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第27話 異次元の攻防

 ブライトが温存していたインビジブル・スラッシュを発動した!


 一気に間合いを詰めて、冴嶋の手前2メートルの距離。つまり、威力は充分。しかも、ここまでスピード・スターしか発動していない為、冴嶋の頭の中でインビジブル・スラッシュは想定外のハズ。



 激しい金属音と共に、衝撃で冴嶋が大きく後退する。



 冴嶋の劣勢に周囲が唖然とする中、ブライトはヘルメットの中で顔を歪めた。


 5メートル程後退した冴嶋は、既に体勢を立て直している。そして、ブライトの胸には斬撃による傷跡が着いていたのだ。


(あの野郎…インビジブル・スラッシュを刀で防御し、吹っ飛ばされる瞬間、返す刀で俺を攻撃しやがった!?…幸い、咄嗟の事で威力が落ちてたのとボディースーツが頑丈だったから無傷だったが…)



 ブライトも驚いてるが、冴嶋はもっと驚いていた。


「…今のは、斬撃系のギフト?僕のギフトと発動が似てたけど…まさかね」



 ブライトは考えを改める。冴嶋のスキルは中・遠距離攻撃だから、近接戦に持ち込めば何とかなると勝手に思っていた事を。


(俺のスピードに対応するとは…アイツ、多分近接でも達人クラスだってのか?)


「クソッ!」


 つい先日まで、自分は既に冴嶋を超えてるだろうと驕っていた自分を叱責する。この男相手に能力を出し惜しみするのは愚策だと。



「…冴嶋…。ここからは、全力でお前を倒す!」


「面白いね…マジで!君は最高だよブライト!もっとだ!もっと楽しもう!」


(チッ…戦闘狂め!)



 ブライトがもう一方の腕にもロンズデーライトで鋭利な刃を造り出し、二刀流になる。


「くらえっ!!」


 両手で同時にインビジブル・スラッシュを発動。


「なっ!?やっぱこれ、インビジブル・スラッシュ!?」


 自分のギフトと同じ攻撃に虚を突かれたが、冴嶋は一歩後退して更に自らもインビジブル・スラッシュを発動させて辛うじて相殺してみせた。


(チッ!こっちは二刀流で二つ発動したのに、一太刀で二つの斬撃を相殺するなんて!)



「…くそがっ!ドンドン行くぞ!」


 再び二刀流で連続で斬撃を放つ。と、同時にスピード・スターで加速し、一気に間合いを詰める。


「うおっ!?」


 斬撃を相殺している間に、ブライトの蹴りが冴嶋の腹を打ち抜く!が、これを冴嶋は腕でブロックした。


「くぅっ…!やる…ねえ!!」


 冴嶋の一閃!だが、既にそこにはブライトの姿は無い。



「なんで?なんで君が僕と同じギフトを持ってるのさ!?」


「同じ?…同系統なだけだろ」


 ギアを一段上げたスピード・スターで撹乱する様に動くブライトを、冴嶋は捉え切れなくなりつつある。



 冴嶋は考える。


(同系統?…だよね。なら、インビジブル・スラッシュの下位互換能力かな?まさか上位?いや、上位は無かったハズ…ま、今はどっでもいいや。

 それにしても、やるね~!ギアを上げてから更に速くなった!これじゃあ僕でも目で追うのがやっとだ…)



 見えない程のスピードで動きつつ、時折斬撃を飛ばし、そして間合いを詰めて近接攻撃を繰り出すヒット・アンド・アウェイで、徐々にブライトが冴嶋を追い詰めて行く。



「…なあ、ミスト。お前、ブライトと戦って勝てる自信あるか?」


「…愚問だな。能力を発動する前に死んでるだろう」


「凄いよ…。黒夢の“ナンバーズ”になれる程に…」



 比呂もまた、その戦いをじっと見つめて、己の無力さを実感していた。


「なんなんだ?なんなんだよ、コイツら?俺は、将来有望なんだろ?国防軍でも期待されてるんだろ?嘘だったのかよ?こんな…こんな奴等、どれだけ努力しても絶対に勝てっこないじゃないか!」


 そんな比呂に、伊織が声を掛けた。


「自分が自惚れてた事に気付いたか?」


「………」


 比呂は何も言えなかった。調子に乗って新兵をけしかけ、多くの仲間を失い、自らの無力さまで露呈してしまったのだから。


「お前のギフト能力は間違いなく有望だ。でも、あくまでそれは使う側の力量が伴わなければならない。

 お前の今回の行動は、しっかり上に報告する。厳罰を覚悟しておけ。そして当然、それを止められなかった私も同罪だ。」


 伊織が、決意を秘めた表情で比呂の肩に手を置いた。


「私達には、まだやるべき事がある。これからブライトは、国防軍にとって大きな敵になる可能性があるだろう。奴を野放しにしたら危険だ。…このまま冴嶋中尉から生き延びる事が出来れば…だが。

 …冴嶋は怒るだろうけど、私達は国防軍の軍人として、国を守る旗手として、サシの勝負を邪魔してでもあの男をこの場で仕留める!」


 伊織の言わんとする事を理解し、比呂は力強く頷いた。



 冴嶋は眼を瞑った。ブライトの動きを目で追うのは無理だと考え、視力以外の四感を…いや、研ぎ澄ました第六感(シックスセンシズ)を使って動きを読もうとしていたのだ。


(…感じるぞ…)


「そこだっ!」


 ブライトの動きを先読みした様に、目の前に斬撃が発動する!


「マジか!?」


 が、硬質化した両手でなんとかブロックするも、ガードしきれなかった肩が斬り裂かれる。


(かすっただけで耐刃ボディースーツを斬り裂くとは!やっぱ急所に直撃したら即死だな!)


 やはり、オリジナルのインビジブル・スラッシュは、現段階のブライトの精度を遥かに上回っている。



 その後も、冴嶋の攻撃がブライトに掠る。次第に、命中率が上がっている。


「調子に乗んな!!」


 ブライトもヒット・アンド・アウェイで着実に冴嶋にダメージを与えていた。



「ハァハァハァ、しつこい野郎だなぁもう!」


「フフフ…こんなに追い詰められてるのに、なんでこんなに楽しいのかな?ねえ、ブライト」


 既にクールキャラが崩壊しているブライトに、冴嶋は心底楽しそうに問い掛ける。一撃でもまともに喰らえば死に直結するブライトの攻撃にさらされているにも関わらずだ。


 正直、ブライトも条件は同じで、冴嶋の攻撃を一度でもまともに喰らえば大ダメージを受ける事は必至。だが、冴嶋と違ってこの戦いを楽しむ余裕など無い。なら、覚悟を決めるしかないと判断する。



「上等だ。次で決めるぞ…」


「え?…そうだね。楽しい時間は永遠には続かないもんね。それに、僕もそろそろ限界だし」


 二人とも能力を多用し、既に体力が限界を迎えていたのだ。



 冴嶋は刀を一旦鞘に戻し、目を瞑って居合いの構えをとる。ブライトもまた、刃と化した両手を構える。



 その場にいる全員が息を飲む。そして…



(スピード・スター、発動!)


 ブライトが動いた!が、冴嶋は動かない!


(カウンター狙いだろ?もう、お前の太刀筋は覚えたよ!)


 幾度となくヒット・アンド・アウェイを繰り返し、ブライトは冴嶋の太刀筋を見切っていた。


(この勝負…俺の勝ちだ!!)



 その時、ブライトの目の前に無数の武器…剣や槍、棍棒等、既に倒された新兵達が持ってた得物が向かって来た。


 ブライトは突進しながら、その得物群を叩き落とす。視線を横に移すと、ギフトを発動させた比呂がいた。


(比ぃ~呂ぉおおおおっ!!)


 ほんの僅か突進の勢いが弱まった。だが、その僅かな差こそが、“誤算”となる。



 尋常ならざる殺気に反応し、冴嶋を見る。既に、居合い斬りのモーションに入っていて…



 !?



 空中に、何かが飛んで行った…。



 交錯した二人。


 冴嶋は俯いたまま。



 そして…ブライトの右腕は、根本から切断されていた…。

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