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~密輸~1/4

 日の光が海に反射し、きらびやかに輝く。移動中の車の助手席から、仁科はその景色を眺めていた。運転席には用務員。後部座席には、有里、新藤、富枝が座っている。


「楽しみね!」


 右端の席に座る、有里の声は心躍るといった感じである。

「穴場だからな、俺らで独り占めできるぞ!」


 用務員がハンドルを握りながら言う。


「夕日、間に合うか?」


 富枝は有里と新藤の間に挟まれている。


「飛ばすぞ! しっかり掴まってろ!」


 用務員はアクセルを踏み込む。体がシートに押しつけられ、外の景色がめまぐるしく変わっていった。






「うええ、吐きそうだ」


 仁科は猫背になってコンクリートの地面を見ながら言う。現在車は駐車場に止められ、仁科たちは降りて外の空気を吸っている。潮の香りがする。


「ここから歩いてちょっとの所にあるんだ」


 そういって、海沿いを少し歩いた。通り過ぎる車はあれども、仁科たちのように歩いている者はいなかった。少し歩くと、周りを高い崖に囲まれた、ゴツゴツした岩場に出た。日が沈んで行く。太陽はオレンジ色になり、海に溶け込む。


「きれーい」


 有里が、目を輝かせながら言う。


「ああ……」


 富枝も、幸せそうにため息をついた。

 新藤はそんな二人を、ぼんやりと見つめている。


「きれいだね」

「おいおい、どこ見て言ってんだよー」


 仁科はニヤニヤしながら肘で新藤を小突く。


「うっせ!」


 そう言って、新藤に肩をパンチされるのであった。






 日が沈み終わると、一転真っ暗になってしまう。この辺は街灯もない。仁科たちは、足下に気をつけながら、ゆっくり駐車場へ向かっていた。その途中、行きはなかった集団が、狭い船着き場に集まっていた。黒塗りの車が何台も止まっている。


「なにやってんだろ」

「喪服か?」


 新藤が言う。真っ黒なスーツたちを見ていったのだろうが、仁科にはそれとは別のように思えた。かすかに、外国語が聞こえる。ヨーロッパの方の言葉だろうと、仁科は思った。


「……鉄砲じゃねえか!」


 突然の用務員の声を押し殺したような叫びに、仁科たちは驚く。そして仁科も用務員の視線の先を見ると、新聞紙に包まれた何かを品定めしているところであった。そこから、拳銃が覗いている。


「密輸!」


 仁科も小声で叫んだ。


「通報しよう」


 用務員の一声で、仁科たちは途中で見た電話ボックスまで向かうことになった。閉まっている土産物屋の前にある、電話ボックスまで向かう。用務員が通報し、現場まで急いで戻った。まだ、なにやら話しをしているところであった。


「ゼロゴーニーナナイチキュウゼロゼロ」


 外国人が言い、日本人がそれを口に出して繰り返す。そして、船は去って言った。黒塗りの車もどんどん出て行き、元通り、何もない海だけが残った。


「解散しちゃったね」


 警察が来たのは、その後であった。用務員が事態を警察に説明し、すぐに用務員の車で夜の学校へ向かう。車に揺られながら、仁科はある言葉を繰り返した。


「ゼロゴーニーナナイチキュウゼロゼロ」


 もしかして、数字か? 05271900。確かに数字に思えるが、だから何を表しているのか。05の27の19の00……分かった!


「五月二十七日、十九時ちょうど! 次の受け渡し日時だ!」


 仁科の叫びに、用務員以外の全員が振り向く。仁科はこのとき、余計なことに気づいてしまったのかもしれない。


今回は四部構成といたしました。二部目も随意投稿していきます。

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