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第22話 フェノム退治

※戦闘の描写が雑だったので、若干修正しました

※作中、黒崎が元国防軍だった記載がありますが、設定上間違い無いのですが事前に描写し忘れてた様で…第10話にその趣を追記しました。大変申し訳ございませんでしたm(__)m

「やはり俺の眼に狂いは無かったな…」


 無数に転がるフェノムの死体。


 今尚、戦い続ける一人の少年と、無数のフェノム。


 黒夢のボス・桐生辰一郎は、その光景を見ながら、自分の考えが正しかった事を確信していた。



 光輝自身も自分は凄いギフト能力者だと思っている。これは、元来自己評価の低い光輝にとっては珍しい事だ。だが、それでも過小評価と言える。


 黒崎はスピード・スターだけで国防軍でもかなりの実力者だったのだ。

 冴嶋はインビジブル・スラッシュだけで国防軍屈指の実力者なのだ。

 そして桐生はロンズデーライトだけで、魔王と呼ばれる程の存在なのだ。


 これがどれだけ異常で、どれだけ恐ろしい事なのか?


 桐生はそれを確認する為に、今回の荒行を光輝に課したのだ。



 戦い続ける事30分程。当初100体以上いたフェノムは、既に残り20体程まで減っている。


「ハァハァハァ、もう、しんどいんだけど!」


 光輝の身体は無数の返り血を浴び、装備は所々切り裂かれ、穴が空いている箇所もある。


「クソッ…厄介な奴等が残ったな…」


 地上のフェノムは全滅させた。だが、まだ飛行型のフェノムが光輝の様子を伺っている。



 飛行型のフェノムは、ここまで殆んど光輝に対して攻撃を仕掛けて来なかった。それは、ハゲ鷹の習性に似て、獲物が動かなくなるのを待っているかの様だった。


「へっ、残念ながら、俺はまだ死んで無いぜ…」


 絶対的安全圏から様子を伺う、そんな飛行型フェノムに、光輝はムカついていた。



「ちなみに空中(そこ)、安全圏じゃないからな!」


 インビジブル・スラッシュを発動。しかし、距離が遠くなればなるほど、威力も命中率も下がる為、中々に難しい。


 ならばと、空中に向かって大きくジャンプする。スピード・スターの能力と相まって、光輝の垂直跳びは10メートル程の高さまで飛ぶ事が可能。更に、マントを活用する事で飛距離が飛躍した。


 だが、空中で高度を維持する為には自力で羽ばたかなければならず、両腕は使えない。試しに、同じ目線にいる飛行型フェノム・ガーゴイルに向かって、インビジブル・スラッシュを放つが、やはり精度が落ちるので不発。しかもその都度高度が落ちてしまう。


「空を飛びながらの攻撃は今後の課題だな…。じゃあ、一回一回ジャンプするしかないか!」


 目標目掛けてジャンプ。そして、次々とガーゴイルを蹴り落として行く。高度が足りない場合は、一応マントの羽根を羽ばたかせてると単独での飛行も可能な為、落下を見越して充分に高度を上げつつ攻撃していった為、飛行型フェノムにとって安全圏は存在しなかった。


 そして光輝は地に落ちた1体1体の頭を踏み潰し、トドメを刺した。



「さて、残り1体…。最後に厄介な奴が残ったな。」


 危険度レベル6のフェノム・レッサードラゴン。


 言語は通じないが、理性を持つ程度には知能の高い体長5メートルのフェノムだ。


 レッサードラゴンは空中から光輝を見降ろしている。その眼に、驚きや恐れは無い。これ程のフェノムを倒した光輝を相手にも、決して負ける訳が無いと云う自信に充ちていた。



「ふぅ。そっちから来ないなら、少し休ませてもらおうかな。流石に疲れた」


 ここまで、致命的なダメージは受けていない。それでも、一つ一つのダメージの蓄積は馬鹿に出来ない。更には能力を駆使し続けた事による疲労。光輝は既に満身創痍と言えた。


(スピード・スターとインビジブル・スラッシュの使い方はかなりマスターした。やっぱ、一人でする練習と実戦とでは大違いだな。今の俺なら、あの冴嶋にだって多分負けないだろう)



 さて、と、光輝は考える。確かにもう動くのも辛い状況だが、それでもレッサードラゴンには負ける気はしなかった。


(まだ試してないロンズデーライトを使いたい所だな…)



 と、考え事をしていると、レッサードラゴンが猛然と降下して来た。


「馬鹿め!考え事をしたフリして誘ってたんだよ!」


 降下したレッサードラゴンの顔面に、カウンターでパンチを放つ!


 鈍い衝撃が拳に伝わるが、レッサードラゴンは辛うじて腕で光輝の攻撃をガードしていた。


「あれ?」


 一瞬の戸惑いをレッサードラゴンは見逃さない。鋭い爪で顔面を叩かれた光輝は、ヘルメットが吹っ飛び、自身も3メートル程吹っ飛ばされた。



「ぐっ…痛ってぇ。ヘルメットが無きゃ死んでたな」


 ヘルメットで致命傷は免れたものの、目の前がぐわんぐわんする。


 そこへレッサードラゴンの追撃!スピードで勝る光輝は、攻撃をスウェーやダッキングで巧くかわすが、攻撃に転じる事が出来ない。


(コイツ!やっぱ強ええ!伊達にレベル6じゃねーな…)


 攻撃をかわしながら、光輝は考える。


(一発なら喰らっても死なない。なら、試してみるか!)



 レッサードラゴンの鋭い爪が襲い掛かる。それを、光輝は片手でガードした。


 ガキンと云う衝撃音。レッサードラゴンの爪は、ロンズデーライトで硬質化された左腕に阻まれた。


「拳で駄目なら…これでも喰らえ!!」


 そして、ロンズデーライトで硬質化された右の貫手でレッサードラゴンの腹を突き刺す!そしてそのまま、苦しむレッサードラゴンの姿を嘲笑うかの様に、臓物をグリグリと握り潰す。


 手を引き抜くと、最早死を待つばかりであろうレッサードラゴンの首を、至近距離からのインビジブル・スラッシュで切断して、レッサードラゴンにトドメを刺した。



「実験成功!」


 レッサードラゴンは力無く倒れ、完全に絶命した。


(俺にはまだボスの様に全身を硬質化する事も、体外でロンズデーライトを発生させる事も出来ないけど、今みたいな使い方はスピード・スターを併用する事で強力な武器となる!メチャクチャ相性が良いし、かなり使えるな。

 あとは、至近距離なら良いけど、インビジブル・スラッシュの精度を上げないとな…)



 遠巻きから、拍手をしながら桐生がやって来た。


「想像以上だ。まさか本当に全滅させるとはな」


「…はー!くたびれたー!もう勘弁して下さいよ!」


 倒れ込み、大の字で叫ぶ光輝。言葉とは裏腹に、実りのある戦闘を終えた充実感を覚えていた。



「さて、お前は想像以上によくやった。だが、誉めるだけじゃあお前の為にならんから、幾つか反省点を述べよう」


 真剣な桐生の眼差しに、光輝も座り直して正座した。


「スピード・スターによる攻撃は、一発一発の攻撃が相手より遥かに速いから真正面から打ち合いたくなってしまうのは分かる。多少初動が遅れてても攻撃が早く到達するからな。だが、もっと動いて相手の攻撃が絶対に届かない死角から攻撃すれば、その無数の掠り傷は無くせただろう。

 インビジブル・スラッシュは、もっと精度を高めろ。しっかり急所を狙い、一撃で倒せなかった相手からの反撃を減らせ。

 ロンズデーライトに関しては、現段階での使い方としては合格だ。今後はもっと熟練度を上げろ。この能力は日常生活の僅かな時間でも発動させる位じゃ無いと、俺の領域まで熟練度上げるのに100年は掛かるぞ」


「……はい!勉強になりました!」


 光輝の桐生を見る目が、任務前と明らかに変わった。それは、この戦闘で自分自身が間違いなくレベルアップした実感と、告げられた反省点が尽く的を射ていたからだ。



「あとは、ギフトについてもう一つ説明しよう。お前、()()は知ってるか?」


「覚醒…ですか?」


「どうやら知らないみたいだな。まあ、ギフト能力者はある日突然覚醒する事がある。恩恵は様々だが、ギフトに関しては、熟練度が上がっている事を前提としてに、()()()()()()を契機に、()()()()()()()()()()事がある」


 ギフトには上下互換能力が存在する。進化とは、既存のギフトが上位互換能力に進化する事を指す。


「条件は人それぞれだし、発現したギフトに上位互換の能力が無ければ、そのギフトの熟練度が大幅に上がる事もある。

 お前の場合、今の所スピード・スター以外は既に同系統最上位のギフトだから、覚醒した場合はスピード・スターのみ進化して他のギフトは大幅に熟練度が上がるだろう。まあ…覚醒する確率は限り無く低い。だが、現存してるのは3名だが、確認されてないだけで覚醒を経験した者は確実にそれよりは多いだろう。

 さて、今後、俺が任務に同行する事は殆んど無いだろうから、今言った事を忘れるなよ」


「え?そうなんですか?」


「俺はボスだぞ?忙しいし、一人に肩入れし過ぎると他の奴等がうるさいからな」


 残念に思いながらも、ボスだから仕方ないかと割り切る。



「でもまあ!任務完遂って事で、借金が半分に減るんですよね!?」


「そうだな。だが、今回大分無茶な戦闘をしたから、装備の修繕が必要だろう?帰ったらシドの所へ行けよ?」


「イエッサー!ボス!」



 言われた通り、帰還後直ぐにシドの元へ向かった光輝だったが、装備の修繕費に6000万円かかると言われ、涙を流すのだった…。

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