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第36話 幼馴染・浅倉梓

※ブックマーク10000件突破しました!本当に感謝です!

※光輝の心情の部分を加筆しました!

 アルミラージ討伐の任務に赴いたブライトとティザー。任務を順調に遂行した二人は、高台の眺めの良い場所で昼御飯を取る事にした。


「…旨そうだな。」


「でしょ?気合い入れて作って来たんだから!」


 ティザーが自慢気に重箱を広げる。メニューは、ナポリタン・おむすび・サンドイッチ・鶏の唐揚げ・ハンバーグ・肉じゃが・卵焼き・野菜サラダ・デザートに手作りプリンと、質も量も豪華なラインナップ。


(いや、気合い入れすぎだろ…。小学生の運動会かよ?)



「さ!ドンドン食べてー!」


(いや、流石に全部は……えーい、いったれー!)


「頂こう」


 ヘルメットを被ったままなので食べ辛いのだが、顎と口の角度を調整して鶏の唐揚げを口に放り込む。


「うまっ……中々いけるな」


「でしょー?あ、これも食べて!はい、アーン…」


(アーンって…)


 次々と料理がブライトの口に運ばれて行く。どれもこれも旨いのだが、食べさせられ過ぎて途中から味が分からなくなってしまった。



(く、苦しい…。スーツもタイトだから尚苦しい…)


「すごーい!ブライト君、全部食べちゃったねー!」


「……旨かったぞ」


(くそっ…もうクールキャラ設定捨てちまおうかな?いや、そしたら正体バレそうだしな…)



 気を緩めると吐きそうな程だが、なんとか堪えてティザーが持ってきたコーヒーで寛ぐ。


「…ありがとね」


「なにがだ?」


「さっきの事。あれ、私の事庇ってくれたんだよね?」


 ティザーは、先程のスカルから言われた事を気にしていたのだ。


「さあ?何の事だか?」


「フフフ。ブライト君はクールに見えてアツい人だもんね!あの時も、ヨガーとミストの弔いだって、言ってくれたりしてさ。おかげで、私は大分助けられたんだ…。こんな私でも、二人の為に何か出来たのかなって」


 光輝としては、当然二人の弔いもあったが、それ以上に目の前にいる(国防軍)に対しての殺意が抑えられなかった面が強く、ティザーに感謝されても自責の念が強くなってしまうのだが…。



(…いくら何でもあの時はやり過ぎたんだよな…、はぁ…。でも、ティザーは今は明るく振る舞ってるけど、やっぱり長い間一緒にいた仲間を失った悲しみは俺の非じゃ無いだろうな…、俺だって未だに悔しいんだから。

 だから弔いに関しては、ティザーが恩義を感じてくれてるのなら、それを否定する事はしたくない)


「…気にするな。俺とお前はもう()()みたいなもんだろ?」


「同志か…。うん、いいね、同志!」


 以前、瑠美はヨガーとミストを同志だったと言っていたので、敢えてそう言った。


(…自分でもやり過ぎたのは重々承知している。それでも、少なくとも同志であるティザーの心を少しでも救ってやれたのなら…少なくとも、全くの無駄な行為では無かったのかもな…)



 そんな会話をしながら、暫く寛ぐ二人。


 ティザーは終始笑顔でいてくれた。それでも、時折ふと、寂しそうな表情を浮かべる時があった。


(仲間を失うって…やっぱり簡単には割り切れるもんじゃないな。ティザーがもし、目の前で死んでしまったら…もう既に想像できないし、したくない。…少なくとも、俺が傍にいる限りは、ティザーの味方になろう。そして、絶対に死なせない様に、強い意志を以て戦おう)



 そして、あっという間に時間は過ぎ、夕暮れ時を迎えていた…。


「さて、今日は帰るか」


「そだね…。あ、今日、ブライト君はアジトに泊まりじゃないの?」


 土日は光輝も泊まりの予定ではあった。が、下手にキャラ設定したせいで、正直ブライトキャラを通すのが疲れて来ていた。もし、ティザーと晩飯でも行く事になればスーツを脱ぐ訳にもいかなくなるし。


「…俺は…今日は帰る」


(すまん、ティザー!一緒にいるとボロが出そうで疲れるんだ!)


「そんなんだー。ブライト君って、普段何処に住んでるの?」


「俺は港……いや、決まってないぞ?」


「あ、そうだよね。プライベートの情報は詮索しないのが黒夢のルールだもんね。…港エリアなんだろうけど」


 うっかり口が滑ったのをなんとか誤魔化そうとしたが…バッチリ聞かれてしまった様である。


「…忘れろ」


「はーい!忘れまーす!でも、私も港エリアにはよくいるんだー。もしかしたら、どこかですれ違ったりしてたかもね?」


(…最近毎日会ってましたけどね)



「でも、残念だなー。仕方ない、晩御飯は他の誰か誘おうっと」


「…悪いな」


「いーのいーの!まぁ、ちょっと残念だけどね」


 そう言ってアジトへ帰還した後、ブライトはティザーと別れた。



(さて、どーしようかな。本当は今日はアジトに泊まる予定だったんだけど、部屋に閉じ籠もるか?でもなぁ…)


 ブライトはまだ、アジトの中でまともに行った事があるのは自室とボスの部屋とシドの工房しかない。医務室も一応行った事はあるが、最早場所すら覚えてない。なので、今日は食事施設や娯楽施設等も探訪しようとうと思っていたのだが…。


(…マフラーとサングラスで行けるかな?でも、ティザー会ってしまったりしたらバレないかなぁ?)


 ここに来て、毎日会っていた弊害が出てくる。いつも会ってる友人なら、マフラーとサングラスをしていても、間近で見れば気付く可能性が高いだろう。


(仕方ない…今日は帰るか…)




 ―自宅。午後8時。



 結局家に帰って来た光輝は、特にする事も無いので、自室でボ~っとテレビを見ていた。


「…暇だな。ちょっとコンビニでも行ってこようかな?」


 コンビニは光輝の家から10分程の距離にある。この時間なら比較的人通りも少なく無いので、夜道の一人歩きも然程危険では無い。まあ、光輝にとって既に夜道の危険など皆無なのだらうが。



 …で、光輝がコンビニに向かって歩いてると…


「「あっ」」


 幼馴染で、今は比呂のハーレムメンバーである浅倉梓とバッタリ会ってしまった。



 比呂が言っていた事を思い出す。


(俺の事を好きだった女に嘘八百並べて自分に惚れさせたって言ってたけど…それってやっぱり梓の事だよな…)


 思い出しただけで比呂をぶん殴りたくなった。それは、比呂が言っていた通り、光輝が昔は梓に好意を持っていたからかもしれない。


(…でもまあ、今更だな)



 光輝は何も言わず、梓の横を通り過ぎようとするが…何故か突然腕を掴まれた。


「なんだ?」


「ちょっと…話があるんだけど」


「そうか…。でも、俺には無い。じゃあな」


 昔は好意を抱いていた。だが、今や梓は比呂のハーレムメンバーとして、常に光輝を邪魔者扱いしているのだ。光輝がギフトに目覚めず苦しんでいた時に、梓は力になる所か迫害した。それだけで、既に光輝にとって梓は面倒な存在でしかなくなっていた。

 この間は能力が発現した事による嬉しさから上機嫌だった為に優しい声を掛けたが、国防軍ネリマ支部での事を考えると、あれだけの人を殺しておいて自分が女にうつつを抜かす様は違和感を覚える…と云うより、そんな事する資格は無いだろう思い直していた。


 結局、改めて考えると今更梓と仲良くしようとも思わなくなっていたのだ。


(全て比呂の口車に乗らされたのかもしれないが、それでも今更だな)



「ちょっと!光輝のくせに生意気…」


 しつこい上に、横柄な態度を取ろうとした梓に、光輝はほんの少しだけ怒気を込めて睨み付けた。


「うるせえんだよ。テメェも、あのお嬢様も、あの善人の皮を被った糞野郎も。これ以上俺に関わるならぶっ殺すぞ」


 少し口調が強めになってしまった事に、光輝は自分でも驚いていた。


(…やっぱ、能力が発現するまでの蟠りは俺の中でも大きかったのかな…)



「なっ…なによ…光輝のクセに……。」


 必死で強がろうとしているが、梓は涙目で震えていた。


 恐らく、梓は光輝にとって初恋の相手だ。昔は比呂同様、梓の事も苛めっ子から助けた事もあった。今は何とも思ってないとしても、そんな初恋の相手を泣かせてしまったのは、光輝にとっても本意ではなかった。



「………悪かったよ、言い過ぎた。だから、泣くなよ」


「う~…ぐすっ、泣いてないもん!」


「泣いてるじゃねーか」


「泣いてないって言ってるでしょ!」


(はぁ…めんどくせえ)



「…ったく、今からコンビニ行くんだ。ちょっとで良いなら話しを聞いてやる」


「………分かった」


 軽く舌打ちをしながら、光輝は歩き出した。梓も光輝の後をついて来るのだが、何故か梓は光輝の腕を掴んだまま。


 それは、苛められて泣いている梓を光輝が助けて、一緒に家に帰ると云う、子供の頃によくあった光景によく似ていたのだった…。

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