第33話 放課後の再会
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黒夢のフィルズによる国防軍ネリマ支部襲撃事件から五日。だが、この情報は、世間には一切流れていない。
フィルズによる襲撃で、中尉2名含む国防軍軍人149名が死傷したなどと世間には広まれば、国防軍の、信用低下に繋がるからだ。
だが、この事態を重く見た国防軍は、直ぐ様対応に出る。
まず、警察による徹底したフィルズの取締り。これにより多くの野良フィルズは拘束されるか、始末された。
そして国防軍による、フィルズ組織の徹底摘発。これにより、小・中規模な組織の多くは逮捕又は壊滅させられた。
当然、これらの情報はマスコミで大々的に報道され、結果的に国防軍と警察は、信用のアップに成功していた。
そして、光輝が通う学校では、相変わらず比呂と風香の欠席が続いていた。
当初は誰も気にしていなかったのだが、二人して五日間も欠席しているのだ。影では、二人は付き合っていてるのでは無いかとの噂まで流れている。
光輝はそんな噂は信じていなかったが、それでも風香の事は心配になる。残念ながら電話番号もメールアドレスも知らなかったから連絡の取り様が無かったのだが。
そして、光輝=ブライトの下には、黒夢端末に共闘の誘いが殺到していた。
あの冴嶋を倒した大物ルーキー。ブライトの名は、組織の中で確実に大きくなっている。
だが、あまりにも共闘のメールが多いので、殆んどは未読スルーしてるのが現状で、唯一連絡を取り合ってるのがティザーしかいなかった。
ティザーには、瑠美として光輝のスマホにもメールが来るので、たまにどっちがどっちだか分からなくなる事があるのだが、今の所は光輝=ブライトだとはバレていない。
―そんな放課後。
「ねえ光輝って、彼女いるの?」
「ぶふぉっ!?な、何!?」
瑠美と一緒にカフェでお茶をしていると、突然の質問に光輝は飲んでいたアイスココアを盛大に吹き出した。
「ゴホッ、コホッ…まぁ、彼女はいないけど…。」
実際、光輝は風香とはまだ付き合っていない。連絡先すら知らないのだから。
「そうなんだ~。意外ね、光輝はモテそうなのに」
(なんだよ突然?まさか…瑠美、俺の事を??)
光輝は瑠美の事を、同志として見ている。そこに、今の所は恋愛感情は無い。
だが、瑠美は控え目に見ても美人だ。歳は一つしか違わないのだが、明らかに歳上の魅力的なお姉さんに見える。
そんな瑠美に告白されでもしたら…。最近風香と会ってない事もあり、流石の光輝もグラつく可能性はある。
「舞はもう新しい彼氏いるみたいだし、勿体ない事したわね。折角良い顔してるんだから、早く彼女の一人や二人作りなさいよね」
…普通にそう言われ、別にまだ好きでも無いのにフラれた気分になってしまった。
「…瑠美こそ、彼氏はいないのかよ?」
「いないわよ。私、サバサバしてる風に見られるから、あんまり男が寄って来ないのよ。まぁ、同年代のガキんちょに言い寄られても迷惑だから好都合だけどね」
「そりゃまあ…瑠美は大人っぽいけど。じゃあ、彼氏はいらないって事?」
「誰もそんな事言って無いじゃない?これでも気になってる人位いるわ」
意外だと思う反面、少しだけ悔しい気持ちになる光輝。思春期の高校生の心は複雑である。
「ど、どんな人だよ?」
「え?そうね…、クールで、便りになって、仲間想いで、とっても大人な人よ」
「ふーん。瑠美は歳上好きな訳ね。全然意外じゃないな」
「でしょー?ま、もう五年経ったら光輝もイイ線行くかもだけどね?今は可愛い弟って所かな」
「ハイハイ、そーですかー。じゃあお姉ちゃん、カフェの支払いお願いねー」
「ちょっと、男の癖にケチだな~」
「だって俺、弟だもん」
光輝は瑠美と一緒にいる時間が楽しかった。やはり、苦楽を共にするのは仲良くなる為の最高の特効薬なのかもしれない。
「ねえ光輝。明日は休みだし、今からカラオケでも行かない?」
「ん?いいぜ。一昨日は旧式ニンジャーまでだったから、今日は現式ニンジャー制覇しようぜ!」
そんな感じで、まるでカップルの様に仲良くカラオケに向かう二人の背後に、錯覚では無い本物の冷気が感じられた。
「ん?なんだ?」
光輝は、新手の能力者か?と、少しだけ思いながら振り向くと、そこには俯いたまま佇む少女がいた。
「……光輝くん」
重く冷たい声。だが、その少女はこの五日間、光輝がずっと会いたかった人物だった。
「風香?風香か!?」
「お久しぶりね…光輝くん」
光輝は嬉しくて風香に近寄った…が、得も言われぬ威圧感に立ち止まってしまった。
「…ど、どうしたんだ?ずっと休んでたけど…まだ体調が悪いんじゃ無いよな?」
「体調?…そうね…なんか、凄く気分が悪いわ…」
風香は相変わらず俯いたまま、光輝を見ようとしない。
「ところで光輝くん…。そちらの女性、お友達かしら?」
「え?ああ、先日知り合ってな。気が合うから最近よくつるんでるんだ」
「……へ~。よくつるんでるんだ…。ふ~ん…楽しそうで良いわね。私は、この五日間大変だったのに…」
どこか様子のおかしい風香に戸惑う光輝に反して、瑠美は全てを察していた。
「…ねえ光輝。もしかして、この子が“いつも言ってた可愛い彼女”?」
光輝は、何言ってんだ?と瑠美を見るが、風香は勢い良く顔を上げた。
「いつも言ってた?…可愛い彼女?」
心なしか、風香の顔の血色が良くなっている。
「そうなんでしょ?あんたも隅に置けないね~。まさか、こんなアイドルみたいな可愛い子が彼女だなんてね」
「おいおい、何言ってんだよ?俺達は…」
「…か、彼女!?」
風香の顔は、湯気が出る程真っ赤になっていた。
「自己紹介がまだだったわね。私は天海瑠美。松本女子高等学校の三年よ。よろしくね!」
「あ、ハイ!宜しくお願いします!私は水谷風香です!あの、天海さんは三年生なんですね?お、大人っぽくて羨ましいです!」
瑠美の機転のおかげで、風香はすっかり機嫌を治した様だ。
瑠美が光輝の耳元で呟く。
「貸し、一つね」
「お前……スゲーな…」
こうして、瑠美の機転で最大の危機を乗り切った事に流石の光輝も気が付き、感謝の意を込めてこの後のカラオケ代三人分を奢るのだった。
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