第4話 最強女子決定戦勃発?
なんか、本編の展開遅くね?とお思われの皆様…もう少々お待ちくださいm(__)m
※四人組のクラスを全員A組に修正しました。
光輝と水谷の座るベンチの前には、渡辺、大久保、近藤、そして吉田。全員将来有望なA組だ。
いずれも身長180㎝を超える巨体だが、一応性別は女性に属する、最強女子高生達である。
「おわ…」
あまりの迫力に、光輝は思わず声が漏れた。
崇彦の話では、4人共自分に好意を持ってくれているみたいだが、大変申し訳無いが全く嬉しくなかった。
「えっと…皆さんは?」
あまりの迫力に男でも怯んでしまうのに、水谷風香は一切動じずにいた。
「…今すぐ、光輝様の隣から離れて、マッハでここから去ってくれれば…この場は許してあげる」
今まで光輝の恋愛を妨害していたであろう主犯・吉田が水谷を睨む。だが、水谷はそれでも動じない。
「何でですか?私、今日転校してきたばかりなので、周防君が初めての友達なんですよ。友達と仲良くしたいと思うのは駄目なんですか?」
すると、吉田以外のゴリ…女の子が表情を歪める。中でも、顔が猿に似ている大久保が一歩前に出た。
「ああん?テメェが誰と友達になろうが勝手だがよ、光輝様だけはアタイらが許さねぇぞ?」
「…大久保さん、光輝様の前だよ。言葉使いに気を付けな。」
「あ、そうね。スミマセンでした、光輝様」
吉田に窘められ、何故か光輝に頭を下げるゴリ…大久保。
…と云うより、この4人は自分を巡って険悪な仲だと崇彦が言っていた事を思い出す。なのに何故4人で一緒にいるのだろう?
「…とにかく、女が光輝様と口を聞くのは私達、“周防光輝の童貞見守り隊”が許さない。友達が欲しければ他を当たりな」
(ちょ、何それ!?なんで俺の童貞を勝手に見守ろうとしてんのよ!つか、なんで童貞だって決めつけてるんだよ!!)
「ど、童…」
顔を真っ赤にして光輝を見る水谷。流石の光輝も自分が童貞扱いされたのを黙ってられなかった。…童貞なんだけども。
「かっ、勝手な事を言うな!なんで頼んでも無いのにそんな訳分からんグループ作ってんだよ!」
「本来なら、私達は今日、決着を着けるつもりだったんです。誰が光輝様に相応しいか…」
「はぁ?なんで?俺の意志は無視なのかよ!?」
「そしたら、どこぞから転校して来たメス豚が光輝様に弁当作って来てイチャイチャしてるって聞いて…争ってる場合じゃ無いと思ったんです」
「いや、俺の言葉を無視して勝手に話し進めんなよ!?」
「だから私達は協定を結んだんです!決して光輝様に他のメス豚を近付けさせない。私達も抜け駆けしない。抱かれる時は…4人一緒にって…ポッ」
ゴリ…ちょっとガッチリした女の子達に囲まれるハーレムな自分を想像して青褪める。
(つまりあれか?俺は今後、ゴリラ以外と恋愛出来ないってか?なにその地獄…)
…とは言えない光輝。何だかんだで女の子を泣かせるのはポリシーに反するのだった。
「…それ、おかしくないですか?」
そんな雰囲気を切り裂く様に、水谷風香が口を開いた。
「…なんですって?もう一度言ってくれるかしら?」
これに、吉田が無表情で応える。だが、こめかみには青筋が走っている。
「なんで周防君の恋路を貴女達が勝手に遮るんですか?そんなの、周防君の自由じゃないですか」
「………」、「………」、「………」、「………」
まさか、反論されるとは思って無かったのだろう。吉田達4人は押し黙って水谷を睨む。
「そんなに周防君が好きなら、正面から好きって言えば良いじゃないですか。裏でコソコソしてないで」
「……私達よりちょっとだけ可愛いアンタみたいなメス豚に何が分かる!私は…私達は、生まれてからずっと他人よりちょっとだけ強かったから、男は皆逃げてくんだ!だから…光輝様にだけは避けられたくなかったのよ!」
いや、ちょっとだけじゃ無いでしょうよ…とはやっぱり言えない光輝。
「貴女達が周防君を好きになるのは自由だけど、同じ様に他の人が周防君を好きになるのも自由。それに周防君が誰かを好きになるのも自由でしょ。それを邪魔する権利は、貴女達には無いと思うわ」
雌ゴリラ四天王を前に一切動じずに言い放つ水谷に、光輝は驚きよりも尊敬の念を抱いた。
男の自分でもこの強烈な四天王は怖い。それなのに、水谷は堂々と反論をしているのだから。
「黙って聞いてれば調子に乗りやがって…ぶん投げてやる!!」
我慢の限界を超えた、柔道・渡辺が水谷に掴み掛かる。
危ない!止めなければ!…と、光輝が水谷の前に飛び出した……が、渡辺の手は何者かに掴まれて止まった。
「寄ってたかって一人の女の子を苛めるのは褒められないね」
真田比呂。光輝の腐れ縁の友人でもある、学年1の人気者が仲裁に入ったのだ。
「さ、真田先生!」
光輝に好意を抱いているハズの四天王が顔を赤らめながら驚いている。
(あれ?この表情って、どー考えても惚れてるよね?つか、先生って何?皆、俺の事が好きだったんじゃなかったっけ?)
とんでもない奴等に好かれた事に嘆いていた光輝だったが、自分に向いていたハズの好意が他人にアッサリ向けられるのも、それはそれで面白くなかった。
「ここは僕に免じて、その手を引いてくれないかな?」
「…は、はい!」
4人は顔を赤らめながら素直に頷く。それはやはり、光輝としては納得いかない光景だった。
「え~っと、君達、俺の…見守り隊なんだよな?なんで比呂の言う事にすんなり従ってんだよ?」
「真田先生はこんな私達にも優しく接してくれて、色々とアドバイスしてくれる先生だし、その…手の届かないアイドル枠みたいなものですから!」
比呂は憧れの存在だが、自分達とは別世界の人種。対して、光輝は手の届く現実的な人種と云う事だろう。言いたい事は分かるが、やはり釈然としない光輝。
「危なかったね。…あれ?君は今朝の?」
「あ、はい!今日から転入してきた水谷って言います」
「そっかー。やっぱり転校生だったんだね。水谷さんみたいな綺麗な人なら忘れる訳ないもんな。僕は真田比呂。宜しくね」
相変わらず天然プレイボーイ風に気さくに話す比呂と、先程までの落ち着いた印象ではなく、まるで四天王の様に緊張した様子で受け応える水谷。
(……なんだよ。水谷も結局顔が良い方が良いってのかよ。これじゃあまるで俺はピエロじゃねえか…)
圧倒的主人公キャラの比呂と一緒にいると云う事は、自分が圧倒的脇役キャラだと云う事を嫌でも自覚させられてしまう。それは、ヒーローを目指していた光輝としては非常に辛かった。
ちょっと良いなと思った子も、子供の頃から一緒にいた幼なじみも、皆自分では無く比呂に好意を抱く。これまでもずっとそうだった。
だが、水谷と少しだけ話してみて、もしかしたらこの子は違うんじゃないかと期待してしまった自分がいた。
(馬鹿だな、俺は。分かってた事だってのに…)
またも女子生徒に無駄に優しくする比呂を、遥と梓は呆れた様に見ている。彼女達もまた、光輝の事など眼中に無いのだ。
その場にいるのが嫌になった光輝は、まだ会話中の比呂と水谷が気付かない様に、その場を後にした。
「あ…周防く…」
「あ!僕達今からランチなんだけど、良かったら水谷さんもどう?」
「え?あ……はい」
水谷は去っていく光輝を呼び止めようしたが、結局比呂の誘いを断る事は無かった。
主人公が能力に目覚めるまでが遅い?…フッ、いつもの事さ。