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~授業中に不審者(後)~

 雨雲が空を覆い、蛍光灯の薄暗い光が教室を照らしている。いかれ男の手にしたナイフが、その光に照らされてギラリと光る。


「うごええあああ、ぼあああああ!」


 奇声はいよいよ訳の話からなさを増し、デタラメなステップはより勢いを増す。刃物は縦、横、斜めに降り出され、突きが繰り出される。いよいよ手が付けられなくなり、仁科たちバトル部の面々は圧倒されていた。しびれを切らした有里が素早く間合いを詰める。


「きゃあ!」


 飛び退く有里。飛び散る血液。腕を押さえている。


「なにしやがんだおらあああ!」


 新藤が、見たことない程の怒りを込めて、いかれ男に飛びかかる。


「っ!」


 そして声にならない悲鳴を上げて飛び退いた。制服は裂かれ、血がにじみ出す。それらを見ていた富枝が飛びだそうとして、ためらう。とたんに間合いを詰めてくるいかれ男。真一文字に振るわれたナイフに、倒れる富枝。負傷した三人は、這いながら後ろへ下がる。仁科が戦いを継ぐ。デタラメに振るわれるナイフを避け、拳を突き出す。突然動きを変える、いかれ男。きびすを返し、バリケードの向こうに縮こまる、一生徒に襲いかかる。


「いやああああ」


 悲鳴の波。仁科は飛び出す。ナイフを持った、いかれ男の腕を払う。


 もう俺しか残ってないんだ……! しっかりしろ、俺!


 仁科は自分を鼓舞する。だんだん、いかれ男の動きがスローモーションに見えてきた。






 いかれ男の暴れ方はさらに増す。床が揺れ、雄叫びで耳が痛い。ケガをしている有里、仁科

富枝が、仁科と男の間に飛び込んでくる。偶然、四人が同時に殴る。吹き飛ばされた男はすぐに起き上がるも、動きを止めた。有里たちは再び血があふれ出してきて、窓際へ下がった。止まったと思った男はつかの間、暴れ出す。


「いっ!」


 仁科の肩から、血が止めどなく溢れる。


 この手の妄想、良くしただろ……。こういうとき俺、どんな風に妄想してた? 自分が飛び出して、一人で倒して、皆から凄いって言われて……確か、そんなだった――――


「うおおおおお!」


 いかれ男に負けない雄叫びを上げ、仁科は飛び出す。男を殴り、蹴り飛ばし、押さえ込む。暴れる男の、刃物を取り上げる。


「いよっしゃああ!」


 うつぶせに倒れるいかれ男の背中に馬乗りになり、仁科はガッツポーズをした。見ていた生徒たちが、へろへろと座り込んでいった。そして、刺股を持って飛び込んできた用務員にがっしりと押さえられ、仁科の役目は終わった。






 あれから数週間して、仁科は再び学校に来ていた。自分の席に座り、やはり授業とは関係の無いことを考える。

 その後仁科は警察に労われた。そして事態が落ち着くまで休校となり、仁科は長い休みを得ることになる。その後こうして学校に来た仁科は、クラスメイトにもみくちゃにされ、褒めに褒められた。仁科はヒーローとして人気を得たのであった。仁科のケガは塞がり、有里たちもぴんぴんしている。

しっかりと春になり、本当に今年度もあとわずか――――満開の桜が、今回の事件を死者ゼロ名で終わらせたことを讃えていた。


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