prologue:2020~2070
その日…世界は変わった…。
西暦2020年5月25日。日本では東京オリンピックを一か月後に控え、お祭りムードに沸く中、それは現れた。
世界各地でブラックホールの様な空間の歪みが空に出現し、そこから異形の生物…後に“フェノム”と呼ばれる存在が出現したのだ。
体長3mを越す昆虫らしき生物や鋭い牙や爪を持った巨大な犬型の生物や空中を飛び回る巨大な鳥。それまで百獣の王と呼ばれていたライオンなどが猫の様な愛玩動物に思えてしまう程の衝撃を伴い現れたそれは、人々を襲い始めた。
世界中がパニックに襲われる中、直ぐ様軍事力で対抗した人類だったが、なんとか撃退出来たのはアメリカ、ドイツ、ロシア、イギリス、日本、中国の6ヵ国。大ダメージを負ったが国の体裁は保ったのが他10ヵ国、それ以外の国は、国の中枢が壊滅し、最早国として成立出来ない状況に追い込まれた。
このフェノムの強襲により、全人類の3分の1が死滅した…。
その後も定期的に出現するフェノムに、人類は苦しめられた。
そんな人類が反撃の狼煙をあげたのは、2025年の事だった。
突如、人類の中に特殊能力…後に“ギフト”と呼ばれる異能に目覚める者が現れたのだ。
ギフトに目覚めるのは15歳になるまでで、それを過ぎるとギフトに目覚める確率はほぼ皆無。
そして、ギフトの種類は様々で、戦闘に特化した物から生活をより良くする物、何の為に使うのか分からない意味不明な物まで多種多様だったが、なんにしても人は単体でフェノムと戦う術を手に入れた。
人々は、ギフトに目覚めた人間を“スペシャリスト”と呼んで讃えたのだった。
スペシャリスト達による人類の反撃が始まり、徐々に世界各地でフェノムの大規模討伐が達成される中、2050年、遂に人類は、フェノムの中でも別格な存在として始祖と恐れられるフェノム…“アンノウン”との決戦を迎えた。
アンノウンは、一体で2020年当時軍事力に優れていたインドを死滅させた程の強敵。
かくして、全世界から集められたスペシャリストの精鋭100人と、アンノウンを頂点とした屈強なフェノム1000体によるハルマゲドンが勃発。
…結果的に、人類は見事アンノウンの退治に成功。だが、生き残ったスペシャリストは10人に充たないという、熾烈な戦いとなった。
これを機に、世界各地に存在したフェノムが出現する異次元ホールは縮小したものの、完全に消える事は無く、今もフェノムを産み続けている。ただ、当初と比べれば、現在産み出されるのはレベルの低いフェノムだけだった。
それから20年。アンノウンを倒し、フェノムを抑え込める環境を整えた人類は、徐々に元の生活を取り戻して行った。
ただ、人の住むエリアは2020年までと違い要所要所で一纏めにされ、そこにはフェノムが入り込まない様な外壁や結界が設けられており、国から国への移動手段もかなり制限されてしまった。
更にはギフトに目覚めたにも関わらず、その能力を悪事に使う輩も現れ始めた。
2070年4月。物語は、そんな世界を恐怖に陥れる事になる少年が、ギフトに目覚めた所から始まる…。
※ギフトに目覚める人数を削除し、第一話で改めて正確な数字を記載する様に修正しました。
※フェノムとの最終決戦の描写を追加しました。