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第13話 初めての発現者

 学校に着くと、いきなり一緒に登校して来た光輝と風香に視線が集まったが、次の瞬間、クラスメート達は更に驚く事となった。


「おはよう!」


 あの光輝が、大きな声で挨拶をしたのである。


 高校に入ってからの光輝は、ギフトが発現しなかった憤りと諦めから、常に無気力な雰囲気を漂わせていた。そんな光輝が、爽やかな笑顔で挨拶をする事など、今まででは考えられなかったのだ。



 二人は席が隣同士なので、席に着いてからも楽しそうに会話をしている。それを、他のクラスメート達は不思議そうに見ているしかなかった。



「おっはよーエブリバデ!…ん?」


 そんな空気を打破するかの様に、いつも通り底抜けに明るく教室に入って来た崇彦も、その光景に違和感を覚える。


「おいおいおい~!二人とも随分仲良いじゃない?もしかして、付き合ってるとか??」


 崇彦がおちゃらけた風に二人をからかうと、風香は顔を真っ赤にして慌てる。


「そそ、そそそそんな事、ある訳無いじゃないですか!?」


「…………その反応、肯定と考えて良いのかな?なあ、光輝?」


「ん?そんな訳あるかよ。まあ、水谷みたいな可愛い子だったら喜んでお付き合いしたいけどな」


「お!?お付き合い!?」


 風香は湯気が出る程顔を真っ赤にした後、ブツブツ言いながらフリーズしてしまった。



「…なあ光輝、お前、()()()()()()()?」


「ん?昨日色々あってな。俺も少しは前向きに生きてみようかなと心改めたんだ。」


 微笑みながら言った光輝を、崇彦はじっと見つめる。すると、()()()()()()()()()。そして…


「………なる…ほどね。……やっと立ち直ったか、親友よ!無能力がなんだってんだよなぁ!俺達は無能力でも楽しく生きて行けるってんだよな!」


 嬉しそうに光輝の肩を抱く崇彦を、光輝は意外に思っていた。


(今までは俺が心を閉ざしてたから気付かなかっただけで、崇彦って本当にイイ奴だったんだな)



「よーし!それじゃあ祝福の脇こちょだ!」


「わっ!テメェこの野郎!崇彦の分際で調子に乗んな!」


 そんな、二人のやり取りを、クラスの一部の女子は頬を赤らめながら見ていたのだった。




 ―昼。



「水谷、今日もお昼一緒に食わないか?」


「はい、いいですよ!良かったらまた私のお弁当半分こしましょう」


「いいな~。俺も混ぜろよ~……とは言わないぜ!俺はお前らカップルを全力で応援するって決めたからな!」


「カ、カカカカカ、カップルだなんて!?」


 あからさまに動揺する風香を他所に、光輝は冷静さを失わなかった。


「おいおい、あんまり水谷をからかうな。困ってんだろう」


「お!早くも彼女を庇う彼氏ってか!?ヒューヒュー、カッコいいね!だから…俺にも可愛い女の子紹介してくれぃ!!」


「出来るか。…あ、ダイナマイトバデーの子なら紹介出来るかも…」


「ダダ、ダイナマイトバデー!?…って、お前が紹介出来るダイナマイトバデーって……吉田じゃないよな!?」


「………さ、中庭に行こうか、水谷」


「え?あ、はい」


「ちょっと待て!吉田じゃ…吉田じゃ無いよな!?」




 崇彦を放置して裏庭にやって来た二人は、昨日と同じベンチに座って仲良く昼食を取った。




 そして、時間は過ぎ…放課後を迎えた。



「光輝~一緒に帰ろうぜ~。それとも、彼女と一緒に下校かい?」


 光輝と同じ帰宅部の崇彦が光輝の席にやって来る。


「だ、だから、彼女じゃあ…ゴニョゴニョ…」


「悪いけど、今日は用事があるんだよ」


「ん?帰宅部のエース・周防光輝が放課後に用事があるだと?気になるな~」


「ちょっと図書室で調べ物だ。じゃ、また明日な!」



 崇彦と風香に別れを告げ、光輝は図書室へとやって来た。


 目的は、自分のギフト能力の確認。


 無数の本の中から、過去から現在まで公表されているギフト能力全てが載っている“ギフト大全”と云う本を読み始める。



「まずは…」


『スピード・スター』

 ギフトランクA-の加速系ギフト。過去に6人が発現。

 文字通り、動きが速くなる能力。最高速度や初速は能力者の身体能力やギフト熟練度で変わる。

 問題点は、速度は上がるが、身体の耐久力が強化される訳では無い為、接触に脆く、また燃費の悪い能力とも言える。

 上位互換:スピード・キング、フラッシュ等

 下位互換:スピード・アップ、ハイ・アクセル等


(…確かに、体力もメチャクチャ消耗するし、ぶん殴った手が拳から肘まで粉々だったもんな)



『インビジブル・スラッシュ』

 ギフトランクA+の斬撃系ギフト。過去に5人が発現。

 目視して狙いを定めた空間に、手を振り下ろす等の動作を行う事により斬撃を出現させる能力。効果範囲や威力は身体能力やギフト熟練度で変わるが、発動出来る間隔が短く、連続で放てる為戦闘では非常に強力。また、振り下ろす動作に武器を用いる事で威力が上がるとも言われている。

 上位互換:無し

 下位互換:ソニック・スラッシュ、フォース・ソード等


(…斬撃を飛ばすのでは無く、出現させるのか…。確かに、いつ斬られたのか分からなかったもんな。障害物も無視するのかな…今度試してみよう)



 そして、『リバイブ・ハンター』だが、ギフト大全のどこを調べても載っていなかった。


(どういう事だよ?まさか、俺が初めての発現者だってのか?)



 ギフト能力の初めての発現者。それは歴史的に見ても大発見だ。しかも、死んでも蘇った上に、殺された際にその能力を習得すると云うチート能力なのだ。おそらく、ギフトランクにすれば最高位のS+に匹敵するだろう。


 もし、光輝がリバイブ・ハンターの能力者だと知られれば、国防軍入りは確実。むしろ、入隊時からかなりの厚待遇が期待出来たかもしれない。

 ただ、あまりにもチート能力過ぎて、良い様に利用される可能性も無くは無い。


(…だよな。なんせ、文献にも載ってない、超強力なギフトだもんな。…それに、もう国防軍は信用ならないし)


 国防軍入りは、ヒーローになりたいと云う光輝の長年の夢の為には必須事項だった。だが、先日の一件で、光輝は国防軍の隊員に有無を言わずに殺されたのだ。


 光輝を殺した張本人の冴嶋中尉は、正義を行うよりも戦いを楽しむ様な戦闘狂だし、比呂と柏倉の話を聞く限り、組織としてろくなもんじゃないと知ってしまった。


 そんな光輝にとって、国防軍は最早憧れの組織ではなく、むしろ敵対組織の認識だった。


(実際、あの糞野郎と冴嶋って奴は絶対に許さないからな。そう考えると国防軍は敵だな…)



 スピード・スターとインビジブル・スラッシュは両方ギフトランクA-以上の強力な能力だ。この二つを習得してる時点で、現段階の比呂程度なら楽に勝てるだろう。


 だが、冴嶋中尉に関しては微妙な所だと考える。お互い同じ能力を有するが、その能力の熟練度は天と地程に違うだろうからだ。


 熟練度が違えば、例えばインビジブル・スラッシュなら、効果範囲に差が出る。

 実験した所、光輝は現状、半径3メートルにしか斬撃を発生させる事出来ないが、光輝が真っ二つにされた時、冴嶋は10メートル程離れた場所にいた。これだけで光輝と冴嶋のレベルの差は歴然。更に、今の光輝のインビジブル・スラッシュでは、人体を綺麗に両断する事は出来ないが、冴嶋は斬られた光輝が気付かない程鮮やかに両断せしめた。



(折角手に入れたリバイブ・ハンターだ。冴嶋クラスにも確実に勝てる様になるまで、色んなギフト能力を習得したい所なんだけど…安易に考える訳にはいかないよなぁ)


 ギフト能力の習得条件はリバイブ・ハンターの発動…つまり、一度殺されなければならないのだ。


 光輝は死ぬという感覚を二度経験したが、あれは何度体験しても慣れる物では無い。

 痛みや苦しみは想像を絶するし、何より意識が遠退いて行く時の感覚は、何度も経験すれば精神に異常を来すかもしれない。


(…それでも、制約が無いんなら…それで強くなれるなら何度でも死んでやる。何度でも…)


 そして、蘇った後のあの感覚…。激しい怒り…殺意は、特に自分を殺した相手に強く向けられ、正常な判断を損なわせる危険性も含んでいる。


(…とばっちりで死体処理班を殺しちゃったけど…冷静になって考えると可哀想な事をした。なにも殺さなくても良かったのに、あの時は殺す以外の選択肢が頭に無かった気がした…)


 死体処理班を殺した罪悪感は抱いている。だが、光輝の比呂と冴嶋に対する復讐心は強い。人を殺した罪悪感を霧散する程に。


 そしてそれ以上に、リバイブ・ハンターに目覚めた能力者として高みに昇りたい意識が芽生えていたのだ。



(必ず…俺はこの能力で強くなる!)

ステータスオープン!って文化…あったらやっぱり楽ですね(苦笑)

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― 新着の感想 ―
殺意の高さからして、リバイブのデメリットとして、復活後は時間制限で誰かをやらなければ死ぬとかありそう。
[良い点] 主人公キモイかなぁ?物語冒頭の頃の方が内面とヒーローに憧れてる点が噛み合ってる様に思えず歪で気味悪く感じたのに対し、今ってある意味正直に生きてる感あるのが良いと思います。 なろうで流行りの…
[一言] 主人公がキモくなった…
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