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第120話 協力者

※大幅に加筆しました!

 ――半年前



「これは……どういう事ですか? ボス……」


 中央エリア、人気の無い工場跡。 そこで、驚きの声を洩らすブライトの目の前には、国防軍大将・財前敏昭が立っていた。


「はじめまして。 ブライト……それとも、周防光輝君と呼んだ方が良いかな?」


 財前はブライトに向かって微笑みながら軽い会釈をする。



 空港から桐生に連れられてやって来たブライトは、桐生から与えられる今回の任務が、ある意味特殊な……そして重要な任務である事を覚悟していた。 そしてそれを、黒夢での最後の仕事と決め、気を引き締めていたのだ。


 例えどんな任務でも、冷静に、完璧にこなしてみせると。



 だが、目の前にいる相手は敵……しかも、フィルズにとってはラスボスとも云うべき存在なのだ。違和感を抱かずにはいられなかった。



「ボス、これは?」


「以前から国防軍側に俺の協力者がいることは知っていただろうが、それがこの財前だ。 まあ、驚くのも無理は無いが、俺の協力者なんだから、軍でもそれなりの地位にいなければメリットが少ないだろう?」


 財前と桐生。 この二人の縁は、桐生が国防軍在籍中……というより、入隊した時から始まる。


 同期入隊にして、どちらも有能なギフトを所持していたことから、軍の中でもメキメキと頭角を現し、周りは二人を良きライバル関係だと認知していたが、当の本人達は違った。

 桐生は戦闘よりも頭脳に秀でた財前を軟弱な奴だと見下していたし、財前は戦闘特化型の桐生を脳筋だと馬鹿にしていた。お互いがお互いを目の上のタンコブとして邪魔な存在だと考えていたのだ。


 その考えが変わった出来事こそ、フェノムとの最終決戦であった。


 財前は頭脳だけでなく戦闘力でも貢献したし、桐生はアンノウンとの最終決戦のメンバーだったほど突き抜けた戦闘力を持ちつつ、頭脳の面でも明晰だったのを、お互いが知ったのだ。同じ死地を潜り抜けた同志として、二人の絆は強く結ばれたのだった。


 そして、最終決戦後の、ギフト能力者に対する国の方針に対し、二人の意見が完全に合致したのだ。


 能力者の地位向上。 その為に、二人の戦いが始まった。


 財前は表から国防軍のし上がり、目的に対して邪魔な能力者の排除と、着々と能力者に対して好意的な思想を持つ無能力者を増やしていった。


 桐生は裏から、排除されそうな能力者を味方に引き込み、能力者たちの救世主として地位を確立していった。


 そして漸く、全ての準備が整った。



 全てを聞いたブライトは、驚きはしたものの、取り乱す事もなく受け入れた。


 リバイブ·ハンターの弊害による感情の欠如は、着々とブライトの心を蝕んでいたからかもしれないが。



「なるほど、御二人の関係は分かりました。 それで、俺は何をすれば?」


 財前としては平静を崩さないブライトが予想外だったのか、少しだけ苦笑いを浮かべる。


「なんだか、随分落ち着いてるんだな。 流石は黒夢ナンバーズのナンバー1といった所か。」


 その疑問に桐生が答える。


「立場は人を作るからな。 さて、本題に入ろう。 現在、陽炎と黒夢の抗争が勃発し、国防軍も鎮圧に動いている。 そして国もこの緊急事態を受け、首相をはじめ国のトップ達が一箇所に集まっている。 おまえには、ここを叩いてもらう」


 国家転覆を狙うクーデター。 国のトップを始末すれば、ブライトは間違いなく世界的犯罪者として認知されるだろう。 勿論、正体がバレればだが…。


「内通者の手引は完了しているし、おまえのサイレント·ステルスがあれば正体がバレる事も無いだろう。 おまえなら楽な仕事だ」


 ブライトのギフトの一つ、サイレント·ステルスは、姿も音も完全に消す事が出来る。 その存在に気付く事が出来る者など、超一流のギフト能力者にしか不可能だし、サーモカメラなども内通者によって切られている。


 つまり、ブライトにとっては非常に楽な仕事だった。 ……ただ、なんの力も無い無能力者をその手にかける事に躊躇が無ければだが。



「ふむ、どうやら君には甘さは無いらしい。 流石は、桐生が自分の後継者に見込んだ男だ」


 財前の言うとおり、今のブライトにとって、目的を成すためなら、無能力者の暗殺にも一切の躊躇が無かった。


「了解です。 それじゃあ早速、任務に向かいます」


「ああ。 これが片付けば、いよいよ俺たちの宿願が達成される。 だが、本当の戦いはそれからだ。 平等になった世界において、如何に俺たちギフト能力者が重要な存在だったかを知らしめる。 そして、その先頭に立つのはおまえだ、ブライト」


 桐生がブライトの肩に手を置く。 その手から伝わる自分への確かな信頼感が、尚更ブライトの心を締め付けた。


 こんなにも自分を信頼してくれている桐生を、今この瞬間にでも、殺したくて仕方がなかったのだから……。



「……それじゃあ行ってきます。 任務が終わったら……少しだけ野暮用があるので、しばらく休暇をもらいます」


「休暇? おまえにしては珍しいな……まあいい。 だが、連絡だけは繋がる様にしておけ」


「……はい」


 それだけ言うと、ブライトは任務に向かうため、その場を後にした。



 残された桐生と財前は、待ち兼ねたその日がいよいよ近付いている事に、感慨深い心境になっていた。


「ブライトか……。 まさか、本当にあんな規格外な奴が現れるとはな」


「卑弥呼の予言から三年だ。 救世主を探し求め、初めてアイツに会った時、もしかしてと思っていたが……これでアンノウン復活に向けての大きな戦力を手に入れる事が出来た」


 桐生と財前の第一の目的は、ハルマゲドン後に本来築かれるはずだった平等な世界を取り戻す事。


 そして第二の目的は、平等な世界を取り戻した後、来るべきアンノウン復活に向けての準備を進める事。


 最後に三つ目は、今度こそアンノウンを完全に仕留める事だった。



「俺たちが死力を尽くし、あのエルビンがその命を懸けてもアンノウンを一時的に封印する事しか出来なかった。 今度こそ、アンノウンを完全に仕留める! その為には、ブライトの力は必要不可欠だ」


「対峙した者だけが、アンノウンの恐ろしさを知っているか。 それはもうおまえと鬼島さんの二人だけだし、鬼島さんはもう衰えたが、後継者としてエルビンと同じギフトを持つ真田を鍛えている。 だが、どんなにその二人が強くても、最後はおまえの経験が絶対に必要になる」


 財前の言葉に、桐生は何も答えなかった。


 それは……自分に残された時間が、もう僅かだと知っていたからだ。


(まだだ。 まだ死ねない。 せめて、俺がいなくても安心できるくらい、後継者たちを成長させるまでは……)



 ……その後、ブライトは姿を消す事になる。


 そして、桐生はなぜブライトが姿を消したのかを知り、命を懸けた最期の行動に出る事になるのだが、そんな事はこの時は誰も予想してなかった……。





なんとか年内中に一話…という事で、急ぎで投稿しました。あとで補足修正するかも。


では、皆様良いお年を!



※いよいよ2月14日から更新再開します。


今回は10話ほど毎日更新しますので、お楽しみに!

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