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第148話 リバイブ・ハンターの死

 同時刻・ギリシャ



 ギリシャ・パルテノン神殿上空に渦巻くゲートを、ヨーロッパ·アジアの連合軍が見上げている。


 ヨーロッパ全土、アジア全域からトップクラスのスペシャリストが集められる中、日本からは戦闘要員として二〇名が参加していた。



 国防軍からは、今や国防軍最強と呼ばれる真田比呂。


 既に引退していたが、この日の為に復帰した鬼島平吉。


 陸軍大将の仙崎、海軍大将の田村、空軍大将の桜庭。


 華撃隊隊長・水谷風香、その部下である華撃隊副隊長・吉田成美。


 その他、戦闘能力や回復・サポート能力の高い隊員が三名と、リバイブ・ハンターの能力者である朝日と井上。



 黒夢からは、新たにボスとなった的場崇彦。


 ナンバーズのナンバー1・ジレン。 ナンバー2・クロノス。 ナンバー3・ヴァンデッダ。 ナンバー7・セブン。 ナンバー8・クロウ。


 他には、元陽炎のボス·霧雨右京。


 白夢の二枚看板、弦慈と世音。


 そして、全体のリーダーとして戦闘には参加しないが、国防軍元帥の財前敏明。


 かつてのハルマゲドンを知る鬼島と財前、個々の平均的な戦闘力の高さを加味すれば、こちらの方がアメリカ側よりも戦力は充実していると言えた。



 だが、国防軍の雰囲気は決して良いものとは言えなかった……。


 トップである財前に対して、仙崎は完全に敵対関係にあるし、比呂や風香も反感を抱いている。 他の隊員も、強権を奮う財前に多かれ少なかれ不満を抱いていても、表向きに批判する事は出来ず従っている状態。


 鬼島に関しては、既に一線を退いていた事もあり、そんなイザコザには興味を示さず、対アンノウンにのみ意識を集中させていた。



 元フィルズの方でも、黒夢ナンバーズの一部が、霧雨との遺恨を残していた。


 霧雨は死者を自分の影の兵隊としている。 だが、その影の軍勢には、黒夢のメンバーにとって許容しがたい人物の影が軍勢の一員とされていたのだ。 元黒夢ナンバーズにして、桐生と共に組織の創設に携わったロージアは、ジレンとは恋仲だったのだ。


 黒夢のメンバーは霧雨に対しては許し難い感情を抱くが、霧雨が桐生と懇意であった事、そして、その戦力がこの戦いにおいて必要不可欠な事を理解している。

 それでも、霧雨の飄々とした不敵な態度に、不満は爆発寸前だったのだ。




 そんな中、いよいよフェノムが地上に降り立った……。


「来たか……。 前衛部隊は、雑魚どもの大軍を排除せよ! 主力部隊はハイレベルのフェノムを殲滅、鬼島・真田は、アンノウンに備えろ」


 戦闘要員ではないが、この作戦のリーダーである財前の号令で、ギリシャ側の第二次ハルマゲドンの決戦の火蓋が切って落とされた。



「ナイトメア・ルアー!」


 ヴァンデッダの幻覚により、フェノムが同士討ちを始める。


「……レベルの高いフェノムに効果があるか微妙だったんだけど、大丈夫だったみたいね」



「ウオラアアアッ!!」


 クロウがインビジブル・シールドを携えたまま突進し、次々とフェノムを弾き飛ばしていく。


「殺されてえ奴からかかって来やがれ!!」



 ヴァンデッダとクロウが危険度レベル4~6のフェノムを相手に無双している頃、クロノスはワールド・ディメンジョンを駆使して、粛々とハイレベルフェノムを処刑していた。


「それにしても、この数は流石に骨が折れる……」



「パワー……ウェイブ!」


 ジレンの周りには、炎に包まれて炭と化すフェノムで溢れていた。


「アンノウン……まだ現れないのか?」



 他のナンバーズが殲滅を繰り返す中、セブンだけは争いを避け、目立たない場所に避難していた。


「ひ~、だから俺にはハルマゲドンなんて無理だって言ったのにな~」


 そう言いつつも、来るべきタイミングでラッキーセブンを発動する機会を伺っていた。



 国防軍は、仙崎たち三大将を中心に圧倒的力を見せつけていた。


 だが、最も目立っていたのは、やはり比呂だった。 財前の命令を無視し、ワールド·マスターを駆使し、戦場を支配し、他のスペシャリストのサポートをしつつ自分でもフェノムを次々と駆逐していく。


 そして、もう一人財前の命令を無視する者が……。


「ガッハッハッハッ! フェノムも随分貧弱になったもんじゃのう!」


 一発の拳がキングオークの頭部を粉砕し、一蹴りでガイアドラゴンを地平の彼方まで吹っ飛ばす。 第一次ハルマゲドンの英雄・鬼島を止められるフェノムは、現時点では存在しなかった。


「師匠、そんなに飛ばすとアンノウンの相手をする時に体力が尽きますよ?」


「ガハッハッハッハ! ただの肩慣らしじゃわい!」



「ワールド・オブ・ウインダム!」


 戦場に巨大な竜巻が発生し、フェノムを飲み込んでいく。 そして、討ち漏らしたフェノムを次々吉田がしとめて行った。


「ナイス、吉田さん!」


「すっかり調子が戻ったみたいですね、隊長。 これも、愛のパワーかしら?」


「え? そ、そんな事……あっ、アイス・アロー!」


 乙女の様に頬を赤らめ、モジモジしながら無慈悲にフェノムを串刺しにするその姿に、他国のスペシャリトたちも顔が青冷めていた。



「さあ、我が影の軍勢よ……フェノムを駆逐せよ」


 霧雨の周囲に、黒い人型の影が無数に現れ、フェノムの大軍と乱戦を始めた。 中でも、元陽炎のトップ・小野田と、元黒夢ナンバーズ・ロージアは、圧倒的な強さでフェノムを駆逐していった。


「貴様ぁ~霧雨ええっ!!」


 恋人だったロージアの影を手足の様に扱う霧雨に、遂にジレンの怒りが爆発する。 だが、そんなジレンをヴァンデッダとクロノスが制する。


「落ち着け、ジレン! 霧雨とはこの戦いが終わったらしっかり話しをつけたらいい!」


 そんな黒夢ナンバーズを、霧雨が冷めた目で見つめていた。


「……今は人類の命運を決する戦いの真っ最中なんだよ? 緊張感無いのかねえ。 はあ……やっぱり桐生さんが必要だったな……」


 戦況は人類側有利に進んでいたが、全戦力の中でも屈指の実力者たちのいざこざは、場の雰囲気を悪くし、全体の士気にも影響を及ぼす。



 そして、いよいよアンノウンが降臨した……。



「いよいよか……」


 降り立ったアンノウンは、全身真っ白のマネキンの様に見えたが、その身から溢れ出るオーラに、比呂は気を引き締めた。


 だが、鬼島はアンノウンに違和感を抱いていた。


「おかしい……あれは本当にアンノウンか?」


 かつて、鬼島が相対したアンノウンは、確かに姿形は見に覚えがあるし、破格の強さを誇るのだろうが、第一次ハルマゲドンの時のアンノウンよりも僅かに劣って見えたのだ。



「いいねぇ……アンノウン。 あれを僕の影に出来たら……世界征服出来ちゃうかもね」


「貴様っ……」


 霧雨に殴りかかろうとするジレン。 だが、霧雨を守る影は、かつての恋人ロージアなのだ。


 仕方なく、ジレンは振り上げた拳を降ろす。 影となっても、かつて愛した女と争うのは耐えられなかったから。



「あれが……アンノウン」


「凄いオーラね……。 正直、私じゃあ勝てそうにない」


 風香と吉田は、アンノウンの絶対的なオーラに圧倒されそうになりつつも、それでも戦意を失わなかった。


「この戦いが終われば、光輝様と一緒になれるんでしょ? じゃ、頑張らなきゃね」


「うん。 絶対に生き残るって約束したし、今頃アメリカでは光輝君も戦ってるから」



「愚カナ人間ドモヨ、我コソハ、貴様ラヲコノ星カラ根絶セシ処刑人ナリ……」


「……貴様は誰じゃ? ワシの知るアンノウンでは無さそうじゃが……」


 鬼島が、抱いていた疑問をアンノウンにぶつけた。


「我ハアンノウン……アンノウン·リアル。 ソレ以上デモ、ソレ以下デモナイ……」


「ほう、そうか。 まあ、どっちでもいいわい……強者ならばな!」


「貴様ラハ、始祖アンノウンガ残シタメッセージヲ無視シタ。 ソノ結果ガコレダ。 貴様ラハ、滅ビルノダ」


 鬼島以外、この言葉の意味を知る者はいない。


「確かに、あの時アンノウンが残した言葉を世界に伝えなかったのはワシとジョシュアじゃ。 それが、この事態を生んだと言うのか?」


 鬼島も、内心では気付いていた。 あの時、もしそれを公表していれば……世界はもっと変わっていたのかもしれないと。


 だが、全ては後の祭りなのだ。



 しかし、鬼島が過去を悔やんでいた一瞬の隙……。 その隙に、アンノウン・リアルの指から一筋のビームが放たれ、リバイブ・ハンターである井上の心臓を貫いた……。



「!? 早い!?」


 比呂ですら見失う程のスピードで放たれたその一撃は、井上を死に至らしめる。 だが、井上はリバイブ・ハンターだ。 その能力を知っている者は皆、井上は蘇ると思っていたのだが……彼らは大きな見落としをしていた。


“リバイブ・ハンターとは、己を殺した相手のギフトを手に入れる能力である”


“……ギフトに覚醒した者以外に殺された場合などでは発動しない”



 ……ギフト能力者のギフトによる攻撃ではない、フェノムであるアンノウンの攻撃によって命を落とした井上は……そのまま目を覚ます事はなかった……。

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