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第38話 悩める男

 ―数日前、フィルズ組織・風前之灯のアジト。



 国防軍は全国のフィルズ組織一掃する為、この一週間全国各地で徹底的にフィルズ組織のアジトを制圧していた。


 国防軍のフィルズ一掃計画には、まだ入隊間もない新人兵士も駆り出され、当然比呂もこの作戦に参加していた。



「た、助けてくれ!?」


 今、比呂の目の前で命乞いしているのは、この組織のボスだ。


「助けてくれ?フィルズに人権なんか無いんだよ。一丁前に命乞いなんかするな」


 そして、比呂が操作した銃が、ボスのこめかみを撃ち抜いた。



(…俺は強い。こんな組織位なら一人でも壊滅出来る程に…。なのに、アイツ(ブライト)には勝てる気がしない!)



 この組織の掃討作戦は無事終了し、兵士達は撤退を始めていた。


 それでも、比呂はボスを殺した余韻と、己の無力さがごちゃまぜになったまま、その場に立ち尽くしていた。



「比呂ク~ン、撤退よ」


 そこに、今回の掃討作戦のリーダーでもある柏倉少尉が比呂を呼びに来た。


「柏倉少尉…。俺には何が足りないんでしょうか?」


「ん?ん~…やっぱり経験かな?最近は態度も殊勝になって努力もしてるし、ギフトのランクも高いし。あと10年もすればかなりの実力者になってると思うけど?」


「それじゃあ…それじゃあアイツには、ブライトには勝てないんですよ!」


「ブライトって、冴嶋中尉を殺した化物でしょ?比べる対象が悪過ぎるわよ」


「だって…だってアイツは…」


 突然、比呂が震え出す。ブライトはあの時、確実に比呂を殺そうとしていた。それも、虫ケラを踏み潰すかの様に。その恐怖が、比呂の脳裏から離れないのだ。



「冴嶋中尉を真正面からタイマンで倒すなんて、将軍クラスでも難しいのよ?そのブライトだって、かなりの年月を経てその強さを手に入れたハズ。だから君も焦る事は無いわよ」


「…そんな悠長な事言ってられないんですよ!次、ブライトと会ったら、アイツは真っ先に俺を殺しに来るかもしれないんだから。あの時のアイツの目は、完全に俺を殺そうとしてましたから…」


「そっか…。恐ろしい奴に目を付けられたものね」



 比呂は、何処か他人事の様に話す柏倉にイラっとした。そして、ブライトの復讐対象が、冴嶋と自分だけでは無い事を思い出した。


「何言ってるんですか?柏倉少尉だって一回会ってるじゃないですか?それも、思いっきりぶん殴ってましたよね?」


「え?…………えええっ!?()()()()()がブライトなの!?」


 柏倉はあの時、比呂と二人で拘束した男がブライトだった事を、この時初めて知ったのだ。



「どどどどどうしよう!?もし会ったら、私も殺されるかな??」


「さあ?ただ、ブライトは()()()()()()俺と冴嶋中尉を恨んでるみたいだったんで、可能性は無くは無いんじゃないですかね?実際に俺も殺されそうになったし、冴嶋中尉に至っては本当に殺されちゃいましたし」



 柏倉の顔が真っ青になる。


「…私、内勤にしてもらうわ…」


 柏倉の能力は探知系。範囲は半径3キロ程なので、前線に立つ事は無くとも、残念ながら現場には出動させられるだろう。



 少尉と言っても、能力によって強さは違う。最も、強さだけが評価される訳では無い事は比呂も充分理解している。だが、比呂が将来有望とされていたのは、間違いなくギフト能力の()()を評価されての事だ。


 その強さでブライトに圧倒的に劣っている事は、比呂にとっては屈辱的だし、それ以上に恐怖だった。



(ブライト…。確かに、複数の能力を発現してる時点で普通じゃ無いけど、一体、どれだけの年月を研鑽すれば、あんな強さが手に入るんだ?)



 比呂の中で、ブライトは既に絶対に抗えないであろう恐怖の象徴となっている。にも関わらず、あまりにも無謀だが、ほんの僅かなライバル心が芽生え始めていた。



 …と、柏倉が比呂の元へ戻ってきた。


「あ、比呂君。来週末は比呂君の地元のショッピングモールで、国防軍の()()()があるから、それに出なさいって上から命令が来てるから、宜しくね」


 国防軍は、定期的にフェスと呼ばれる催しを行う。国民と触れ合い、国防軍が如何に人々の暮らしを守る為に日々頑張っているかを知ってもらう為に。


 今回は、全国各地のフィルズ組織を8つ壊滅した事を大々的に発表するつもりなのだ。



「なんで俺が?まだ単なる二等兵ですよ?」


「高校生の軍人なんて、ただでさえ珍しいの。中には、若者を戦地に送り込むなんて言語道断って謳う人権派団体もいるから。貴方がどれだけ優秀かを証明し、それを払拭するのも目的なんでしょ。それに地元だしね」


 当初、比呂の存在は、柏倉が言った様に人権派団体への配慮から、学校でも軍に入隊している事は隠されていたのだ。

 しかし、先日のネリマ支部での失態は、表向き公にはされてないが、どうしても情報と云うものは何処かから洩れるもの。


 結局は軍の信頼回復の為に、将来有望な若手がいるのだと知らしめて、信頼を強固にしようと云うのが目的で、ある種のスケープゴートの様な上からの指令だった。


(チッ…要は客寄せパンダだろ?…こんな時に…)



 もっと、そして早く強くなりたい比呂にとって、フェス(それ)は煩わしいイベントでしかなかった。


 だが、このイベントが、比呂にも大きな変化を招く切っ掛けとなる事を、この時の比呂には知る由も無かった…。

※ブクマ10000件突破記念と致しまして、本日は15時にもう一話投稿します!皆大好き(スミマセン)梓さん登場回ですが…(^^;お楽しみに!

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[気になる点] とある作品をほとんどパクってる。これはひどい
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