表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

189/200

第1話 戦闘狂との再会

 …………突然、ブライトの視界が開けた。


 空を見上げる……。 もう、二度と拝む事は無いだろうと思っていた空を……。


 空はどこまでも青く、雲ひとつ無い晴天だった……。



「……って、ここどこよ?」


 目の前に広がるのは、果てしなき草原。



 取り敢えず自分の身体を調べてみる。 ……アンノウン、そしてラスボスとしての戦闘時に受けた傷は無い。 神は、リバイブ・ハンターの弊害もリセットすると言っていた。 つまりブライトは今後、意思を失った殺戮マシーンになる事は無いだろう。


「にしても……まんま地球だな」


 見渡せばそこは、アースでも見られただだっ広い草原だった。 星の造りとして基本的な部分では、アースもアルスも変わらないのかもしれない。


 ここでジッとしてても仕方ないので、ブライトは取り敢えず歩き出す。 こんな事なら、もう少し神からアルスの情報を聞いとけば良かったと後悔しながら。




 ――歩く事一時間。 ブライトは林道を歩いていた。 すると、どこからか金属がぶつかり合う音が聞こえる。 


(……戦闘音か?)


 サイレント・ステルスで身を隠し、音のする方に近付く。 すると、壊れた馬車と数人の死体、その周りで、二人の男が戦っていた。



「チッ……ウゼエ剣捌きだ!」


「君こそ、とんでもないスピードだね」


 黒服の男が異常なスピードで動き回り、何度か白服に飛び掛かるが、白服はその都度刀で防いでいた。


「君、中々やるねぇ。 でも、もう終わりにしよう」


「ハッ! 俺を捉えられる訳……なんだっ!?」


 大きく間合いを取っていたハズの黒服を、突然の斬撃が襲った。



「バ、バカなっ!? 斬撃が……飛んだ?」


 黒服は訳も分からぬまま、地に伏した。


 斬撃が飛んだ……。 いや、飛んだのでは無く、黒服の位置に斬撃が出現したのだ。



 ブライトは、その攻撃をよく知っていた。


(インビジブル・スラッシュ……。 って事は、あの白服……)


「ふう、少しは楽しませてもらったよ。 ねえ、魔族には君より強い奴はいるのかなぁ?」


 そして、白服の男が倒れて苦しんでいる黒服の男の顔を覗き込んでいる。


 倒した白服と倒された黒服。 ブライトはその二人をよ~く見る。 すると……


(……やっぱり。 あの白服は冴嶋だ! で、もしかして黒服は黒崎?)



 黒崎はスピード・スターのギフト能力者で、光輝を最初に殺し、リバイブ・ハンターを発現させた張本人だ。 思えばあの時、光輝はギフトに目覚めたばかりで、発動するのもままならない状態だった。

 黒崎はそんな光輝を見くびり、完全に油断していた。 だからこそ勝てただけで、負けてればリバイブ・ハンターの同じ相手に殺されると死ぬという条件で、光輝は死んでいたかもしれないのだ。


 そして冴嶋は、インビジブル・スラッシュのギフト能力者であり、ブライトを二番目に殺した初期の宿敵。 正直、勝てたのは比呂の横槍のおかげだったし、国防軍でも指折りの実力者だった。

 既にスピード・スター、インビジブル・スラッシュ、ロンズデーライトという上位ランクのギフトを保持していたあの時点のブライトでも、彼に勝てたのは奇跡だったかもしれない。


 そんな二人が戦っていた。 決着は着いた様だが、共にアースから転生した二人が何故戦っていたのか?



「うぐっ……姫さん、早く逃げろ……」


「あれ? 僕の質問は無視? 仕方ないな〜、じゃあ最初にその姫を黙らせてから、じっくり話を聞こうかな?」


(どうやら冴嶋が黒崎たちを襲ったみたいだが、なんか、昔見たラノベみたいな展開だな……。)


 冷静に辺りを見渡してみる。 倒れてる人間は、皆肌が青白い。 対して、今は余裕で静観してる冴嶋の仲間たちは、ブライトも見慣れた人種……普通の人間だ。


 この事から、黒崎は魔族側で、冴嶋は人間側と考えられる。


 そしてブライトは、魔族側のギフト……贈り物だ。 つまり、この状況では黒崎は味方で、冴嶋は敵と考えられる。



「な、何をするんですか!? この無礼者!」


 その時、冴嶋の仲間が、壊れた馬車の中から少女を連れ出した。


「君がお姫様? この男との遊びがあんまり楽しいから、本筋の依頼を忘れてたよ。 魔族の姫・フローラ・ウインズを拐うって依頼をね」


 その少女、フローラ・ウインズの顔を見て、ブライトの時間が一瞬止まった。


(……風香!? いや、違う。 髪の色も肌の色も風香より更に青白い。 しかも、髪も長い。 でも……似てるな)


 ブライトが一瞬見間違う程に、フローラは風香にソックリだったのだ。



「ぐっ……テメエらっ! なんで魔族を襲いやがる? この世界は、全ての種族間で平和条約を結んでたんじゃねえのかよ!?」


「……らしいね。 でも、平和ってつまらないじゃん? 争いも戦いも無い世界……そんなの、退屈以外のなにものでもないじゃん?」


「クソがっ……新たな“人王”の影響かっ!?」


「そうだよ? あの方は素晴らしい……この退屈な世界をカオスに導いてくれる。 やっぱ、殺し合いこそ生きとし生けるものの本能だもんね。 君も、そうだろ?」


(チッ……冴嶋ってただの戦闘狂じゃなく、平気で女にも手を上げるクズ野郎だったんだな。 まあ、俺のイメージとしては、黒崎もあんま褒められた人格じゃなかったけど)



「さて……魔王、オーフレイム・ウインズの娘さん、悪いけど、人族と魔族との新たな争いの火種になってもらうから、ちょっと付き合ってもらうよ?」


「何故……何故人族は、私たち魔族を目の敵にするのですか!? 二年前まであんなに仲が良かったのに!」


「ん~、それは人王に聞いてくれよ。 でもまあ、この世は強い者が支配するべきだろ? なんで力ある者が、無き者に合わせなきゃいけないの? 僕はこの世界で目覚めてから、ずっと不思議だったんだよ。 この世界は、退屈過ぎるって」


「貴方の様な……貴方の様な人がいるから、世界から悲しみが無くならないんです!」


「残念ながら、僕は博愛主義者に興味は無いんだよね~。 うるさいから、ちょっと眠っててもらおうかな?」


 冴嶋がフローラに向かって、手刀を落とそうとする。 フローラは、思わず目を瞑った……



「……えっ? き、君、いつの間に?」


「何の躊躇も無く女に手を上げようとするとは……おまえ只の戦闘狂じゃなく、とんだクズ野郎だったんだな」


 冴嶋の手刀を、ブライトはフローラに当たる寸前で受け止めていた。



 薄ら笑いを浮かべた冴嶋の表情が変わる。 獲物を見つけた、戦闘狂の表情に。


「……君、強いね……。 多分、僕よりも」


 あの時勝てたのはたまたまだという事はブライトも自覚している。 それでも、今の自分にとったら冴嶋など敵ではないと確信していた。


「分かってんなら黙って立ち去れよ。 特別に見逃してやるから」


「見逃す? フフフッ……フハハハハッ! 何冗談言ってんだい? こんなにも魅力的な敵に出会えたのに、戦わないなんて選択肢を選べるハズがないじゃないか!」


 言いながら、冴嶋はガクガクと震えている。 決してビビってるからではない、武者震いだろう。



「はあ……後悔するぞ? 多分俺は、おまえの想像の何倍も強い」


「いいねえ……いいねえ! なんか君とは初めて会った気がしないけど、とにかくドキドキして来たよ!!」


 冴嶋や黒崎には、アースでの記憶は無い。 つまり、ブライトの記憶も無いのだ。


 冴嶋に勝てたのは奇跡。 あの時点で、冴嶋の方が自分より強かったのは間違いないと知っている。 だが、それはそれで釈然としないのも事実だった。


 今度は……実力で倒したいと。


(……じゃあ、リベンジマッチと行きますか)

リバイブ・ハンター犠牲者の会


①黒崎政夫

享年/37歳 性別/♂

身長・体重/189㎝・80㎏

ギフト/スピード・スター(A-)

光輝を殺し、ギフトを発現させた張本人。 元国防軍で、素行の悪さから除隊、野良フィルズとして世界各地を転々としていたが、光輝によって殺される。

登場/6~8話


②冴嶋栄治

享年/31歳 性別/♂

身長・体重/169㎝・60㎏

ギフト/インビジブル・スラッシュ(A)

二度目に光輝を殺した男であり、最初のライバルともいえる存在。 国防軍の中尉で、戦闘能力は国防軍でもトップ5に入る程の実力者だが、普段の勤務態度に問題があり、出世からは遠ざかっていた。本人は戦う事さえ出来れば問題ない戦闘狂だった為、気にしてなかった。 光輝=ブライトと激しい戦闘の末敗北。死亡した。

登場/8~28話



※新作として、【レジェンド・オブ・ブレイブ~伝説の勇者が未来に行ったら、インフレが酷すぎて死にそうです~】を投稿しました。

https://ncode.syosetu.com/n3202hj/


こちらは短編ですので、気軽に読んで頂ければと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ