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第10話 皮を被った糞野郎

※一部会話を修正しました。

(何て…何て言ったんだ?今、比呂は…)



「ソイツ、昔から正義感が強くて、俺は子供の頃苛められっ子だったからよく助けてもらったんですよ」


「へ~。良い子じゃない?」


「いや、ソイツは惨めな俺を助けてヒーローを気取ってただけですよ。いつもいつも…だから、俺がギフトに目覚めた時のソイツの顔、今思い出しても爽快だったなぁ。だって、ソイツにとっては守ってやってる対象でしかない俺が、自分より先にギフトに目覚めたんですから」


「ふ~ん。要するに、比呂クンはソイツの事が嫌いだったのね?」


「………そうですよ。だから、俺は事ある毎にソイツに自慢話を聞かせてやったんですよ。そしたらソイツ、その度全然気にしてない素振りを見せるんですよ。最初のうちは気付かなかったんですけど、多分、悔しくて仕方なかったから無理してたんでしょうね。

 それに気付いてからは、その悔しいってのが表情に出てるのも知らずに無理してるソイツが滑稽で」


「比呂クンって、可愛い顔して案外性根が腐ってるのね」


「まさか。俺は将来有望なエリートなんですから。心の中では大嫌いでも、表向きは仲良く接してましたからね。フフ、裏でバレない様にソイツが困る事ばかりしてましたけど」


「へ~。例えば?」


「…フフ、ソイツの事が大好きだった幼馴染の女の子がいるんですけど、その子にソイツの悪い噂を毎日毎日聞かせてやって、最終的に俺に惚れさせました。多分、ソイツもその子の事好きだったハズなんでしてやったりでしたよ。

 他にもソイツに気がありそうな女子には、()()()()()()、悪い噂を聞かせて俺に惚れさせたりとかね」


「うわぁ~、比呂クンて鬼畜だったのね、でも、組織で成り上がるならその位性根が腐ってた方が良いかもね?特に、この国防軍の様な組織では」



 耳に入って来る会話は、なんの冗談なのかと呆然とする光輝。


 確かに、光輝もいつの頃からか比呂の事は苦手になっていた。でも、空気が読めないだけで、純粋な部分は昔から変わらない奴だと、自分に言い聞かせて来たのだ。

 ところがどうだ?全ては計算づくで、比呂は光輝の事を馬鹿にしていたのだ。



 嫌っていても、心の何処かで幼馴染だから仕方ないと思っていた。自分でも勝手だと思うが、裏切られた気分になり怒りを覚えて立ち上がる。


「~ギィロオォッ!!~(比ぃ呂おぉっ)!!」


 手は胴体と共にワイヤーで締め付けられてても、足は動く。怒りに我を忘れた光輝は、スピード・スターを発動させて比呂に体当たりを試みた!



 ―!?



 突然、身体が軽くなった様な気がした。そして、光輝はそのまま比呂の脇を通過する。

 このままだと壁にぶつかる。踏ん張ろうとしたが、足の感覚が…いや、()()()()()()…。


 壁に激突して倒れた光輝は見た。比呂の前に転がっている、自分の()()()を…。



「…ふむ、少しスッキリしたな」


 薄れ行く意識の中で、光輝は入り口を見る。そこには、冴嶋が立っていた。



「さ、冴嶋中尉!」


「おい真田~。お前、今僕がコイツを斬らなけりゃ、死んでたぞ~?」


「そ、そんな…まさか」


「バカだなぁ~。お前は良いギフトを持ってるし、頭も良いんだろうけど、バカなんだよな~」


「お、俺がそんな死に損ないに殺られる訳無いじゃないですか!」


「ホント、バカだな~。死に損ないだからこそ厄介なんだろが。仮にもソイツ、()()黒崎を殺してるんだぞ?今のお前が黒崎と戦っても、絶対に勝てないからな?」


 黒崎は、実は元国防軍で、戦闘力の高さは評価されていた。だが、それ以上に素行が悪く、除隊させられてからは各地を転々とする野良フィルズとなっていたのだ。



「…黒崎の能力って、ギフトランクA-加速系能力のスピード・スターですよね。…系統的には相性が悪いからなぁ」


「コイツのギフトも加速系なんだよ。ランクは知らないけど、黒崎を殺した時の速さだと、多分同等の加速系能力者だったと思うよ。

 そんな奴が捨て身で襲いかかって来たんだ。お前じゃあ死んでたよ」


「……くそっ」



 光輝は既に目の前が真っ暗になっていたが、比呂の足音が近付いて来たのが分かる。


 そして、頭を思い切り蹴られた。


「俺がこんな奴に!確かに俺のギフトはまだ熟練度は低いですけど、ランクA+、最強の支配系ですよ?」


「ギフトが優秀でも、使い方を誤れば死ぬんだ。お前のいる世界はそういう世界なんだ。ちゃんと覚悟しとけ。じゃ…後の処理ヨロシク~」


 そう言い残し、冴嶋は去って行った。



「…なんだよ、自分はただの戦闘狂のクセに!」


「でもまあ、中尉の言った事も間違って無いわ。この世界は油断すればあっという間に死んでしまうんだから。どんなに強くてもね」


「分かってますよ!くそっ!………ん?コイツ……いや、そんな訳ないか。()()()無能だもんな」


「さて、私達ももう行きましょう。コイツは処理班に連絡すれば片付けてくれるでしょうから」


「…はい。解りました」


 比呂と柏倉もその場から去って行った。




 一人取り残された光輝だったが、もう、意識が途切れる寸前だった。


 このままだと自分は死体として処理されてしまうのかもしれない。



 光輝は、強く願っていた。リバイブ・ハンターが発動してくれる事を。



 …絶対に、絶対に許さない。


 自分を殺したであろう冴嶋もだが、幼馴染の皮を被った糞野郎を。絶対に許さないと、心に誓ったのだった…。

※幼なじみヒーロールートとクズ野郎ルートで悩んだ結果、クズ野郎ルートに舵を切りました。


※黒崎のプロフィール追記しました。

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― 新着の感想 ―
このタイミングでルート決めたのか、はたまたプロット時点で決めたのか、ちょっと興味ある。
[良い点] クズルートに行ったことで主人公が罪悪感を持たずに済むようになったこと。展開が非常に好み!この手の天然たらしって現実的に考えて無理があるよなあって思ってたからヒロが腹黒だったってのも納得でき…
[良い点] >※幼なじみヒーロールートとクズ野郎ルートで悩んだ結果、クズ野郎ルートに舵を切りました 英断。素晴らしい。 この子がヒーロールート行ってたらモヤモヤしてたかも。
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