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最終話 漆黒のダークヒーロー

※風香のセリフを若干変更しました。

 ――五年後



 新東京都海浜公園の中央広場では、世界中から要人一○○名が集まり、世界平和を記念した式典が開催されていた。


 勿論、その光景を一目見ようと、多くの一般人も駆けつけており、見渡す限り人でごった返していた。



 ハルマゲドン終結から五年。 世界は、なんとかフェノムとの共存関係のシステムを構築し、平和を維持していた。


 判明した情報によれば、ハルマゲドンから三年以内に、この星の意志により地球が滅亡すると言われていた。 だが、三年が過ぎ、五年が経過した事で、星の意志によるリセットを回避出来たと判断した人類は、それを記念して今回の式典を開催したのだ。



 広場の中央には、高さ一○メートルの銅像に幕が被されている。


 この場に集まった人々は、その銅像の除幕式を目当てにしていると言っても過言ではなかった。



 銅像の前には、内閣総理大臣・徳川幸之介。


 桐生や財前と組み、国内でのスペシャリストとフィルズ、全能力者と無能力者との垣根を無くした立役者であり、世代交代した比呂や崇彦の良き理解者として国政を担う傑物である。



 そして、財前の引退に伴い、新たに国防軍元帥となった真田比呂。


 財前は、光輝の意志を継いだ若い世代に圧され、自分の時代の終わりを悟った。 そして、後継者として指名したのが比呂だったのだ。



 そして、フィルズとしてでなく、今や民間のスペシャリスト組織となった黒夢のボスであり、WSCでもアジア支部長を務める的場崇彦。


 光輝亡き後、最強のスペシャリストとして矢面に立って動いていた比呂に対し、実質的にフェノムとの共存の舵を取って来たのは崇彦だった。 世界中の政府関係者やスペシャリストに、光輝の意志を理解させたのは彼だったし、光輝が言っていた通り、一筋縄ではいかなかったフェノムとの共存の面でも、表では語られないであろう裏の面でも指揮を執ったのは彼だった。



 他にも、ジョシュアからWSC会長の座を引き継いだヒクスンを始めとした、銅像のモデルとなった人物と縁のあった者たちが並び、除幕する際のテープを握っていた。




 一方、群衆の中から、国防軍華撃隊の面々も除幕式の様子を見守っていた。


「それにしても、漸く銅像のお披露目か〜。 本当はもっと早く建てれば良かったのにね」


「そうですね。 なんと言っても、世界を救った英雄なんですから」


 梓と遥の愚痴に、霊長類最強雌トリオも激しく頷く。


「まったくその通りだな。 世界を代表するヒーローだというのに……」


 吉田に関しては、かなり怒り心頭といった様子。


「まあまあお姉さま方、落ち着きましょうよ」


 そして、そんな吉田たちをなだめるのが、華撃隊の一員となった薫子だ。



「皆さん、お久しぶりです!」


 そんな華撃隊の面々の前に、男の子と手を繋いだ女性が声を掛けて来た。


「あっ、やっと来た! 久しぶりだね〜風香!」


 その女性は、水谷風香だった。


 風香はあの後、国防軍を除隊した。 そして、今手を繋いでいる子どもを産んで、シングルマザーとして生活していたのだ。


 風香が抜けた後、華撃隊は新たに吉田を隊長に据え、国防軍の優秀な女性軍人が多数在籍する軍の一大派閥へと成長していた。 そんな中でも、初期メンバーの面々は色んな部分で友達として風香をサポートしていたのだ。



「よう、雄輝! 元気にしてたかい?」


 吉田が雄輝と呼んだ男の子の頭を撫でると、雄輝は恥ずかしそうにその手を弾いた。


「よせやい! 俺は将来ひ〜ろ〜になるんだぞ! 子ども扱いすんな!」


 そんな雄輝に、梓が笑みを浮かべる。


「あらま! まったく誰に似たんだか……っーか、ますますパパの子どもの頃に似てきたわね……」


「ほんと? やったー! やっぱり俺も将来ひ〜ろ〜になるんだな!」


 パパに似てると言われ、喜ぶ雄輝。


 誰もが微笑ましく雄輝を見守る。 雄輝は彼女たちにとっても息子の様な存在だったのだ。


「あ、はじまるみたいですね。 パパの銅像、カッコよくなってるかな~?」


「パパはひ~ろ~だもん! カッコいいに決まってるよ!」


 風香と雄輝が期待の眼差しで見守る中、いよいよ除幕式が始まろうとしていた。




 銅像の前で、崇彦が呟く。


「どうだ? おまえが残してくれた情報のおかげで、俺たちは星の意志ってやつを変えてみせたぞ」


 比呂も同調する。


「そうだな。 おまえが命を懸けて救ってくれた世界を、俺たちは力を合わせて守る事が出来た」


「ま、これからも大変だけど。 あの世から見守っててくれよな」



 そして、幕が降ろされる。


 そこには、力強く佇む、漆黒の悪魔と恐れられ自分の命を犠牲にして世界を救った英雄、闇の閃光・ブライトの銅像が建てられていた。



 湧き上がる歓声。 集まった人々は、皆銅像に向かって羨望の眼差しを贈り、拍手喝采が巻き起こる。


 世界中の誰もが、ブライトを世界を救ったヒーローだと認めていたのだ。



「……やっぱりおまえには敵わないよ、光輝。 子どもの頃の夢を実現して、本当にヒーローになってしまうんだから」


「だな〜。 でも、アイツは見た目からしてヒーローって感じじゃなかったし、最後の最後もラスボスみたいに振る舞って見せちゃってさあ。 だからアイツは、ヒーローはヒーローでも、漆黒……漆黒のダークヒーローってやつだったんじゃね? あ〜あ、この場にいたら思いっきりからかってやったのに……」


 あの後……比呂と崇彦に、光輝から手紙が残されていた。 そこには、星の意志の全てが書かれていたのだ。 ……だが、自分が死ななければならない事は書いていなかった。


 最後まで悪役を演じ、その陰で単身アンノウンを倒し、自らラスボスとして倒される事で、人類が団結してくれる事を狙ったのだ。


 だが、既に崇彦によってその思惑は知られており、世界のために自分の身を犠牲にしたのだと世界中に告げられた。

 その献身が、逆に人類の団結に繋がった。


 だから、ブライトは世界を救った英雄……ヒーローとして、今も讃えられているのだ。


 そんな不器用な光輝を想い、比呂と崇彦は、なんとも言えない表情で、ブライトの銅像を見上げるのだった。



「あ、ヒクスン。 あの噂……どうだった?」


 すると、崇彦がヒクスンに問い掛けた。


「噂? 噂ってなんだい?」


 どうやら比呂は知らないようだ。


「ああ、噂の件か。 何分姿をハッキリと見た者がいないのでな……。 だが、最近西海岸の悪党どもが何者かに粛清されてるのは事実の様だ」


「おい、崇彦、ヒクスン、噂ってなんなんだい?」


「……ま、そのうちハッキリすんだろ? そん時は……」


 そう言って崇彦は、遠く海の向こうを眺めるのだった……。




「アメリカ!? 本当に行くの、風香」


 華撃隊の面々が、驚いた様に風香に問い掛ける。


「ハイ。 雄輝も大きくなった事だし、ちょっとだけお祖父様にお願いして」


「じーじのとっくん、とっくん! 俺はやるぞー!」


 あの鬼神と言われた鬼島も、今ではすっかり隠居し、曾孫である雄輝を溺愛していた。



「だって、あれってあくまで噂なんでしょ?」


 不安そうな梓に、風香は確信を持った目で応える。


「噂かもしれないですけど、それでも行きます。 だって、約束したから。 もし来てくれるのが遅かったら、私から会いに行くって」


 そう言い切る風香には、一片の迷いも感じさせない意志が感じられた。



 風香が、胸元の風がモチーフになっているネックレスをギュッと握りしめる。


「絶対に生きてる。 私は、信じてますから」


「……そうだね。 アイツは、死んでも蘇る男だもんね」


 梓の言葉に、風香と華撃隊の面々は笑みを浮かべながら、遠く海の向こうの空を眺めるのだった……。






 ――アメリカ・ロサンゼルス



 ……暗い、スラムの路地裏。


 迷い込んだ女性が、三人のチンピラフィルズに追いかけられていた。


 必死で逃げる女性。 しかし、運が尽きたのか、目の前は行き止まりだった。


「いやっ、助けて!」


「ヒャッハー! 助けてもなにも、ちょっとだけイイコトしようってだけの話だろ? グヘヘ」


 スケベな顔を丸出しの男たちに、女性は恐怖から悲鳴をあげる。

 だがここはスラムの薄暗い裏路地。 誰も助けなど来るハズも無い場所だった。



「ヒャッハー。 最初は俺が……次はおまえらが……って、あれ?」


 男が仲間の方に振り返ると、空から漆黒の人影が降って来て、二人の男の背後に舞い降りた。


「なっ……何もんだ、テメエ!?」


「貴様らに名乗る名は無い」


「なんだと……オメエラ、やっちまえ!」


 二人のチンピラが漆黒の男飛び掛かった瞬間……二人の男の首が跳ね跳んだ。


「ヒッ……ヒイイイイッ!!」


「……己の罪に溺れて……眠れ」


 最後の一人の首も、二人と同様に跳ね跳んだ……。


 漆黒の男は、あっという間に三人のチンピラフィルズを倒してしまったのだ。



「あ……ありとうございました! あの……よかったら名前を……」


 助けられた女性が、漆黒の男に礼を述べ、名を尋ねる。



 すると、漆黒の男は名乗った。 己の名を……



「…………我が名は…………」





 漆黒のダークヒーロー〜ヒーローに憧れた俺が、あれよあれよとラスボスに!?〜


 END

※足掛け約二年半…色々ありましたが、なんとか完結を迎える事が出来ました。これも根気よく応援してくれ、読んでくれた皆様のおかげです。


報告として、コミカライズ化が進行中です。今後、コミカライズに際しての告知やお願いに伴って、おまけストーリーなどを投稿するかもしれませんが、物語的にはここで完結とさせて頂きます

それでは最後に、この作品に対しての感想やレビュー、評価を御願い申し上げます。これだけの長編は初でしたし、書籍化という貴重な経験もさせて頂きました。そんな愛着のある本作に対して、完結までお付き合いくださった皆様の声を聞かせてもらえればなと願っております。


また、活動報告の方で想いの丈を色々と語ってますので、宜しければ覗いてみて下さい。


それでは皆様、また新作orおまけストーリーで会いましょう! 二年半の間、本当にありがとうございました!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 最初から最後まで一気読みしてしまいました。 るみが最後まで報われることがなくて、悲しいなと思いました。 とても素敵な作品でした。 この作品と出会えて良かったな。
[良い点] めっちゃ面白かったです笑笑 [一言] 久しぶりに読み返すかーって思って開いたら、なんか完結してて「ええ!?」ってなったので一気読みしました笑笑 もう最高でしたね笑笑 でも、風香ちゃんが…
[気になる点] 結局、比呂はクズから成り上がったし、今まで行いは有耶無耶にしただけ
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