正義の味方ども…。今のは、効いたぞおおおおぉーーっ!!」
一気に突進して、頭部をロンズデーライトで硬化したままレッドの腹に頭突きを喰らわす!だがレッドも只ではやられない。接触の瞬間に放ったファイヤーパンチがブライトの顔面を浅く捉え、右の目元を覆う装備が破壊された。
「ごはぁっ!?」
レッドの左の肋骨がバキバキと音を立てて吹っ飛ばされる。
「レッド!?」
他のメンバーの意識が、突然の奇襲で吹っ飛ばされたレッドに奪われている間に、ブライトはイエローに襲い掛かり、硬化した脚でミドルキックを放つ。レッド同様イエローも肋骨をへし折られて地面に転がった。
「なっ!?速い!?」
そして相対したブルーに、猛然とラッシュを仕掛ける。
「オラオラオラオラオラァッ!!」
「ぐっ…はや…ぐほっ!?」
最初の数発には反応を見せたブルーだったが、手数に圧され被弾すると、そのままラッシュの渦に巻き込まれて意識を失った。
あっという間にネイチャー・ストレンジャーの主力三人が地に這った。
そして残されたのは…
「これで…邪魔者はいなくなったな」
グリーンは最早恐怖で動けず、立ち尽くすしかなかった…。
ゆっくりと、ブライトがグリーンに向かって歩き始める。
「いや…来ないで…」
「…いいだろう」
グリーンの懇願に、ブライトはアッサリと歩を止めた。
「…え?なんで…」
「来ないでと言ったのはお前だろう?」
意味が分からなかった。分からなかったが、グリーンは少しだけ、助かるのかもしれないと云う希望を抱く。が、次の瞬間…
「ここからでもコロセルカラナ…」
放たれたインビジブル・スラッシュで、グリーンの首は斬り飛ばされたのだった…。