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第47話 後悔と怒りと悲しみと

「こ…光輝!!??」


「こ…光輝さん!!??」


 突然、梓と遥が叫んだ事で、ネイチャー・ストレンジャーの面々は何事かと二人の少女を見た。二人は、見るからに狼狽しているのが分かる程に取り乱している。



「なんで?…え?光輝?…光輝っ!?」


 梓は最早倒れて動かなくなった光輝を抱き締める。


「どうして…光輝さんが…?」


 遥も、謎の男の正体が光輝だと知り、愕然としていた。



 その様子を見ていたレッドは、梓と遥が比呂の知り合いだと思い出し、比呂に問い掛ける。


「おい、真田二等兵。知り合いなのか?」


 レッドの問い掛けにも、比呂は一切反応を見せない。ただ、呆然と立ち尽くすだけ。



「なんで!?なんでアンタは!昔っから無茶ばっかり…なんで!?」


 梓が光輝の胸元に顔を埋める。その瞳からは大粒の涙が零れていた。



「おい、真田二等兵!?」


「…ウソだ…なんで光輝が……?ウソだ…ウソだろ!?」


 状況を見かねたネイチャー・グリーンが、光輝の容態を確認する為に近付くと、梓は光輝を庇う様に抵抗した。


「なによ!?…アンタが光輝をこんなにしたクセに!なんで心配するフリしてるのよ!」


「…そんなつもりじゃ…、ホワイト、彼を治せる?」


 グリーンは梓を無視してホワイトを呼ぶ。だが、ホワイトは、既に光輝がピクリとも動かない事から察し、首を横に振った。



「今すぐ、(ウチ)の病院に運びます!」


 見かねた遥が電話を取り出す。遥の父親は大病院の院長なので、直で連絡を取ろうと試みたのだ。


「ちょっと待ちな、お嬢さん。ソイツは野良フィルズだ。遺体は俺達が持ち帰る…ぶへっ!?」


 そんな遥を、イエローが制する…が、梓の鉄拳がイエローの頬を捉えた。


「光輝が野良フィルズ?ふざけた事言わないで!光輝は無能力者だったのよ!そうよ…つい最近ギフトが発現したんだわ…。だから、まだギフト能力者の証だって持って無かったのよ!」


 本来、ギフトは15歳までしか発現しないと云われている。その情報もあってか、ネイチャー・ストレンジャーのレッド以外の面々は、梓の発言を世迷い事程度にしか捉えなかった。



「いてて…いや、んな事言ったって、結局はコイツはギフト能力者の証を携帯してなかったんだぜ?それに、そこの新兵に攻撃しようとしてたみたいだったし、どー考えても野良だと判断するしか無いだろ?」


「どー考えたって光輝は敵じゃないって、全て見てた私達が言ったでしょ!?本人だって必死で否定してたじゃない!?

 それに、光輝はちょっと前まで無能力者だった!ずっと、光輝は子供の頃から国防軍に入るのを夢見てた!ヒーローになる事を夢見てた!そんな光輝が、フィルズになる訳が無いでしょ!?まだ申請してなかっただけよ!

 でも比呂を助ける為に…テロリストに立ち向かったんだわ!それなのに、話も聞かないで野良フィルズ扱いして…その上、命まで……ふざけないでよ!!」



 梓は光輝を強く抱き締めた。後悔と、謝罪の意を込めて…。


「ごめんね?ごめんね…光輝。ギフトが発現しなくて、一番辛い時に、私は貴方を突き放してしまった…。ごめんね。許してくれなくたっていい。でも、本当に…ごめんね…」


「私も…比呂様の言う事を真に受けて、貴方を軽蔑していました…。悔しい…なんで私は…」


 光輝の胸に顔を埋め、梓と遥は光輝に懺悔していた…。



 呆然と立ち尽くしていた比呂だったが、二人が光輝に懺悔する姿を見て、意識を取り戻す。それと共に、光輝がギフトを発現していた事実に、複雑な感情を抱いた。


「…おい、梓、遥、光輝は……ギフトに目覚めてたのを、俺達に隠してたんだぞ?きっと、俺達を馬鹿にしてたんだ!自分が能力者になったのを良いことに、()()俺の事を馬鹿に…!?」


 比呂の頬を風が切り裂いた。


「比呂…。それ以上口を開くと、今度は当てるわよ?」


 梓の拳が比呂の頬を掠めたのだ。



 梓と遥は、これでもかと云う位軽蔑と怒りの混じった眼差しで比呂を睨んでいた。


「な…なんなんだよ二人共!君達は俺の事が好きなんだろ?光輝じゃなく!」


「…騙されてた私が馬鹿だったわ。本当に、自分で自分を殴り殺してやりたい位に…。アンタは光輝の言った通り、糞野郎よ」


「百年の恋も冷めるとはこの事なんでしょうね…」


 比呂は悟った。梓と遥は、完全に自分の事を嫌ってしまったのだと。それは、光輝から梓と遥を奪い取った形でハーレムを築き、満足していた比呂のプライドをズタズタに引き裂く。そして何よりも、結局自分は光輝より劣っていたのだと気付かされた事にショックを受けていた。



「…彼が例え野良フィルズだったとしても、真田を助ける為に戦ってくれたのは間違いないんだろう。…本当にすまない事をしてしまった…。

 とにかく一旦彼の遺体は国防軍で預かろう。彼の事はフィルズとしてでは無く一般人の犠牲者として…いや、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()英雄(ヒーロー)”として…」


 レッドが場を納める様に言いながら光輝に近付こうとした瞬間、頭上から灼熱の炎を纏った男が飛び降りて来て、地面を破壊した。


「なんだ!?」


 レッドが梓を、ブルーが遥を抱え、イエロー、グリーン、ホワイトと比呂も、その場を離脱する。



 炎を纏った男が破壊した地面からはマグマが吹き出し、()()()()()()()()()()()()()()()…。



「光輝いぃっ!?」


「光輝さんっ!?」


 梓、遥は、光輝の遺体がマグマに呑まれ、消えて行くのを見た。そして、声にならない叫び声をあげた。



「お前は…“黒夢のナンバー2・熔炎のジレン”!?」


「久しぶりだな、レッド。どちらが最強の火炎系能力者か、決着をつけるか?」


 炎を纏った男は、桐生に次ぐ黒夢のナンバー2・熔炎のジレン。逆立った短髪の細マッチョで、タンクトップに身を包んでいる。



「ジレン…。何故お前程の男が此処に?」


「俺はウチのスカルとジョーカーを迎えに来たんだが……どうやら既に撤退していた様だな。なら、もう此処には用は無い」


 そう言って立ち去ろうとするジレンだったが、それをレッドが許さなかった。


「逃がすと思うのか?望み通り、決着をつけても良いんだぜ?」


「フン…場所を考えろ。ここで俺とお前が戦えば、まだ逃げ遅れてる一般人も含め、大勢死ぬ事になるぞ?それでも良いのか?正義のミカタが」



「くっ…必ず、いずれ決着をつけてやる!」


「フン、楽しみにしておくさ。じゃあな………ん?」


 ジレンは転移石を使おうとしたのだが、突然現れた()()()()に気付き、苦笑いを浮かべた。


「なんだよ…元気そうじゃねーか…」



 ネイチャー・ストレンジャーの面々の前に、漆黒の人影が着地した。


 その場にいる者達全員が、突如現れた()()()に視線を奪われる…。



「…我が名は闇の閃光・ブライト。貴様等を屠る者だ…」

長かった…。ここからは、ブライトのターンです!

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