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第5話 ギルドマスターとの邂逅

 普段は活気溢れるハンターズギルドの一階フロアは、奇妙な程に静まり返っていた。


 その原因を作ったブライトは、フロア中央の椅子に座り、登録の手続きが済むのを待っていた。


(……変に侮られて絡まれるのが嫌だったから、ああいう行動をとったけど、ちょっとやり過ぎたかな?)



 誰もが遠巻きからブライトを見ている。 すると、受付の奥から、先程の受付嬢が凛とした美しい女性を連れて、ブライトの下へやって来た。


「君が、ブライト君ね。 私はこのハンターズギルド・スタンドプラウド支部のマスター、ミユキよ」


「……ブライトです。 よろしく」


(ミユキ……。 この人、もしかして?)


 ハンターズギルド・スタンドプラウド支部のマスター・ミユキは、長い黒髪が特徴の美女だった。 そんなミユキにブライトは、国防軍中尉の伊織を連想していた。


 伊織美雪は国防軍の中尉で、サイレント・ステルスの能力者だった。

 ブライトは冴嶋との戦闘後、隙きを突かれて伊織に殺された。 結果的にブライトもまた、伊織の隙きを突いて殺したのだったが……。



「それにしても、君の申請書を見させてもらったけど……凄いわね。 こんなにも多くのスキルを持ってるなんて。 君なら、飛び級でランクを上げても良いかなと思ってるんだけど……一つ、テストを受けてくれない?」


「テスト?」


「ええ。 貴方がそのテストを無事にクリア出来れば……特例としてBランクの称号を与えたいと思ってるんだけど」


 ハンターにはランクがあり、上はSから下はEまで。 詳細は他の作品でもよく説明されてるので割愛して、新人は普通Eランクからスタートなのだが……。


(……まあ、くれるって言うなら貰っとくか。 拒否しても揉めるだけだろうし、それに……もしこの人があの伊織中尉なら、申し訳なさが勝ってるからな)


 伊織を殺した時ブライトは、後悔の念を抱いたのを今でも覚えていた。 自分の憧れていた理想の軍人像を、伊織に感じていたから。


 そんな伊織の申し出を断るのは気が引けたし、前の世界では衝動のまま殺してしまったから、今回は力になれるなら力になりたいという感情が芽生えていた。


「良いですよ。 じゃあ、どんなテストなんですか?」


「君が話しの分かる人で助かるよ。 それじゃあ着いて来てくれ」



 伊織に連れられて来たのは、ハンターズギルドの地下一階、普段はハンター同士の訓練場として使われている場所だった。


「さて、先ほどは受付のマイに幾つかスキルを披露してくれたらしいね。 それも、どれも凄いものだったらしいじゃないか。 それじゃあ今度は……君のギフトを見せてくれないか?」


 スキルではなくギフトを見せろと言う伊織。 だが、リバイブ・ハンターは見せたくて見せられる能力ではない。 神は弊害は取り除いたと言っていたが、それはこれまでの事であり、これからの事は該当していない可能性だってあるのだから。


「すみませんが、俺のギフトはデモンストレーションで披露出来るものではないので。 スキルで良ければ幾らでも見せますよ?」


「そうか……残念だが、無理強いはしないわ。 なら、私と戦いましょう。 その中で、貴方のスキルを見せてくれる?」


 戦えと言われれば戦うが、今のブライトにとって伊織相手では正直スキルを複数使うまでもない。 それに、ただでさえ罪悪感を持っている伊織と戦うのは気が乗らなかったのだが……。



「……どうやら、私では役不足だと言いたいみたいだね。 いいわ、マイ、直ぐにナツを呼んで」


「え? ナツ様をですか? ……分かりました」


 受付のマイが、一階へと戻る。


「ごめんなさいね、ブライト君。 ナツはこのギルドで三本の指に入る実力者で、Aランクのハンターなの。 ちょうど昨日任務を終えて帰ってきてるから、貴方の相手をしてもらうわ」


「そうですか……。 ところで、ギルドマスターのランクは教えてくれないんですか?」


 ブライトは伊織の実力は大体知っている。 ギフトの性能上、隠密や暗殺の能力は高いだろうが、まともに戦っても冴嶋には絶対に勝てないだろうと。

 その伊織のランクを知れば、ナツというAランクハンターの実力も計れると考えたのだ。


「そうね……ハンターを辞めてギルドマスターに抜擢されてからもう二年になるけど、現役の頃の最終的なランクはBだったわ」


(伊織中尉でBか……。 悪いけど、それだとAでも相手にならないな……)


 ガッカリしたというより、テスト自体が簡単過ぎて拍子抜けしたという感情が表情に現れたのを、伊織は見逃さなかった。


「……なるほどね。 相当な自信があるみたいね、ブライト君。 私程度……いえ、その分だとAランクハンターすら、自分の敵じゃないと思ってるんでしょう?」


 全て事実だが、認めてしまえば伊織のプライドを傷つけるかもしれないと考えたブライトは、言葉を濁す。


「そんな事ないですよ? ……そう、ギルドマスターの能力を考えれば、直接戦闘よりも偵察とかサポートの方が向いてたんでしょうし、ギフトのランクには反映され辛いでしょうから……」


「……ちょっと待って。 貴方……もしかして、私のギフトを知ってるの?」


 伊織の表情が変わる。 温和で頼り甲斐のある姉御肌の美女から、眼光鋭く相手の心の内を探る警戒心の強い武人へと。


(しまった!? ついうっかり……)



「スミマセン、遅くなりました!」


 その時、受付マイと共に、緑髪が印象的な可愛らしい女性が訓練場へとやって来た。


「来たわね、ナツ。 早速で悪いけど、このブライト君と模擬戦するわよ」


 伊織は今、Aランクハンターのナツに、模擬戦して……ではなく、するわよと言った。


「えっと……もしかして、ミユキさんも戦うんですか?」


「ええ、二人がかりで戦るわよ。 というわけだからブライト君、貴方にとって私たちなど取るに足らないんでしょ? ……本気でいくわよ」


 伊織は、自分のギフトを知ってる素振りを見せたブライトに対して警戒心を強くした。

 そして、二人でブライトを倒し、ゆっくりと話を聞こうと考えたのだ。



「私とミユキさんが二人がかりって……いくらスーパールーキーとはいえ、無茶が過ぎませんか?」


 だがAランクハンターであるナツは、新人相手に二人がかりなど卑怯だと躊躇する。 自分と、伊織の実力を知ってるからだろうが……。


「ナツ、彼の事はSランクハンターだと思いなさい。 じゃないと、あっという間にやられるかもしれないわよ?」


「そ、そんなにですか? ……分かりました。 じゃあ、自己紹介もまだだけど、早速始めましょう」


 ブライトは自分のミスから話が飛躍してしまったのを、黙って見てるしかなかった。


(怒らせちゃったなぁ……でもまあ、なるようにしかならないし、怪我させない程度な相手するしかないか)

リバイブ・ハンター犠牲者の会


③伊織美雪

享年/29歳 性別/♀

身長・体重/165㎝・--㎏

ギフト/サイレント・ステルス(A)

国防軍の中でも、そのギフト能力から、隠密・潜入・暗殺の任務を数多くこなしていた。使命感が強く、国の為、国民の平和の為に努力する素晴らしい軍人だったが、光輝=ブライトを殺した事で、逆に殺されてしまったクールビューティーなお姉さん。

登場/21~29話


※新作として、【レジェンド・オブ・ブレイブ~伝説の勇者が未来に行ったら、インフレが酷すぎて死にそうです~】を投稿しました。

https://ncode.syosetu.com/n3202hj/


こちらは短編ですので、気軽に読んで頂ければと思います。

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