第8話 転生と転移
※漫画版が本日より『COMICブースト』様にて連載開始しました! 是非ご一読して頂ければ……ついでに続きも呼んで頂ければ幸いです!
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「ブ……ブライト!?」
ネイチャー・ホワイトこと、篠田マリーンは、ハッキリとブライトの名を叫んだ。
突然のマリーンの登場に驚いたブライトだったが、何故マリーンが自分の名前を知っていたのかに疑問を抱く。
「あ……えっと、なんで俺の名を?」
「なんで? なんでも糞もあるかい! アンタが私を殺……わっぷ!?」
慌ててマリーンの口を塞ぐ。
(なんだ!? まさか、マリーンには記憶が残ってるのか!?)
すると、マリーンの取り巻きであろうイケメンたちがブライトに向かって激昂した。
「貴様っ、マリーンさんに何をする!?」
「その手を離せ、野蛮人! マリーンさんは貴様の様な下賎の者が触れていい御方では無い!」
「僕もまだ触れた事の無いマリーン様の唇に……殺すっ!」
(ヤバイっ、メンズを怒らせちゃった!? でも……)
焦るブライトだったが、何故か口を塞がれているマリーンが、目で落ち着けと合図をする。
(……離せって事だよな? でも、神とのルールが……でも待てよ? 記憶を失っている者に真実を告げたらリセットするかもって言ってたよな? でも、最初から記憶を失ってない人物になら?)
ブライトが、ゆっくりと手を離す。 なんにしても、まずは本当にマリーンに記憶があるのかを確かめなければならないから。
「……ごめんね、皆。 彼とはちょっとした知り合いなの。 だから、怒らないで・ね」
マリーンがメンズにパチッとウインクすると、メンズの三人は全員胸を雷に撃たれたかの様な恍惚な表情を浮かべた。
(……なんだこれ?)
「マリーンちゃん、ブライトさんとお知り合いなの?」
グリーンがマリーンに問い掛ける。 ブライト的には、この世界でも同じネイチャー・ストレンジャーだった二人が知り合ってた事に驚いていた。
マリーンはジッとグリーンを見つめる。 そして……
「ええ、そうなの。 ブライトとは旧友でね、悪いんだけど、ちょっとだけ彼、借りていいかしら?」
「え? あ……うん、旧友なら仕方ないもんね」
渋々といった感じで、グリーンはマリーンの提案を受け入れた。
「ありがと。 じゃあブライト、あっちの席でちょっとお話しましょう。 ああ、皆は彼女の相手をしててくれないかしら? 彼女、Aランクのハンターで、私の友達なの」
マリーンは流れる様に言葉を紡ぎ、場を収めた後にブライトを個室へと連れて行った。
個室に入ると、マリーンはブライトをソファーに座るように促す。
「……ふぅ、で、何から聞かせてもらおうかしら?」
煙草に火を点けながら、マリーンはブライトに問い掛けた。
「聞きたいのはこっちの方だ。 もしかしてアンタ、記憶が残ってるのか?」
「……そういうおまえも記憶が残ってるみたいね。 奈津子も、そして美雪さんも、前の世界の記憶を失ってたから、私だけなのかと思ってたけど」
ブライトは、神の言葉を思い出す。 そして、とある法則に気付いた。
「そうだ、前の世界で死んだ転生者は記憶を失ってるけど、俺は死ぬ前に神に助けられ、アンノウンも新たな肉体を作ってもらってからこの世界に転移させたって言ってたし、俺たちは転生じゃなく転移者だから記憶が残ってるのかもしれない。 もしかして、マリーンも……」
「なるほどね。 私は肉体的に死んでから、暫くの間おまえの中にいたでしょう? だから、神様が私をこの世界に転移させてくれる時に、肉体を新たに再生してもらったの。 だから、ある意味転生じゃなくて、私もアンノウンと同じ転移と言えるかもね……って、アンノウン!? アンノウンって、あのフェノムの総大将でしょう!?」
マリーンには、ブライトの中から消滅してから起こった出来事の知識は無い。 第二次アルマゲドンの事も、アンノウンの事も、ブライトの最期の事も……。
それらの出来事を、ブライトはマリーンに語った。 そして、元々記憶を失ってなかったならルール違反ではないと判断し、神とのやり取りの結果、何故自分がこの世界にやって来たのかを……。
全てを聞いたマリーンは、時に俯きながら、涙を堪えている様だった。
「そっか……おまえらしいね。 最期まで、本当によく頑張ったね」
「いや、俺には他に選択肢は無かったしな。 それに……これは初めて口にするけど、俺のギフトのリバイブ・ハンターは、マリーンも含め多くの人の命の犠牲の上に成り立ってる能力だから。 仲間の事もあったけど、最期は……俺だけ生きてるのは理不尽だろって、ましてや英雄になるなんてって思う自分もいたんだ。 だから、最後に命を懸けて、それで悪人だと思われても、それがリバイブ・ハンターが発現した時からの、俺の運命だったと思うんだ」
「馬鹿だね、おまえは。 本当に、変な所で馬鹿だよ。 私たちは皆、おまえの敵として敗れ、命を落としたんだ。 おまえが気に病む必要なんてないんだよ?」
「いや、俺はただ皆を殺したんじゃない。 その上で、皆のギフトも頂いたんだ。 だからこの世界では、俺にギフトを奪われた人たちは絶対に殺さないって決めてるし、出来るなら力になってあげたいって思ってるんだ。 記憶の無い皆には余計なお世話だろうし、独りよがりなだけなんだろうけど」
ブライトは自分でも不思議なくらい、マリーンに本音を打ち明けていた。 それは、長い間自分の精神世界で時間を共にしたからなのかもしれない。
転生と転移の違いと条件。 それを聞いたマリーンは、深く溜息を吐いた。
「なるほど……じゃあ、レッドやイエローはこの世界に転生はしてないんだね。 それはちょっと残念だけど、私もこっちの世界で自由を謳歌させてもらってるから、これ以上は望みすぎちゃ駄目ね」
「そういえばあのメンズ……マリーンはこの世界で何をしてるんだよ?」
「私には……これがあるでしょ?」
言いながら、マリーンは手から白き炎を発生させる。
「セル・フレイムを使って、多くの人を治療してるの。 今では私は、治癒の女神として崇められてるんだから」
「なるほど。 確かにその力があれば重宝されるよな。 でも、さっきのメンズは完全にマリーンに心まで奪われてたみたいだけど?」
「馬鹿だね。 私が恋愛の神だって忘れたのかい? 私が今まで落とせなった男なんて、二人しかいないんだから」
「あ、その一人ってネイチャー・レッドだろ? そういやグリーンって、レッドと恋仲だったんだっけ?」
「……それなんだけど、今思えば……レッドの片思いだったのかもしれない。 ネイチャー・ストレンジャーの頃はあくまで国防軍の軍人だったから、対外的に己を律する必要があったの。 だから奈津子も私たちネイチャー・ストレンジャーのメンバー以外には、そんなに素の表情を見せてなかったわ。 でも、この世界での彼女を見てると、あの二人が付き合ってる様に見えたのは、レッドは奈津子に恋してたけど、奈津子はただ距離感が近かったから、周りが勘違いしてただけなのかもって思うのよね……」
ネイチャー・ストレンジャーのメンバー。 ブルーはナルシストで、イエローはホワイトであるマリーンに惚れていた。 となれば、男性メンバーでグリーンの距離感に勘違いしたのがレッドだけであり、周りの想いが複雑に絡み合った結果、レッドとグリーンが付き合ってると思われた原因だったのかもしれない。
(戦隊ヒーローなのに恋愛要素って……リアル鳥人戦隊じゃねーか)
「……分かる。 グリーンって、距離感おかしいんだよ。 あれ、真っ当な男なら絶対勘違いするぞ」
「まさか、おまえ……勘違いしてないだろうね?」
「え!? いや、俺は風香一筋だし! うん、プ、プロポーズだってしたし!」
「怪しいねえ……。 でも、プロポーズしてあげたのかい? それを聞いて安心したよ。 風香は私にとっても可愛い後輩だったからね」
「も、もちろんだって。 ……で、落とせなかったもう一人って?」
ブライトが動揺を隠す様に話題を変える。 その問いに、マリーンは……
「フッ……馬鹿でガキでカッコつけな奴だけど、どこか憎めない……そんな奴だよ」
「ふ~ん。 でも、マリーンは良い奴だから、いつかソイツを落とせるといいな……って、ゴメン、異世界じゃ無理だよな」
そう言って呑気に笑みを浮かべたブライトを、マリーンはやれやれと言った気持ちで見つめるしかなかった。
(まったく……相変わらず鈍感な男だね。 ま、惚れた方の負けって事で、諦めるしかないんだろうけどね……)
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