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最終話 新たなる旅立ち

※漆黒のダークヒーローのコミック第一〜三巻発売中です!

 ブライトが冴嶋に連れて来られた場所は、人王が支配する帝国の城。


 その玉座には、ラストバトルの時と同じ姿をしたアンノウンが座っていた。


「久しぶりだな、ブライト」


「……いや、久しぶりに更新されたと思ったら、いきなりおまえが出て来るなんて、急展開過ぎんだろ?」


「それは……多分、週刊漫画などで打ち切りになる際、最終回でいきなり展開が早くなるご都合主義なアレであろう」


「え? 打ち切り? 本編終わった後のおまけなのに?」



「……うるさい! 作者の都合は難しいのだ! それよりも、おまえはこの世界に何をしに来た? まさか、この期に及んであのクソガキ神の頼みを聞いて、俺を止めに来たのではあるまいな!?」


「……そのまさかだよ」


「正気か? 俺もおまえも、あんな奴の為に運命を狂わされたんだぞ?」


「おまえの言いたい事はよ~く分かる。 俺だって、あのクソガキを許すつもりはねえ。 でも、この世界にはあまりにも俺と縁のあった人たちが多すぎる。 ……このままおまえにこの世界を壊される訳にはいかないくらいにな」



「……なら、止めてみるがいい。 言っておくが、おまえがどういう経緯で私よりこの世界に来るのが遅れたのか分からないが、この三年で私は大幅にパワーアップしたぞ?」


「あ~、それなんだけど、一つ提案があるんだ」


「提案だと?」


 ブライトがアンノウンに近寄り、耳元でなにやら話し始める。


「…………ほう、おもしろい。 だが、そんな事が可能なのか?」


「ああ、約束したからな」


「そうか……。 ならば、今回はおまえの案に乗ろう。 私は……人王の座を降りる」


「サンキューな、アンノウン。 やっぱおまえは俺と同じ運命を辿った同志だよ」


(正直、ただでさえ俺とアンノウンには若干の力の差があったのに、この三年寝てただけの俺に対して、アンノウンはパワーアップしてたなんて……戦ったら絶対勝てなかっただろうな)



「じゃあ、早速行くか?」


「ちょっと待ってくれ。 この世界にいる瑠美とカズール……そして、ボスに会ってからでいいか?」


「……それなら心配するな」


 アンノウンが言ったと同時に、玉座の魔のドアが開く。 そこには……



「ここが玉座の間……」


 玉座の間に戸惑う瑠美と……


「おまえが人王か。 世界の秩序を乱す悪党め、この俺が倒してやる」


 アンノウンに敵意を向けるカズールと……


「人王……どれほどの者か、手合わせ願おう」


 アンノウンに闘志を燃やす桐生がいた。



「瑠美! カズール! ……ボスまで!?」


 いきなり登場した三人に、ブライトも驚きを隠せない。


「……誰? ちょっとイケメンだけど……」


「おまえも人王の仲間か? なら、倒すまで!」


「ほう……貴様も中々の実力者と見た。 さあ、戦ろう」


 やはり三人ともアースでの記憶がなく、当然ブライトの事を覚えていない。



「おい、アンノウン、なんで三人がいるんだよ!?」


「おまえに迎えを出した時点で、この三人もそれぞれの方法で招いていたんだ。 もし、ここで敵対すれば会わせるつもりはなかったが、会いたかったんだろう?」


「なんでそんなに話が早いんだよ……つか、ありがたいけど」


「これも作者の都合ってやつだ。 さあ、説明してる時間も勿体ない。 折角だから、この三人も連れて行こう」


「……そうだな。 分かった」


 取り敢えず、この世界……アムスの危機は去った。 あとは神が帰還してくれるのを待つのみなのだが……突然、ブライトの身体が光に包まれた。


「今だ! 皆、騙されたと思って手を繋いでくれ!」


 帰還を悟ったブライトは、アンノウン、瑠美、カズール、桐生に、強引に手を繋がせた。


「な、なんなのよ!?」


「か、身体が……!?」


「ふむ……転移の類いか?」


 ……そして、五人を真っ白な光が包み込むと、玉座の間には誰も居なくなっていた……。




 …………



「おめでとーブライト! 見事、ミッションコンプリートだね……って、ええっ!? なんでこんな大人数で!?」


 真っ白な空間……神の間には、ブライト、アンノウン、瑠美、カズール、桐生の五人が、手を繋いだまま立っていた。



「ここ……あっ!? 思い出した! 私、死んでここに呼ばれて……」


「そうだ……そして、新たな生を受け、異世界に転移されたんだ」


「……なるほど。 ……ブライト、久しぶりだな」


 この神の間に来た事により、瑠美達は記憶を取り戻したのだ。


「皆……久しぶり。 ……今更だけど、ちゃんと報告するよ。 皆のおかげで、世界を救う事が出来た。 本当にありがとう」


 記憶を取り戻した三人との再会に、ブライト……光輝の目からは涙が溢れていた。



 その後……光輝は三人が死んだ後の話を語った。 最期は、自らがラスボスとなって倒されるまでを……。


「そっか……アンタ、最後までカッコつけ過ぎなのよ」


「辛かっただろう……そんな時、傍にいてやらなくてすまなかったな、兄弟」


「……よくやった、ブライト。 だが……まさかアンノウンまで、星の意志の歯車でしかなかったとはな……」


 瑠美とカズールは涙を、だが桐生は全てを察し、仇敵であるアンノウンではなく神を睨みつけた。



「てゆーかさぁ、アンちゃんはともかく、なんでこの三人まで連れて来たんだよう? この三人はもうアムスの住人なんだから、アースに蘇らせる事は出来ないよ?」


 そんな空気など関係なく、神はあっけらかんと答えるが……。


「……俺がなんで皆をこの場所に連れて来たのか、分かってないみたいだな」


 光輝から、漆黒のオーラが溢れ出す。 同じく、アンノウンからも光輝くオーラが。


「なんで私がブライトの説得に大人しく応じたと思う?」


 全てを察した桐生も、ニヤリと笑みを浮かべながら黒紫のオーラを溢れさせた。


「……神殺しか。 面白い」



「……ええっ!? もしかして、僕と戦う為っ!? なんで!? 僕、神だよ!?」


 動揺する神に、三人が躙り寄る。


「テメェにとっちゃ俺達なんて単なる育成ゲームのキャラみたいなもんなんだろうけどなぁ……皆自分の意志を持ってんだよ!」


「まさか、私が信じた星の意志がこんなガキだったと知った時の、私の気持ちが分かるか? 分からないだろうな」


「多くの人々の運命を狂わした神……殺すには充分だな」


 完全に臨戦態勢の三人に、瑠美とカズールも同調する。


「なんか……コイツが諸悪の根源みたいね。 私、まだ一度も恋愛した事すらなかったんだからね!」


「なるほど、全てはこの子供……神の気紛れだったという訳か。 ……ちょっとオイタが過ぎた様だな」



 五人に躙り寄られる神だったが、それでも余裕の笑みを浮かべた。


「フフフ……僕は神だよ? 全知全能なる、神! 君たちなんて、束になっても敵うもんか! 神に背いた罰、思い知らせてやるよっ!」


 こうして、人と神との聖戦が幕を落としたのだった。







「……ごべんなざい」


 無傷の五人の前に、ボロボロになった姿で土下座する神。


「……ちょっと、弱過ぎんだろ?」


「私はこんな奴に……」


「これが神か……興醒めだな」


「なんか、途中からちょっと可哀想になっちゃった」


「その実力で、よくあんな大口が叩けたもんだな」


 五人にとって、神との聖戦はあまりにも拍子抜けな結果となってしまった。



「だって、僕は戦闘系じゃないし! 星を創って、見守って、退屈になったらテコ入れするくらいしか出来ないんだもん!」


 神は……不死身ではあるが、戦闘力が皆無に近かったのだ。



「……じゃあ、俺達全員、アースに還せよ。 じゃなきゃ……」


 光輝が指をポキポキと鳴らして神を脅す。


「えーっ! 無理だよう……そんな事したら、僕が神王に消されちゃ……」


「還してやれ」


 神がごねようとしたその時、どこからか声が響いた。


「えっ!? 神王様っ!?」


 どうやら声の主は神達の王・神王の様だ。


「貴様の不手際が原因で、この者達の運命を大きく狂わせたのじゃろう? 日頃から言ってる様に、その星に生きとし生ける者全てに敬意を払えという、我の言葉を忘れていたようじゃな」


「だって……そんな何億年も前の話、覚えてな……」


「だから貴様は神失格なんじゃ! 今より、貴様を地獄へ送る。 そこで一億年は反省して来るんじゃな」


「そ、そんな……いやだああああっ……」


 神は、突然出現した黒い渦に吸い込まれる様に、地獄へと落とされてしまった……。



 いきなりの展開に呆然とする五人。 すると神王が……。


「……さて、その方らには我の部下が迷惑をかけたな。 希望とあらば、特別に全員を元の世界・アースに帰らせよう。 ただ、その場合は記憶の一部を消さねばならんが……どうする?」


 神王の提案は、光輝としても最も望むものだったが、記憶を失うという事に戸惑った。



 そんな中、まずは瑠美が……。


「あ、私はアムスに戻してちょうだい。 確かに、風香やアースでの仲間達にもう一度会いたい気持ちはあるけど、もう三年もアムスで過ごしてるからさ、アムスにも大切な仲間が出来ちゃったんだよね」


 その言葉に嘘はなかったが、アースに戻っても光輝と風香の幸せそうな姿を見せつけられるのに抵抗があったのも事実だった。



 そしてカズールも……。


「すまない、兄弟。 実は、俺はアムスで結婚して子供もいるんだ……」


 カズールが結婚して、しかも子供までいるという事実に、光輝は驚いてしまった。



 桐生も、苦笑いを浮かべて光輝の肩に手を置いた。


「アースはもう、新たな世代の力で平穏を勝ち取ったのだろう? ならば、俺の存在は邪魔でしかない。 それに、アムスの方が退屈しなさそうなんでな」


 確かに、アースはもう崇彦や比呂の世代が世界を牽引しているだろう。 ……まあ、桐生としてはアムスの方が強者が多くて楽しいのだろう。



 最後にアンノウンは……。


「……私は、もうなんの目的もない。 アムスを私怨で混沌に陥れてしまったし、神王様さえ良ければ、私をこのまま消して下さい」


 生きる希望を失ったアンノウンは、全てに絶望してしまったのかもしれない。 だが、神王からとんでもない提案が飛び出した。


「そうじゃ、御主、あのガキの代わりにアースとアムスの神にならんか? あのガキより一億倍はマシな神になれそうじゃし」


「私が……神? いや、私などで務まるのですか?」


「御主は今まであのガキの言いなりになりながらも、常に星の行く末を案じていた。 ブライト同様、その身を犠牲にしてアースを守ってくれたしのう。 そんな御主なら、立派な神になれるハズじゃ」


「……ありがとう……ございます……」


 涙を流すアンノウン。 アースでは人間に忌み嫌われ、アムスでも暴君として生きて来たが、漸く、彼は認められたのだ。



「アンノウン……良かったな。 これからは神として、ちゃんと世界を導いてくれよ」


「ああ、ありがとう、ブライト」


 握手を交わす二人。


 そして、光輝はそれぞれに声を掛ける。


「瑠美……本当にありがとう。 おまえがいてくれて、俺がどれだけ助かったか……アムスでも、元気でな」


「もちろん! 光輝なんかよりずーっとイイ男捕まえるんだから! ……じゃあ、風香にも宜しく伝えといてね」



「カズール……アンタにも本当に助けられた。 それにしても、奥さんと子供の顔見たかったなぁ」


「俺も兄弟に見て欲しかった。 だが、俺には遠く離れた場所におまえという兄弟がいる事を、妻と子供に伝えよう」



「ボス……俺……」


「何も言うな。 全ては運命だ。 ……ま、最後に本気のおまえと全力で戦いたかったがな」


「フフッ、勘弁して下さいよ」



 こうして、瑠美、カズール、桐生は、一足先ににアムスへ帰って行った……。



「……神王様。 記憶の件なんですが……」


「すまんな、ブライト。 こればっかりは、世界間の理があるからどうしようもないんじゃ。 じゃが、記憶はうしなっても、御主が歩んで来た道が無くなった訳ではない。 何かの拍子に記憶を取り戻してしまう可能性はあるが……その時は、神や異世界の事は人に話してはいかんぞ」


 記憶を失うのは辛いが、光輝は強い縁があれば、必ずアースの仲間達と再会出来ると信じている。 アムスで、次々とかつての知り合いと再会出来た様に。



「じゃあ……俺ももうアースに帰るよ。 じゃあな、アンノウン」


「ああ。 これからは神として、おまえの行く末を見守らせてもらうぞ」



 光輝の身体を光が包み込む。



 死ぬ訳でも無いのに、これまでの事が走馬灯の様に頭の中を駆け巡った。


(風香……待ってろよ。 必ず、会いに行くから……)



 こうして、ブライトの異世界の冒険は終わりを告げたのだった……。

※コミック第一〜三巻が発売されています。是非お買い求め頂ければ、超嬉しい次第です!



さて、突然でしたが、これにて異世界編は終了となります。 何故って? 書いてたら、本格的に別作品として連載開始しようかなと思ったからです。 まあ、どうなるかはわかりませんが、宜しければ気長に待って頂ければと思います。


※追記


活動報告でも伝えさせて頂きましたが、コミックス第三巻……最終巻が発売されてます。

巻末SSでは、最終話から一年後の光輝や風香、比呂などのその後が描かれてますので、是非読んでみてくださいね!


※追記


久しぶりの新連載を開始しました。


『死神のリグレット』 N4635KR


是非読んで下さると光栄です!

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― 新着の感想 ―
[一言] 久しぶりの更新とおもったら最終話!? どうせならあと2か月まってエイプリルフールならよかったw
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