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第24話 スペシャルミッション

「爺さん、直ったか~?」


「おう、出来とるぞ!」


 メールでの共闘の誘いからもうすぐ2時間。任務に行くにしても装備が無いと身バレするので、シドの元へやって来ていた。



「……なんか、マントがゴツくなってない?」


「ん?全体的にスーツの損傷が激しかったからのう、マントの耐久性を更に上げたんじゃ。このマントで防御すれば、大抵の攻撃は無効化出来るじゃろうて。それに空を飛ぶ際にもより力を加えず飛べる様に、しなやかで頑丈な骨組みをしたからのぅ」


「……んで、今回の修理は幾ら掛かったんだ?」


「おう!マントは自信作じゃったからのう!トータルで7000万円じゃ!」


 元々の借金が1億。前回の任務の報酬が5000万。修理代は当初6000万と聞いていたが、マントの改良等で7000万。


「って、増えてんじゃねーかよ糞ジジイ!!マント元に戻せ!」


「なにおっ!?折角善意で造ってやったのに!!」


 その後、なんとか値切って6500万で手を打った。幸い、先日の利息の話はシド特有のブラックジョークだったみたいだ。




 …と、なんやかんや一悶着あったが、光輝は漆黒の鳥人スタイルでロビーにやって来た。すると…


「もしかして…新入り君?」


 声に振り向くと、そこには金髪セミロングのヘアスタイルが抜群に似合うナイスバデーなお姉さんが立っていた。


「…如何にも。お前がティザーか?」


 何故か口調が偉そうな光輝。事前に、ブライトの時はキャラを変えようと考え、クールキャラを演じる事にしたのだった。それが中二クオリティー。


「そう!宜しくね!えっと…ブライト君で良いかな?」


 頬を赤らめ、上目遣いで光輝を見るティザー。


「…ああ」


(くっ…なんだこのひと、超可愛い!!いやまて!俺には風香が…でも、今はブライトだし…)



「よーし!じゃあ行こうぜー!」


「3つのギフト所持者か…。楽しみだ」


 気が付くと、ティザーの隣に2人の男がいた。


 1人は赤いベストの青年。もう1人は青いベストの青年。



「………え?」


 戸惑う光輝に、ティザーが微笑みながら言った。


「あ、今日は高難易度の特別任務(スペシャルミッション)を受けたいと思ってるの!だから、この4人で行くわよ!」


 そして、今気付いたのだがティザーは黄色いベストを着ていた。


(だ…だまされた!?)


 男2人の誘いは断り、女性の誘いに乗る。非常に恥ずかしいし、男2人に対してかなり気不味い状況が出来上がってしまった様だ。



「それにしてもダメ元で誘って良かったなー!」


「うむ。正直、俺も来てくれるとは思わなかった」


(ん?なんか、様子がおかしい?……そーだ!俺はこのロビーに来て、ティザーさんの方から声を掛けられたんだ!それだけなら、男2人の誘いを断るつもりだった事はバレてないんだ!)


「まー、結局はティザーの誘いに乗ったんだろーけどなー!」


 (…バレてた。いや、まだ挽回出来る!)


「…誤解するな。むしろ、俺はお前ら全員の誘いに乗ってやるつもりだった」


 必死に平静を装い、強がる光輝。ちょっと苦しい言い訳だったのだが…


「おー!やっぱオメーすげーなー!」


「流石は3つ持ち…。スケールが違うな」


「ウフフッ!なんか、ブライト君の戦ってる所見るのが、今から楽しみー!」


(…コイツら、素直か!?)


 強がりが通じた事により、無駄にハードルを上げてしまった光輝は、ドンドンどつぼにハマって行く感覚を味わってた…。




「さて!スペシャルミッションの申請が降りました!今回の任務は、“国防軍ネリマ支部の襲撃”です!」


 4人でロビーのテーブルに座り、今回の任務を聞く。


(国防軍の支部…。確かに、黒夢は反社会的組織だから、当然国防軍とは敵対関係にあるんだろうが、こんなに直接的な任務をやるのか?)


「ネリマ支部には現在、新兵達の訓練が行われていて、付き添いに中尉が2人、少尉が3人居るので、この5人を含め、より多くの兵士の抹消が今回の任務の概要よ。

 …正直、本来なら私達が引き受けられるレベルの任務じゃ無かったんだけど、何故か申請が受理されたのよね。つまり、対象の中尉は戦闘系能力者じゃ無いのかもね」


(抹消……殺すのか?)


 光輝は既に5人、人間を殺している。でも、黒崎は殺らなければ殺られていたからだし、死体処理班の時は自分でも不思議な程、()()()()()()()()だと思ってしまったから。


 …何の罪も無い軍人を殺す。その重さが光輝に重くのし掛かった。


(…俺に、出来るか?)


 国防軍の軍人。ついこの間まで、光輝が最も憧れていた存在だ。その存在を、今から殺しに行くのだ。



「あれ?どうしたの?ブライト君。まさか…」


(あ…怖気づいてるのがバレた?)


「…楽しみで武者震いしちゃってた!?」


(そっちかー!?)


「すげーなーブライトは!」


「うむ。今回の任務は、正直俺でも緊張してると云うのに…」


 何故か本人の意図しない所で評価が上がっていく。


(…まあ良いや。なんにしても、もう行くしかないもんな。殺せるかどうかは、行ってから考えよう)





 ―国防軍ネリマ支部。



 新兵達の訓練を眺めながら、男が溜息をついていた。


「…退屈だなぁ」


 男は軍服のコートを羽織り、グラウンドなのに持ち込んだテーブルと、イスにもたれ掛かり、砂糖たっぷりのコーヒーを口にふくむ。



 そんな男に、同じく軍服のコートを羽織った女性が近付いて来た。


「冴嶋中尉、新兵の前で溜息をつくのは控えなさい。貴方は一応新兵達の臨時教官なのよ?」


「だってさ~。こんだけ新兵がいるのに、僕の相手してくれそうな人が誰もいないんだもん」


「貴方の相手が出来る人なんて、国防軍に10人もいないでしょうが!」


「だよね~。つまんないな~。フェノム狩りにでも行きたいな~」


「貴方の今の任務は、新兵達の教官です!」


 本来、冴嶋はこの場にいる予定ではなかったのだが、元々の教官が体調を崩した為にやむなく駆り出されたのだ。…暇な中尉が他に居なかったからなのだが。


「それは『伊織(いおり)』っちに任せるよ」


「呆れた…。貴方、中尉でしょ!?」


「それは伊織っちも同じでしょ?じゃ、僕は部屋で昼寝してくるから、終わったら呼んでね~」


「ちょっと!?本当に行くの!?………まったく、困った人だわ」


 伊織は長い黒髪をかきあげ、溜息を洩らす。


「普段あんな無気力なのに、いざ戦闘になると人が変わった様に生き生きとする…。強さだけならとっくに将軍に昇格してるだろうに、困った男」





「ハァハァ、伊織中尉!一通り本日の訓練、終わりました!…あれ?冴嶋中尉は?」


 伊織の元に、新兵を代表して一人の少年…真田比呂が訓練終了の報告にやって来た。


「真田二等兵か…。冴嶋中尉は所用の為、不在よ」


「なるほどね。どーせまたサボってるんでしょ?」


「真田二等兵…」


 伊織が比呂を睨む。


「あ!失礼しました!伊織中尉!…へへっ」



 伊織は比呂が苦手だった。苦手と云うより、気にくわなかった。


 国防軍は縦社会であり、階級は絶対だ。なのに、比呂は新兵にも関わらず、階級が上の者にも馴れ馴れしく接してくるのだ。


(…確かに、この男のギフト能力エリア・マスターはギフトランクA+だ。でも、まだまだ熟練度も本人の実力も大した事は無いのに、一部の人間が将来有望なこの男の生意気な態度を容認している。おかげで、本人も特別扱いが当然の様に振る舞ってる…)


「真田…、あまりふざけた口を叩くと…」


「ハイ!了解致しました、伊織中尉!テヘッ」


 …はぁ、と、伊織は今日何度目かの溜息を洩らす。



 …と、その時だった。


 突然、轟音と共に門が開かれた。



「軍人キラーに、俺はなる!!」


 現れたのは、両手を上げて満面の笑みを浮かべる赤いベストを着た男だった…。

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