もしも開運グッズで異世界転生とかできたらどうする?
この作品はいわゆる異世界転生もののパロディです。話の中で異世界転生は起こりません。
この作品はいわゆる異世界物のパロディです。
特定の作品、ジャンルを貶める意図はございません。
―俺の名前は綾並ハヤト(仮名)。16歳になったある日、トラックにはねられて死亡し、なんと異世界に転移することになった!
しかも神様の粋な計らいで、体力とか頭脳とか魔力とかありとあらゆるステータスを極限まで上げてもらい、意気揚々と異世界に旅立った。
異世界はそりゃあとんでもないところだったが、神様からもらったチート能力で鮮やかに切り抜け、冒険者の女の子を次々と助けていった。
そうするとだ、助けた子達がみんな俺に告白、もとい求婚してくる訳だ。やれやれ、モテ過ぎるのも辛いな……(溜息)
その上ひょんなことから、異世界における大国の王女様を魔王から救ったもんだからさあ大変。国王に婚約者として紹介され、あっという間に結婚。もちろん他のみんなも一緒に。
ここまで来たら知りたくなるんじゃないかな、どうして俺がこんなに幸運に恵まれているのかって。アリシア…異世界のガールフレンドの一人も言ってた。
「ねぇ、ハヤトはどうしてそんなに強いの?」
それはこの…龍神ブレスレットのおかげさ!
このブレスレットを買ってから、俺の人生は幸せの連続だ。今までのさえない自分ともオサラバできたんだ。これを読んでる人も、龍神ブレスレットを買って人生変えようぜ! じゃ、また会おうぜ‼︎
「……いや、何この広告」
僕は、読んでいた漫画雑誌の裏表紙を見ながら呆れていた。
そこには、『龍神様の加護がこめられた水晶を使った龍神ブレスレット! 身にあまる程の幸運をあなたの手に!』なんてキャッチコピーとともに、黄色がかった水晶を数珠つなぎにしたブレスレットの写真が載っていた。背景は龍と雷のCGで、龍神的な何かを演出しようとしているのがかえって安っぽい。
こんなネタまで持ってくるとか、ネタ切れかよと広告を出した会社を一人哀れむ。
「しかも何だよこの写真、『※異世界で撮影したものです』って。どうやって撮ったんだよ」
ハヤト君(仮名)をファンタジー風衣装の女の子達が取り囲む写真を、微妙なコスプレだな、と貶めた後に、値段を確認した。
「5万円か……高っけーなぁ……」
デカデカと書いてある電話番号まで確認すると、僕は自分のスマホを取り出した。
「異世界でチートとか……ハーレムとか……マジだったらどうしよ。あ、もしもし、龍神ブレスレットの広告見たんですけど……はい……あの……一個注文したいんですけど……」
こうして世界にまた1人、新たなカモが生まれたのであった。