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第135話 星の意志

※連載再開に伴い、131話~134話までを大幅に修正しています。まだ読んでない方はの方はそちらから読んでいただかないと、話が繋がらないので、ご一読を御願い致します。

 アンノウンとの最終決戦、ハルマゲドン。


 人類最強の敵に対峙したのは、当時の世界最強の三人。 鬼島、桐生、エルビン。


 そして、決戦の場から少し離れた場所で、映像と音声を傍受しながら見守っていたのが財前とジョシュアだった。



 戦いは熾烈を極めた。 編成として、桐生はタンク役。 鬼島は前衛の攻撃役。 エルビンは後衛でワールド·マスターのギフトを駆使したサポート役。 最強の鉾と盾に万能の補助と、まさに歴史上最強と言える三人編成の部隊だったが、それでもアンノウンは単体で互角に渡り合った。


 そして、最後の攻防。 桐生は死を覚悟した特攻でアンノウンの動きを止め、その隙に全てを懸けた鬼島の攻撃でアンノウンに致命傷を与えた……かに見えたが、アンノウンは最期の力を残していた。 それは、自爆。 観測されたその強大なオーラから、決戦の地となった北海道を越えて、被害範囲は日本本土のみならずユーラシア大陸の半分を壊滅させる程の威力を伴う衝撃だっただろうとジョシュアは語った。


 それを、文字通り命を懸けて封印したのが、エルビンだったのだ。



「兄は命と引き換えに、アンノウンを封じ込めた。 だが、アンノウンは最期に我々人類にメッセージを残したのだ」


「メッセージ……それも、公表されてませんよね?」


「ああ。 これは、私たち四人の独断で、公表するのを避けたのだ」



 アンノウンは最期にこう言った。


 ”私たちは、星の意志で生まれた存在だ。 人間が愚かな過ちを繰り返す限り、私たちは生まれ続ける。 そして、致命的なまでにバランスが崩れた時に、私もまた復活する”



「星の意志……。 つまり、人類は地球にとって害虫であり、アンノウンやフェノムはその害虫を駆除する為に地球が創り出した存在……って事か?」


 カズールが自分なりに要約する。 勿論、人類の一人として納得はしていなかったが。


「アンノウンの言葉を額面通りに解釈すればそうだ。 だからこそ、我々はその事実を公表するのを避けた。 人類そのものがこの地球に拒まれてるなんて事実は、知らせる訳にはいかないと」



「……なるほど、だからボスは、世界を変えようとしたのか」


 争いのない、平等な世界。 それは桐生の悲願でもあった。 だが、桐生がその為に用いた手法もまた、争いを生んだ。


「……桐生と財前は本来、この事実を公表すべきだと訴えていた。 だが、人類の存在意義を全否定する情報は、当時のフェノムとの争いに疲弊していた人類にとってあまりに危険だと、私と鬼島が説得したんだ」


「なんでよ? 例えその情報を知ったなら、人類は悔い改めて争いのない平和な世界を築いていたかもしれないじゃない!」


「本当にそう思うかね? 軍への入隊を拒否しただけで理不尽にも殺されそうになった君なら、人間の本質を知ってるハズだろう?」


「なんでそれを……」


 ジョシュアは、瑠美の素性さえも調べ上げていた。


「例え、真実を知って悔い改めようと声を上げる人間の方が多くとも、世界を円滑にまわしているのは、そんなものには目もくれず、己の欲望に忠実な権力者達だ」


 無能力者ではなく純血人種として能力者を差別し抑制する国のトップ。 そのトップに、桐生は戦いを挑んでいた。


「……だったら、ボスもハルマゲドンの英雄として、軍の中枢から世界を変える道もあったんじゃないのかな?」


「我々は桐生と財前を説得する際、一つの条件を出した。 三年……三年経ったその時に、この事実を公表するかどうかを再び四人で決めようと。 三年の間で、人類が平和や平等な世界への道を進むのなら、改めてアンノウンの真実を打ち明けても大丈夫だろうと。 だが、承知の通り、人類は我々ギフト能力者を差別し、争いの道具とした。 鬼島さんや私は、既にスペシャリストの中心として国の中枢にも関わっていたが、それが逆に足枷となってしまった。 もし、能力者達が反旗を翻しても、一部の超越した能力者以外は、人類の化学兵器に太刀打ち出来ないと知っていたから。 ある意味、人質を取られたみたいなものだな」


 それから二○年。 状況は大きく変わり、多くの国で能力者達も国の中枢に参画する様になった。

 日本でも、現在は能力者と無能力者はフェノムという同じ危機に向かって手を結んでいる。 だが、それを実現する為に二○年も費やしたのだ。


「桐生は、はじめからそれを予想していたのだろう。 だから自分の功績を全て鬼島さんに擦り付けた。 英雄が突然フィルズになるよりは、はじめから何も持たない者がフィルズとなった方が、世間にいらぬ混乱を招かないと考えたのだろう。 決戦から三年後、桐生は迷う事なく軍を除隊したのだ」



 ここで、ジョシュアは立ち上がり、天を仰いだ。


「誰よりも平等で平和な世界を夢見て、誰よりも多くの血と涙を流したのが桐生辰一郎という男だった。 なのに……決戦を前に力尽きるとは……」


 そして、涙を流しながら、光輝を睨んだ。 これまでの温和な雰囲気からは想像出来ない程、怒りに満ちた表情で。


「全て桐生が望んだ事だとは承知している。 だがね、私は今この瞬間にも、君を殺してやりたいくらい憎い!」


 その言葉は、光輝の胸を鋭く抉った。 自分自身でも、まだ桐生の代わりに生き残ってしまった事に納得していなかったから。 それでも、桐生の遺した言葉だけを実行する為だけに、今も堪えて生きているのだから。



 そんなジョシュアに、カズールが反発する。


「勝手な事を言うな! 桐生の件で誰よりも悩み、苦しんでいるのは当事者である兄弟だ! 兄弟もまた、己の命よりも桐生を守りたいと思ってたんだぞ? いくら英雄の弟で、スペシャリスト協会会長でも、何も知らないで批判するのは許さんぞ!」


 カズールは同じリバイブ·ハンターの能力者として、自我を失っていく恐怖を身を以て知っている。 光輝がその恐怖に耐えながらも、自分よりも桐生を優先していた事も。


 そんなカズールからは、ジョシュアに対する明確な殺気が向けられた。 その殺気に反応したスカルとジョーカーが、ジョシュアを守る様に立ちはだかる。


「……分かってるさ。 だからこそ、せめて桐生の最後の望みを叶えてあげたいのだ。 君がアンノウンを倒し、世界を……人類を救うという願いをね」


 ジョシュアはすぐに表情を整える。 だが、今見せた表情と言動は、紛れもない彼の本音だった。


 カズールにとって光輝が家族の様な存在であると同様、ジョシュアにとっても桐生は同じ死線を潜り抜け、苦楽を共にした家族以上の存在だったのだろう。



「改めてお願いする。 全人類の為、そして、志半ばで散った桐生の為、アンノウンを倒してくれ」


 言われるまでもなく、光輝もアンノウンを倒す事だけを生き甲斐にしていた。 それでも、改めてハルマゲドンの当事者でもあるジョシュアからのその言葉は、光輝の背負った十字架をより重くさせた。


「……俺は最初から、誰になんと言われようと、アンノウンを倒すつもりです。 アンノウンを倒すのがもし自分以外の誰かだったとしても、それを全力でサポートする準備は出来てるから」


「そうか……。 ゲートが拡張し、中から大量のフェノムが出現するであろう時期は、観測では半月後と予想されている。 少なくとも半月以内には、テキサス州ヒューストンの旧宇宙センターが待機施設のキャンプになっているから、そこに集まってくれ」



 準備も覚悟も、既に出来ている。 これ以上自身のレベルアップが見込めない現状、すぐにでもヒューストンへ向かっても良かったのだが……。


「あ……それと、気が向いたらで良いんだが、一度日本へ帰り、財前の元を訪れてみたまえ。 最終決戦に向けて、君達にとっても興味深い研究を行っているから」


「興味深い研究? 君達って……俺と、カズール?」


「ああ。 ドイツからその筋の第一人者を迎え、君達のギフトであるリバイブ·ハンターを数名誕生させたと報告があったのだ」

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― 新着の感想 ―
[良い点] 活動報告を見て待っておりました! たとえどんな結末であろうと最後まで見届けます!!
[一言] 更新通知きて、え?なんだっけこれとすでに忘れさっていたが・・・再開とな そしてどうせ書籍宣伝で1話限りだろーとおもったら宣伝もないとな ど・・・どうせ期待しても次の更新半年後でしょ、知ってる…
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