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第164話 ヒミコの予言

※予約投稿になってなかった!

 第二次ハルマゲドンから三日後、日本では風香が光輝の帰りを待っていたが、帰って来たのは薫子だけ。

 そして、その薫子から届けられたのは、瑠美の悲劇の報だけだった……。


 薫子の話では、光輝は薫子にも何も言わずに失踪したらしい。


 あの日、プロポーズされて一夜を共にした。 そして、日本に帰って来たら一緒になろうとまで言ってくれた光輝の失踪。


 だが今は、それ以上に瑠美の悲劇が、風香に大きな悲しみを与えた……。


 瑠美は風香にとって、姉の様な存在だった。 いつでも凛として、自分に自信があって、堂々としていた。 風香にとって、理想の女性像でもあったのだ。



 それでも……瑠美の悲劇と、光輝の失踪を聞いた時、風香は激しく動揺していたが、直ぐに気持ちを切り替えなければならなかった。


 何故、瑠美が倒されなければならなかったのか? 何故、光輝が姿を消したのか?


 光輝自身を……それだけではなく、何か世界を巻き込む重大な何かを、光輝は追っているのではないか? そう結論付けたのだ。



 そうとなれば、風香は華撃隊と、行き場を失った薫子と共に、光輝の行方を捜し始めた。


 だが、光輝の足取りは一向に掴めず、時間だけが過ぎて行ったのだった……。



 そして、第二次ハルマゲドンから一〇日が経過した頃、世界中である事件が多発した……。




 ――国防軍本部



 最終決戦にて、重傷を負い名誉除隊した先任の国防軍陸軍大将の田村に代わり、新たに大将となった真田比呂は、自室の陸軍大将室にて、部下である朝日からの報告を聞いていた。


「なんだって? 世界各地で、スペシャリストが襲撃を受けてる?」


 朝日。 先のハルマゲドンで戦死した井上、今はブレイカーズの一員となった薫子と共に シュトロームの実験により誕生した三人のリバイブ・ハンターの一人である。


 比呂も、既に光輝が行方不明である事は知っていた。 その上、光輝と行動を共にしていた瑠美の悲劇。



 嫌な予感しかなかった。 アンノウンの復活、光輝の失踪。 世界各地でのスペシャリスト襲撃。 この三つの出来事に、確実に光輝が関わっていると。


「光輝……一体何が起きてるんだ?」


 自分の知らない所で、なにか全世界を巻き込む大事件が起きてるのではないか? そんな不安が、比呂の胸中を過るのだった……。



 ――黒夢本部



 既に黒夢からは抜けていたとはいえ、瑠美の悲劇は黒夢のメンバーにも深い悲しみを与えていた。


「……で、まだ光輝の行方は掴めないか、ラインさん」


「アメリカの協会にも捜索のお願いしてるんだけど、全然だYO」


 黒夢のボスの部屋では崇彦とラインが、とある人物を待っていた。


「光輝の野郎……こんな時に、なんで俺に連絡の一つもよこさねえんだよ!」


「まあまあ、落ち着いて。 こっちでも探してるんだけど見つからなくてNE……。 多分、ブライトはティザーの仇を討つ為に動いてるんだろうYO」


「だからこそだろ? 今は袂を分けたとはいえ、俺たち三人はいつも一緒だったんだぞ!?」



 すると、部屋のドアが開き、そこから白夢のボス・白蛇雪と、十代であろう和服を着た少女がやって来た。


「騒がしいね、崇彦。 ボスになってからおまえがそんなに声を荒げるなんて初めてじゃないか? ……まあ、理由は分かってるけどね」


「……すみません、雪さん。 わざわざ呼び出しておいて見苦しい所を。 ところで、その方が……」


「ああ。 ヒミコだよ……」


 崇彦もその存在の噂だけは耳にした事があったが、まだ目にした事がなかったのだ。


 占い師・ヒミコ……。 先代のボス・桐生が絶大の信頼を置き、組織の未来を左右する際に必ず助言を得ていたと言われる存在。



「俺も初めてお会いするけど、まさかこんなお嬢ちゃんだったとはな……いでっ!?」


 そう言ってヒミコの頭を撫でようとした崇彦の腕を、ヒミコが引っ叩く。


「桐生ちゃんの代わり、お主、失礼な奴じゃな。 妾はこれでもお主の倍以上生きておる。 生意気な口は許さんぞよ」


 崇彦の倍以上……。 となると、少なくともアラフォーなのだが、ヒミコの外見は小学生、頑張って中学生ぐらいにしか見えなかった。


「ホッホッホ、まあまあヒミコや、このイーヴィルは桐生の後を継いで中々頑張ってるんだよ。 今回だけは多めに見てやりな」


 すると、ヒミコは無言で崇彦に手を差し出した。


「……さくらんぼ」


「え? さくらんぼって……果物の?」


「そう。 さくらんぼくれたら許してやろう」


「えーっと……分かった、直ぐに他の者に持って来させる」


 ヒミコは無表情のまま、小さくガッツポーズをしている。


 それを見て崇彦は、やっぱり子どもじゃねーかと思ってしまった。



「ところで、前々から知りたかったんですが、ヒミコ様はボスとはどんな関係だったんですか? 折角の機会なので、ちょっと知りたくて」


 黒夢の新たなボスとして、ヒミコの力は有用だ。 ヒミコは桐生と雪を通じてしか会えないとされていた為、三ヶ月間ずっと雪にヒミコへの面会をお願いしていたのだが、中々会う事が出来ずにいた。

 漸く対面が叶い、今後の事も考えて崇彦はヒミコの事を少しでも知ろうとしたのだ。


「桐生ちゃんとは、妾が昔裏社会で占い師家業をしていた頃にスカウトされてのう。 かれこれ二○年前の事じゃ」


 崇彦は裏社会のワードについて興味を抱いたが、取り敢えずスルーした。


「当初はまだ黒夢もこれほど大きな組織ではなかったからのう。 黒夢や白夢は、妾の予言のおかげで現在があると言っても過言ではなかろう?」


 ヒミコが雪を見ると、雪は肯定的に頷いた。


「……と言ったものの、思えば桐生ちゃんが妾に占ってもらいたい事項は、いつも明確で断定的じゃった。 どんな予言が出ようとも、既に桐生の頭の中で出ている結果に対する成功率を上げるだけのものだったかもしれぬ。 勿論、それは桐生が望んだ質問の答え合わせとしては申し分のない結果じゃったろうし、より桐生の行動の成功率を高めたじゃろう」


 つまり、ヒミコの予言は、桐生にとっては自分の作戦の成功率を上げる為だけにあったのかもしれないと、崇彦も理解した。


(なるほどね……流石はボス)


「じゃが、三年前……妾の予言で状況が変わったんじゃ。 桐生の質問は、アンノウンの復活はあるか? じゃった。 それまでも、折に触れてその質問に対して占った事があったが、近々で復活する予言は出なかった。 じゃが、三年前……唐突にアンノウンが復活すると出たのじゃ。 それから桐生は能力者と無能力者との関係を変える為の行動を加速させた。 そして二年前、来たるべきアンノウン復活に際して、人類が勝利する為に何が必要かを聞かれ、出た結果が……救世主の存在じゃった。 その予言を受け、桐生は自ら救世主を探し始め……出会ったのがブライトじゃ」


 光輝が桐生と出会い、黒夢の一員となったのは、全てヒミコの予言が起因していた……。 その事実は、崇彦にとってもラインにとっても、驚くべき事だった。


「桐生ちゃんは時に非情な手も使い、ブライトを鍛え上げた。 救世主として着々と成長するブライトに、桐生ちゃんも絶大な信頼を置いておった。 ……じゃが一年前、桐生ちゃんに頼まれて最期にした予言は、自分の死期じゃった。 己の不調を悟った桐生ちゃんが、余命を知りたかったんじゃな。 それに妾の予言は、半年から一年後と答えた。 これは、桐生ちゃんの行動次第で半年から一年後の間で死期が変わる事を意味しておったのだが、桐生ちゃんは予言から一○ヶ月後、命を落としたのじゃ……」


 桐生が光輝の為に命を投げ出したのには、ヒミコが関連していた事に、崇彦も複雑な想いを抱いた。


 予言の通りなら、桐生の寿命は第二次ハルマゲドンには間に合わなかったのだ。 そして、その命を懸けて救った光輝は第二次ハルマゲドンでは無くてはならない存在……救世主となった。


 やはり桐生は正しかったのだと知った。 それでも、複雑な心境は晴れなかったが。



「……分かりました。 ……じゃあヒミコ様。 今回俺が聞きたいのは、闇の閃光・ブライトの居場所なんです」


 崇彦が早速光輝の居場所を聞こうとしたが、ヒミコの表情が曇る。


「残念じゃが……今は占えぬ。 妾の予言は、期間を空ければ空ける程精度が増す。 そして、質問が明確であればある程にまた、精度が増す。 じゃが……先日、第二次ハルマゲドンが終結したのを機に、未来を占ってしまったのじゃ……」


「あ〜……となると、今占っても、予言の精度が落ちちゃうと?」


 ヒミコは、伏し目がちに喋りだした……。


「そういう事になるな。 妾は……桐生ちゃんが死んでから、夢を見る様になったんじゃ。 それも、毎回同じ夢を……」


 そう言うと、ヒミコは顔を真っ青にして、ガタガタと震え始めた。


「ヒミコ……その夢の内容、教えてくれないかい?」


 雪としても、こんなヒミコを見るのは初めてだった。 それでも己の不安を押し殺し、優しく問い掛けたのだ。


「ある日、この星の生きとし生けるもの……全てが消滅してしまう……そんな夢じゃ。 そして……奈落へと続く崖の上で、漆黒の翼を持つ男が立ってるんじゃ……。 妾にはその男が……」


 ヒミコが誰の名を告げようとしたのかを、ここにいる全ての者が悟る。


「……その男とは、ブライトですか?」


 恐る恐る、崇彦はヒミコに問い掛ける。


「分からぬ……分からぬのじゃ。 第二次ハルマゲドンで人類が勝利し、妾の悪夢も杞憂だったのやもしれぬと思っておった。 じゃが、それからも毎晩、その夢見たのじゃ……」


 よく見れば、ヒミコの目の下にはくっきりと隈が見える。 悪夢の影響で、まともに睡眠も取れていないのだろう。


「妾は、もう長い事桐生ちゃんの為にだけ、自分の能力を使って来た。 じゃが、桐生ちゃんが亡くなり、最後に予言のギフトを使ってから一年以上が経っておった。 じゃから……先日、久しぶりに自分の意思で予言してみたのじゃ。 ……一世界がどうなるのかを」


 崇彦もラインも、雪までもが息を飲み、ヒミコの予言の結果を待った……。



「その予言はわらわの悪夢とにておった……大地は裂け、森は枯れ、地上はおよそ生物が生存出来る環境ではなく、生物を確認する事も出来ない場所で……ブライトが立っておった。 そして、世界を終わらせると宣言しておったんじゃ……」

覚悟を決めた漆黒の悪魔が、闇夜に翼を広げて飛び出した。 標的は、先の戦いで共闘したヒクスン。


果たして、光輝の狙いは……


第165話 『やるべきこと』


「やるべき事をやるしかない。 ……それが、悪魔に魂を売る行為であろうとも……」

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