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第4話 ハンターズギルド

 フローラたちと別れたのは良いが、ブライトはそもそも此処がアムスの何処かも分からないのだ。


(フローラが徒歩で城に招こうとしたくらいだから、おそらく魔族の領地だったんだろうが……この世界の地理がサッパリ分からないんだよな)


 そんな時はと、ギフトで空高く舞い上がり、上空から地上を見下ろし、集落を探す。


 神の話では、この世界の文明レベルは中世ヨーロッパレベル……つまり、ブライトも昔見た事のあるラノベでいうハイファンタジーの世界観らしい。

 前の世界の様な近代化した建物はほとんど無い為、高い所から集落を探すにしても苦労する。



 取り敢えず上空を移動しながら集落を探していると、目の前に飛行型のフェノムがいて、ブライトを見つけると襲い掛かって来た。


(あれはたしか、レッサードラゴン。 懐かしいな、ボスの鬼特訓を思い出す……)


 レッサードラゴンにとって、ブライトなど格好の捕食対象でしかなかった。 大口を開き、一気に嚙み砕こうとした瞬間……突然左右の視界がズレた。


「……特訓の時は苦労したけど、今となっちゃ楽勝だな」


 レッサードラゴンは、綺麗に真っ二つに斬って落とされたのだった。



 その後も数体のフェノムを駆逐しながら数時間が経過した頃、遠くに外壁に囲まれた街を発見した。


(……おっ? あれ、そこそこ大きな街っぽいな? 早速移動しよう)


 近くまで来ると、それは外壁に覆われた立派な街だった。 出入り口は一つしかなく巨大な門の前には門番が立っていた。


(……面倒だから空から一気に街に入るけどね)



 サイレント・ステルスで姿を隠しながら飛行し、街に侵入。 そして、そのまま街をザッと見周った後、人気の無い貧困街らしき場所に降り立った。


 見周った結果、街の様子は確かにラノベや映画でよく見たファンタジー世界の作りだった。 表通りは多くの人で賑わっている。 そして、見た所此処は人族……人間の領地の様だ。


 フローラを助けた場所が魔族の領地だと断定できる訳では無いが、別れてからそこそこの距離を飛行していたので、魔族領から人族領まで移動していたのかもしれない。



 取り敢えず情報を集める事にした。 なにせ、ブライトはとってこの世界・アムスの事はサッパリなのだ……と、考えていると、貧民街に相応しいガラの悪い男たちがブライトを囲んだ。


「よう兄ちゃん、死にたくなかったら身ぐるみはわばっ!?」


(さて、取り敢えず情報収集しながら歩いてみるか。 ラノベのファンタジー世界といえば、最初に行く場所は……)


 男たちを有無も言わさず瞬殺し、スラムテンプレを消化させたブライトは、目的地に向かって歩き始めた。



 歩きながら人の話に聞き耳をたてたり、看板を見ながら情報を集める。


 どうやら此処は人族の領地で、人口約一〇〇万人の大都市・スタンドプラウド。 魔族の領地と最も近い場所に存在する事から交易の面で重要な都市だったが、近年は人王の方針で、対魔族として軍事面の要所に変貌しつつあるらしい。



 そして、ブライトが最初に向かったのは……


(……ホントにあったよ。 もしかしてあのクソガキって、ラノベのハイファンタジーを基にこの世界を創ったんじゃねえだろうな?)


 やって来たのは、ハンターズギルド。 ラノベ作品の鉄板であり、冒険者ギルドと表記される事もある、主人公が最初に訪れる機会の多いポイントである。



 いつの間にか入手した情報では、アムスのハンターズギルドは各種族の領土に存在しており、人族であろうが魔族であろうが獣人族であろうが種族関係なく運営されている世界的協会だったのだが、近年は人族が他種族への侵攻を始めた事で、難しい立ち位置となっていた。


 これまでは組織に登録したハンターであれば他の種族のギルドも自由に使えたのだが、人族のギルドは人族以外の種族の立ち入りを禁止してしまった。 ハンターズ協会の上層部はこれを不服とし、決定を下した人王に異議を申し立てているのだが、改善される見通しは無いらしい。


 だが、今のブライトにとってそんな事はどうでもいいのだ。


 ハンターズギルドに登録する目的は、まず登録して身分証明を作る事。 そして、ハンターとして依頼をこなし、文無しで食うも食えない状況を打破する事。 更には、ハンターとして活動する事で瑠美やカズールを探す事と、アンノウンに自分の存在を知らせる事だから。



(入ったら絡まれるのかなあ……。 あのクソガキの創った世界だから、絶対絡まれるよなあ……面倒だな)


 そう思いつつ、ハンターズギルドに入る。 建物は立派な石造りで五階建て。 一階は受付、ハンターたちが待機できる待ち受け場、依頼が張り出されている掲示板スポット。 更には併設されている酒場へも繋がっている。


 屈強な男たちに、女性の姿も見られる。 皆一様に、新顔であるブライトに注目していた。


(視線が煩わしいな。 ま、絡んでこなけりゃ無視するけど。 さて、今の所俺はこの世界で身分も無い存在だ。 テンプレに従うのは釈然としないが、ギルドに登録する事で身分証明にもなるだろうし、登録しとくか)



 受付には五人の女性がいたが、四人は既に他のハンターで埋まっているので、残った受付の前に立つ。


「はじめまして……ですよね? 本日はどういったご用件でしょうか?」


 受付の女性は、眼鏡の似合う可愛らしい女性だった。


「登録をお願いします」


「ありがとうございます。 それではこちらの登録申請書に個人情報をご記入下さい」


 端的で事務的な説明を受け、登録申請書を貰う。 今更だが、ブライトはこの世界の文字も言葉も理解できていた。 これは、神による補助でもあった。



(さて……名前はブライトでいいや。 年齢、二〇歳……いや、三年眠ってたから、二三歳か。 性別、男。 ギフト……ギフトか。 これはリバイブ・ハンターって書いとくか。 スキル……? ギフトとは違うのか? まあ、前の世界の特技みたいなもんか。 戦闘・隠密・偵察・暗殺・透明・硬化・拘束・飛行・風系能力・飛斬・治療・光線・支配能力……こんなもんでいいや)


 必要事項を全て記入し、受付に提出する。


「ありがとうございます。 それでは…………あの、冷やかしなら帰って頂いて結構ですが?」


 ブライトから受け取った登録申請書を見て、受付嬢の可愛い顔が歪んだ。


「ふざけてないですよ? 全て事実です」


「……リバイブ・ハンターなんてギフトは聞いた事がありませんし、なんですかこのスキルの数と統一性の無さは? これが本当なら、ハンターではなく国の要職をオススメします。 本当ならね?」


 受付嬢は、ブライトのギフトとスキルが偽りだと判断したのだ。 この世界でも、やはりブライトの能力は破格にして異常なのだろう。


 だが、これにはブライトの思惑があった。 別に自分の存在を隠す理由は無い。 むしろ、リバイブ・ハンターの単語に、アンノウンは勿論カズールも反応するかもしれないと、敢えて自分が何者なのかを公表したのだ。



「じゃあ、一つだけ。 俺をよく見て下さい」


「は? 何を……えっ!? 消えた!?」


 ブライトは受付嬢の視線を自分に注目させた瞬間、サイレント・ステルスを発動したのだ。


「これが透明です。 他にも見ますか?」


「えっ!? 現れた!?」


 突然姿を消し、そして現れたブライトに、またも受付嬢は驚きの声を上げた。



 受付周辺にいたハンターたちも、同様に驚いている。 そして、それはフロア内にも伝播し、何事かとハンターたちが集まってきた。


「よう、兄ちゃん。 ここは神聖なるハンターズギルドだ。 騒ぎを起こしてもらっちゃあ困るなぁ?」


 見るからに粗野なハンターが、酒臭い息を吹き掛けながらブライトの肩に手を掛ける。


「……そうだ、じゃあこれもお見せしましょう」


 すると、ブライトは笑顔で右腕を上げると、ロンズデーライトで拳を硬化する。


「おい、無視してんじゃねーよ。 ぶっ殺すぞクソガキ」


「ぶっ殺す? なら、これから俺がやる行為は正当防衛だな」


「なんだとぶあっ!?」


 ブライトの裏拳が酔っ払いの顔面に炸裂する。


「今のが硬化。 そしてこれが……」


「や、やめひえっ……ぶひゃあ!?」


 蹲る酔っ払いの顔面を掴むと、白い炎が包み込む。 すると、あっという間に裏拳でひん曲がった酔っ払いの鼻が元通りになっていた。


「これが治療。 もっと見たければ、全てお見せしますよ?」


 ニッコリと微笑みながら、ブライトが受付嬢を見つめる。


「あ……あの……け、結構です!」



 後に受付嬢は語った。 その時のブライトの微笑みは、まるで、天使のような悪魔の笑顔だったと……。

※新作として、【レジェンド・オブ・ブレイブ~伝説の勇者が未来に行ったら、インフレが酷すぎて死にそうです~】を投稿しました。

https://ncode.syosetu.com/n3202hj/


こちらは短編ですので、気軽に読んで頂ければと思います。

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