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第146話 滅亡の使者

「さて、ブライトばかりに目立させるのも癪だ。 そろそろ行くぜ」


 待機していた精鋭部隊からまず飛び出したのは、アメリカナンバー3、ジョーン・ジョーズ。


 ギフトランクA、ハイブリッド・ラバーを発動し、強化された脚力で空へと跳び上がり、長い手足を鞭のようにしならせてブルードラゴンに打撃を入れまくる。



「ジョーンめ……ナンバー2の座は譲らんぞ」


 次に飛び出したのは、アメリカナンバー2のマーク・ケアールマン。


 地上に降り立ち、強力なブレスを吐きまくるガイアドラゴンに、ギフトランクA+、アルティメット・アクセルで加速し、強烈なタックルを喰らわせた。



「チッ、乗り遅れる訳にゃいかねーな!」


 そして、南米ナンバー1、ヴァレンタイン・ジヴァが、サンド・ストームの竜巻で己を空へと上昇させ、勢いそのままにレッドドラゴンの顎に戦慄の膝蹴り喰らわせた後、まさに暴風の様な左右のフックをラッシュする。



「やるねぇ……流石は各国のトップスペシャリスト。 俺も行くしかねーよなぁ」


 中南米メキシコのナンバー1、フランキー・シャムロックはのギフトは、ランクS、プラズマ・ブラスター。 計一○本の指から、同時に一○のプラズマ状のビームを発射。 あっという間にイエロードラゴンに一○の風穴を空け、殲滅してしまった。


「相変わらず……普段はおちゃらけてるが、凄い力だな……君のギフトは」


 その圧倒的火力に、ヒクスンも苦笑いを浮かべる。


「まあね。 アンタには悪いけど、ついこの間まで人間の中じゃあ俺が世界最強だと思ってたから。 あの桐生辰一郎にも負ける気はしなかったんだけどなぁ……」


「ブライトか……。 確かに、彼は異質だな。 それでも、戦い方次第では可能性が無い訳でもないだろう……君なら」


「ん〜、なんかブラザーには絶対に手を出しちゃいけない気がしたんだよ。 ……殺しても殺し返されそうな?」


 フランキーは、リバイブ・ハンターの存在を知らないハズだ。 ただ、彼の第六感が、そう思わせたのだろう。



「……実に頼もしい仲間たちだよ。 人類は共通の敵を前にすれば、普段のいざこざを無視して力を合わせる事が出来る。 そして、我々が力を合わせれば、こんなにも強大な力を有する事が出来るのだ。 願わくば、この決戦が終わった後も、争いのない平和な世界でいてくれるのを願うばかりだ」


「それは多分難しいんじゃない? 人間は争いを繰り返す生き物だから。 何度同じ過ちを繰り返しても、すぐに忘れちゃうからな。 ……誰か導く者でもいれば変わるかもしれないけど、そんな人間いやしねーからなぁ」


「……悲しいな。 悲しいが、それが人の真理なのかもしれない……悔しいがな。 ……だが!」


 ヒクスンが一際強いオーラを身に纏う。


「人は信じる気持ちを失わない。 私はそれに賭けよう」



 ヒクスンは、ギフトにより一○倍に身体能力が上昇しているが、それだけでは凡庸の戦士でしかない。

 あの鬼島がそうだった様に、結局物を言うのは元の身体能力、そして格闘技術だ。


 地上にて、黒炎のブレスで猛威を奮うブラックドラゴンの懐に潜り込み、ヒクスンのオリジナル格闘術・グレースィー柔術で、あっという間に大木の様な腕をへし折ってみせた。



 精鋭部隊が参戦した事で、前衛部隊と主力部隊もそれぞれの相手に専念する事が出来た。



 そして、戦闘開始から四○分……前衛·主力部隊から僅かな死者を出したものの、遂に一○体の竜種を全て殲滅。 ゲートからも、新たなフェノムが出現しなくなった……。



「……まさか、これで終わりじゃないよな?」


 一人で計五体の竜種を殲滅して尚、息一つ切らしていない光輝は、じっとゲートを見つめる。



 それぞれ竜種を倒した精鋭部隊も一箇所に集まり、ゲートの動向を見守っていた。


「フェノムの出現は止まったが、まだゲートは消えてない。 いよいよか……」


 戦闘要員ではないものの、自らも戦闘服に身を包んだジョシュアが、険しい表情で渦を見つめる。


「そうでしょうね。 ブライトが予想以上に良くやってくれたのもありますが、この程度で済むのならハルマゲドンとは言わない」


 ヒクスンも、まだ戦いが終わっていないと確信ていた。


「さ〜て、アンノウンが出るか、はたまた別の脅威が姿を現すのか……」


 フランキーが、次に備えてスタミナチャージドリンクを飲んだ。 必ず現れるだろう凶大な敵に備えて。



 精鋭部隊のすぐ傍には、瑠美、カズール、薫子も、戦闘を終えて集まっていた。


「……ここからだよね?」


「だろうな。 個人的には、ここで終わっててほしいがな」


 ここまでは予定通り。 いよいよ、最終決戦だと気を引き締める二人に反して、薫子は不安そうにカズールを見上げる。


「……私、足手まといじゃないですか?」


「そんな事ないさ。 薫子も立派に戦ってたじゃないか。 だが、これからの相手は、正直薫子では厳しいだろう。 だから、薫子のギフトの中でも最も防御力の高い能力で身を守りながら、俺から少しだけ離れた場所で回避行動に専念していてくれ」


 薫子の身を案じるのならば、本来はこの場を離れさせた方が良いだろう。 だが、カズールは薫子に自分の目の届く範囲にいる事を指示する。


 ……それには、カズールの思惑があったからなのだが。



 上空は、ゲートを中心に暴風が発生。 それに伴い、激しい稲光が空を走る。


 そして、光輝もまた、瑠美たちの下へと降り立った。


「ゲートの状況が変わった。 遂に来るな……」


 次の瞬間、渦が眩い光に包まれる。 そしてそこからは……マネキンの様な……真っ白な身体の人型が三体、舞い降りて来た。


 三体の人型フェノムからは、明らかにこれまでのフェノムとは異質の、比べ物にならない位の強大なオーラが溢れ出ている。 そのあまりもの威圧感に、精鋭部隊の誰もが言葉を失ってしまった。



「ジョシュアさん、あれがアンノウンですか!?」


 一人、冷静さを維持していた光輝が、ジョシュアに問い掛ける。 この場でアンノウンの姿を実際に見た事があるのはジョシュアだけだから。


「……そ、そうだ。 いや、確かに似てるが、昔のアンノウンはもっと強大だった。 だが……やや劣るとはいえ、三体も……」


 第一次ハルマゲドンでのアンノウンには劣る……。 それでも、その差は極僅かなのに、三体も現れたのだ。

 光輝はジョシュアの表情から、今の状況が過去の最終決戦以上の、厳しい状況なのかもしれないと悟る。



「会長はキャンプにお下がりを。 ここからは、お守りする自信はありませんから」


 ヒクスンがジョシュアにキャンプへの退避を促す。 戦闘系ギフト能力者では無いジョシュアは、この場にいても出来る事は少ないのだ。


「……うむ。 後は頼んだぞ、ヒクスン」


 だが、戦えなくともジョシュアには役割がある。 なので、大人しく少し離れたキャンプで待機する道を選んだ。



「やれやれだな……。 だが、やるしかない」


 地面に降り立った三体に対し、光輝は戦闘態勢に入る。


「おまえらは、アンノウン……でいいのか?」


 三体は互いを見合った後、代表して真ん中の人型が口を開いた……。


「我々ハ“アンノウン·スプリット”ダ。 “リアル”ハ、モウ一方ニ降リ立ッタ……」


 三体は、自らをアンノウン·スプリットだと言い、ギリシャの方にも別のアンノウンがいると言った。


 ギリシャにもアンノウンが現れると知り、風香が心配になったが、すぐに思い直す。

 向こうにもヨーロッパのトップスペシャリストたちが集結しているのだし、黒夢のナンバーズも、元フィルズも、そして恐らく自分と互角かもしれない国防軍の比呂もいるのだ。


 そして、なによりも風香からは、別れの時に強い決意を感じた。 だからこそ、光輝は風香を信じ、連れて来なかったのだから。



「昔のより劣るとはいえ、三体か……。 確かに難しい状況だが、こっちも負けるつもりはない。 俺が一体を相手するから、残りは……」


 流石に光輝も一人で三体を相手にするのは効率が悪いと考え、精鋭部隊の方を振り返る……。 だがそこには、三体のスプリットに圧倒され、動けないでいる精鋭部隊がいた……。


「……どうした? 最後の敵だぞ!?」


 光輝の声に、誰もが反応出来ない。 自分では……自分たちでは、絶対に三体のうち一体にも勝てないと本能が悟ってしまったから。



「…………だよな」


 光輝はすぐに諦めた。 元々、アンノウンを相手に出来るのは、自分と比呂くらいだろうと、心のどこかで思っていたのかもしれない。


(……となると、初代より少し弱いとはいえ、三体は厄介だな。 これなら強くて一体の方が良かった)


 既に光輝の意識は三体のスプリットへ。 今こそ、桐生の遺言を守る時だと、覚悟を決める。



「愚カナ害虫ドモヨ……大人シク滅ビヨ」


 抑揚の無い声色で放たれた言葉に、光輝以外のその場にいた者全員の背筋が凍る。 自分たちは、こんな化物と戦うつもりでいたのかと。


「害虫か……。 でも、そんな害虫を生んだのは、この星自身だろ? 親だったら最後まで子の面倒を見やがれ」


「親ダカラコソ、躾ケルノダ。 ソノ為ニ、我々ガイルノダ」


「どこまで行っても、俺たちとおまえらは分かり合えないんだろ? だったら、とっととケリを着けようぜ」


 光輝と三体のスプリットから、同時に凶悪なオーラが解き放たれる。



(俺は俺で、目の前の敵を倒すだけ……。 なんなら、とっととこいつら倒して、向こうの本体も倒せばいい)


「我が名はブライト……。 貴様らを倒し、人類を救う者だ!!」

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