表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
119/200

第110話 永遠の相棒

※書籍版『漆黒のダークヒーロー………』が、一迅社様より発売中です!まだの方は是非読んでみてください!

「……後悔しねーんだな?」


「ああ? なんの後悔だよ?」


 クロウは感情を押し殺し、唇を噛みしめ言葉を振り絞った。


「ここで死ぬ後悔だよ、馬鹿野郎!」


 ゴリンダマンを包囲していた盾が、一斉に中心にいるゴリンダマンに集約される。


「グオッ!?」


 透明な盾による全方向からの激突の衝撃。更には、そのまま圧し潰されそうな圧力に、ゴリンダマンは身動きが取れなくなった。


 クロウの姉であるキララは、クロウのギフトは防御特化で、攻撃面ではブライトクラスの実力者には通用しないと断言していたが、それはあくまでブライトや桐生、ナンバーズクラスの超一流を指しての言葉であり、それ以外には充分強力な攻撃手段となるのだ。



「ぐぎぎぎっ……不公平だよなぁ。俺とテメーは同時期にギフトが発現した。なのに、俺のギフトはしょっぺーのに、テメーのはこんなにも強力なんだから。そりゃあナンバーズにも選ばれらぁな」


「俺は、オメーのギフトは嫌いじゃねーのに、テメーが勝手にハズレギフトだと思ってんだろうが! 俺は、オメーのことを一生の相棒だと信頼していたんだぜ? ギフトが上とか下とか、考えたこともなかったよ!」


 内蔵を圧迫され、ゴリンダマンが血反吐を吐く。それでも、喋るのを止めなかった。


「そ、そういう所だよ、テメーのムカつく所は。テメーの考え方は、結局持たされた者が持たされなかった者に対する哀れみでしかねー……あがっ!?」


 突然、ゴリンダマンがくぐもった悲鳴をあげる。なんらかの衝撃を受けたであろう様子だが次の瞬間、盾の圧迫を力で跳ね返した。



「……!?」


 これにはクロウも驚きを隠せなかった。ゴリンダマンの力では、自分のギフトから逃れられないことを知っていたから。それと同時に、そう思っていた自分に気付き、ゴリンダマンを知らないうちに下に見ていたのかもしれないと気付く。


「グガガッ……貴様、何しやがった……神戸ぇっ!?」


 神戸は上から飛び降りてきて、華麗に着地を決めた。


「いや~、このまま死なせるには勿体ないと思ってね。ここからは僕がゴリ君を操作してあげるよ。僕の方が脳筋の君より、君の扱いが巧いかもよ?」


 神戸のギフト、【フォース・パペッター】はランクB+の能力。対象を意のままに操ることができ、その上対象の身体能力を強制的に数倍にする。



 突然の神戸の登場に、クロウも驚いていた。


「なっ、オメーは確か、陽炎の四天王?」


「そうです。陽炎の四天王が一人、神戸と申します。以後お見知りおきを」


「以後お見知りおきだあ? オメーを生かしておくと思ってんのかコラッ!」


 神戸に襲い掛かるクロウだったが、横から飛び出してきたゴリンダマンにタックルを受けて吹っ飛ばされてしまった。


 だが、ゴリンダマンの表情は苦悶に満ちている。


「ぐぎぎぎっ……神戸……テメェ、俺を操ってやがんのか?」


「そうですよ? あ、どう? 僕のギフト、普段よりパワーが漲るでしょ?」


 自分の意思とは関係なく動く身体に、ゴリンダマンは必死で抗おうとするも、指先一つまともに動かす事は出来なかった。


「ハハハハッ。悪いけど、僕がギフトを解除するか、ゴリ君の肉体が壊れるまで、君の意思が身体に伝わることは無いよ」



 突然、神戸の前にクロウが放った盾が現れる……が、またも操られたゴリンダマンが間に入り、強烈な拳で盾を押し退けた。


「俺の盾を……確かにパワーアップしてやがるな。おいゴリ、なんとかできねーのかよ!?」


「ぐっ……無理だ! まるで、頭と身体が別々になっちまったみてーだ! ぐわっ!?」


 ゴリンダマンの意思を無視し、その身体がクロウに向かって突進する。


「マジかよ……インビジブル・シールド!」


 進行方向に盾を出現させる……が、その盾を、ゴリンダマンは容易く弾き飛ばし、そのままクロウの腹に爆弾のようなパンチをめり込ませた。


「ごはぁっ!? オ、オメー、パワーアッ……プ、し過ぎじゃねーか!?」


 ゴリンダマンに代わって神戸が答える。


「どうだい? これが僕のギフトさ。それにしても、ナンバーズ相手にこれだけ圧倒出来るとは思わなかったよ。ゴリ君、実はポテンシャル高かったんじゃない?」


「う……るせえんだよ、この、インテリ眼鏡が……。テメエは、どうせ自分一人じゃ戦えねえ……ヒョロガリだろう、ががっ!?」


 ゴリンダマンが自分の身体に逆らえず、自分の顔面を殴る。


「失敬だな。僕はヒョロガリじゃなく細マッチョなんだよ。僕からしてみれば、君の方こそ筋肉付け過ぎの醜いゴリマッチョじゃないか」


「オイ、ゴリ! なんとかなんねーのかよ!?」


「でき……るなら、やってる!!」


「アハハハッ。さっきも言っただろう? 一度僕のギフトが発動したら僕の意思以外では解けないから……死ぬまでね。さ、早く旧友に引導を渡してあげなよ!」


「ぐ……あああっ!」


 ゴリンダマンのパンチを、盾で防ぐ。が、その盾に一撃でヒビが入る。


「オメー、ホントにパワーアップし過ぎじゃねーか!」


 その後もゴリンダマンの攻撃が続く。その度、盾を破壊されても新たに出現させる。



(このヒョロガリのギフト、対象の力を上げ過ぎだろ?)


「オラアアアアアアアッ!」


 ゴリンダマンの強烈な廻し蹴りに、これまでは数発は絶えていたクロウの盾が一発で破壊される。


「しまった!?」


 考え事をしていた上に、まさか一撃で盾が破壊されると思っていなかったクロウは、次の盾を出現させるタイミングが一瞬遅れた。


「隙ありいいいいいっ!!」


「ぎっ!?」


 豪快なメガトンパンチが、クロウの側頭部を捉える。その衝撃でクロウは吹っ飛ばされ、空中で三回転しながら観客席に吹っ飛んだ。



「ひゅう~! 凄いよ! こりゃあナンバーズを倒すんじゃないの!?」


 興奮する神戸。だが、ゴリンダマンは倒れているクロウをジッと見つめている……笑みを浮かべながら。


 クロウは……起き上がりながら、ゴリンダマンの異変に気が付いていた。


「オメー、いつからだ? いつから、自分の意思で動いてた?」


 その言葉に、神戸は不思議そうな表情を浮かべ、ゴリンダマンは満面の笑みを浮かべた。


「バレたか……。クックック、他人の力を借りたからってのは癪だが、コイツは凄え。凄えパワーだぜ」


 神戸は目の前で繰り広げられる会話の意味が分からない。


「オイ……何を言ってるんだ? 自分の意思で? そんな訳……ぶぶっ!?」


 神戸の顔面に、ゴリンダマンの裏拳がめり込み、そのまま意識を失った。


「ハッハッハッ! どうやら今の俺はテメエじゃ支配できないほどの力を手に入れたらしいぜ! お礼に裏拳一発で許してやる」


 ゴリンダマンは、己の力で神戸の支配を解いたのだ。


 神戸のギフト、フォース・パペッターは、自分の支配が遠く及ばない力を持つ相手は最初から支配できない。だが、相手が格上の場合でも、相手の精神状態によっては支配出来るのは、ヴァンデッダのギフトと同じ。

 だが、これまで支配下においた相手が自分の支配を超える事が無かったから、まさかゴリンダマンに支配を解かれるとは思ってなかったのだ。



「さて、せっかく手に入れた力だ。たっぷり味わってくれよ、元相棒」


「マジかよ……ちょっと待て」


 クロウの黒夢端末が鳴る。メールが届いた様だ。


「待てるかよっ!!」


 突進してくるゴリンダマンだが、クロウは全方位を二重の盾で覆う。その間に、メールを素早く確認した。


「なめんなコラッ!!」


 またも盾が破壊される。ここで、クロウは大きく距離をとった。


「喧嘩は止めだ。もうすぐここに、ジレンがやって来る。今なら間に合う、だから、俺と一緒に……」


 クロウはあくまでゴリンダマンと真剣に戦うつもりは無かった。だが、ゴリンダマンの方は……


「ふざけんなって言ってんだよ!! ようやく、ようやくテメーと互角に戦える力を手に入れたのに、いつまでも上から物言ってんじゃねえ!!」


 ……クロウも見た事が無い程に怒りの形相で叫んだ。



「分かってんだよ……。いつからか、どんどん俺たちの間には力の差が生まれたのを。おまえはどんどん認められ、終いにゃナンバーズにまで昇りつめやがった。それでもおまえは、俺を相棒として扱ってくれた。でもな……それが俺には屈辱だったんだ!」


「そんなこと、俺は……」


 クロウは否定しようとしたが、途中で言い淀む。ゴリンダマンが言った様に、自分は知らぬうちにゴリンダマンを下に見た事は無かったか? 無かったと思いたいが、どんなに自分がナンバーズになろうとも、ゴリンダマンを相棒として大事に思ってた。それこそが、ゴリンダマンを下に見ていた証拠ではないかと思ってしまったから。



「この力はドーピングみてーなもんだ。ヒョロガリが意識を取り戻せば失われるだろう。だから……この力がある内に、テメーに俺の力を認めさせてやる!」


「……はあ。分かったよ……。だったら、とことんオメーの喧嘩、買ってやんよ!」


 覚悟を決めたゴリンダマンと、その思いを受け止める決意をしたクロウは、自然と笑みを浮かべながら喧嘩を再開した。


 交錯する互いの攻撃。流石に一発一発の威力が格段に上がっているゴリンダマンの攻撃を真っ向から受けるわけにはいかないクロウは、巧みに攻撃を避けてはカウンターを合わせる。そして、そんなものお構いなしに突っ込んで来るゴリンダマン。


 いつしか二人の心には、出会った頃の、喧嘩ばかりしていた感覚が蘇っていた。



 しかし、そんな二人にとっての至福の時間は、唐突に終わりを迎える。


 突然、ゴリンダマンから力が奪われたのだ。


(グッ……、良い所で……意識を取り戻しやがったなヒョロガリ)


 だが、クロウはまだその事に気付いていない。


「オラアアッ! 止まってんじゃねえぞ!!」


 辺りを見渡したゴリンダマンは、神戸の姿がどこにも無い事に気が付く。そして、それがどういう展開に結び付くのかを想像した。


(あの根暗野郎……こういう時はせめて捨て台詞くらい吐いてからにしやがれ……)


 次の瞬間、スタジオ中に眩い光が溢れ、遅れて大きな爆発音が鳴り響いた……。




「間に合わなかったか……」


 爆弾が爆発したことで、瓦礫の山となったスタジオAに、ジレンが到着した。


(クロウのヤツ……まさか爆発に巻き込まれてないだろうな?)


 ジレンが瓦礫を眺めていると、瓦礫の一部が跳ね上がり、そこにはゴリンダマンを抱きかかえたクロウが立っていた。


「……ま、心配はしてなかったがな。ん? そいつはゴリンダマン? まさか、この場所の陽炎からの刺客はそいつだったのか?」


 ジレンも当然二人の関係を知っている。その上で、陽炎側としてこの場にゴリンダマンがいたのならば、情けをかける甘さはない。



 ……だがクロウは、抱き抱えていたゴリンダマンを寝かせると、取り乱したように叫び始めた。


「馬鹿野郎……なんで庇いやがった!? オイ、目を覚ませよコラアッ!」


 爆発の瞬間、ゴリンダマンはクロウに覆い被さり、クロウを爆発の衝撃から守った。

 今は敵のハズだったのに、長年相棒として過ごしたクロウを目の前にし、自然と身体が動いてしまった結果だった。


「……へっ、強え~方が弱え~方を守ってやんのは当然だろが……」


 憎まれ口を叩くゴリンダマンだったが、その出血量は致命的ともいえた。


「オイ……オイッ! こんなんで死ぬんじゃねえよ!?」


 気が付けば、クロウは大粒の涙を流して叫んだ。


「……らしくねえな。男に涙は禁物だって、昔から言ってただろが……恥ずかし~」


「もう喋んなよ……今、今すぐ本部の阿佐美さん所に連れてってやっから……」


 もう喋るのも辛くなってきたゴリンダマンは、クロウの胸に掌を重ねる。すると、その掌が光り、クロウの精神を安定させた。


「えらく取り乱してんな。クックック……最後に、俺が使ったギフトが、おまえになるとはな……悪く……ねえ……か……」


 最後の力を振り絞って、ギフト、【キュア・マインド】を発動させたゴリンダマンは、笑みを浮かべながら息を引きとった……。



「馬鹿野郎……あんなに嫌ってた自分のギフトを、最期に使いやがって……」


 ゴリンダマンのギフト、キュア・マインドは、対象の精神異常を回復させる能力。ギフトランクはBだが、希少価値の高い精神回復系のギフトだった。


 だが、そんな有用なギフトは、ゴリゴリの戦闘タイプのゴリンダマンにとって恥でしかなく、いつしか封印していたのだった。



「やっぱり、おまえは俺にとって最高の、永遠の相棒だったよ……馬鹿野郎」


 精神は安定している。もう、取り乱してもいない。それでも、クロウは流れる涙を止めることは出来なかった……。

陽炎のトップ・霧雨vs黒夢の鬼軍曹クロノス。もう一つの最強決定戦が、今幕をあげる!


次回、『影の軍勢』


「やれやれ……この俺が、こんな所で……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ