~密輸~2/4
「次に武器を受け渡しする日時だったんだ!」
仁科の声が車内に響く。
「何ですって!」
有里が驚いた声が後部座席から聞こえる。
「警察に言わないと」
仁科の新藤が言った。
「確証が持てないと、警察は動いてくれんだろう」
後部座席の真ん中で二人に挟まれて狭そうな、富枝が言う。
「その日、行ってみて受け渡しをやってたら通報する。ってのはどうだ?」
運転をしながら用務員が言う。
「賛成!」
拳を突き上げた仁科は、使命感に駆られていた。一市民として、街の安全を守りたいという使命感だった。
前回と同じ駐車場に止め、徒歩で仁科たちは、あの前回受け渡しを目撃した船着き場へ向かう。
「……やっぱりいる……!」
仁科は声を押さえて叫ぶ。
「ダレダ!」
全員が飛び跳ねた。がたいのいい外国人が、こちらを見て叫んでいる。
パスッ
男が拳銃を向けている。サイレンサーの音だと、バトル漫画好きの仁科は気づいた。拳銃を向けられていることに気づき、全員が動けなくなった。冷たい潮風が、全員に吹き付けていた。
「くそっ、俺らをどうする気だ」
仁科たちは、奴らによって縄で縛り上げられている。日本人の、暴力団員と思われる男が、仁科の顔をのぞき込む。
「足に岩をくくりつけて、沈めてやろう」
隣にいる有里がもがく。
「死にたくないよ!」
一言も声を発していない新藤と富枝も、悲しい顔をしているであろうと仁科は思った。
そのとき、急に飛び出してくる人影があった。
「警察だ!」
そう言って男は飛び出してくる。スーツの、精悍な男だ。警官を名乗る男に、暴力団員たちと、外国人たちが襲いかかる。それを背負い投げ、投げ、投げ――――。手際の良い動きで、一人で全員を相手する。
「今のうちに逃げよう」
仁科は、縛られた手首を動かし、なんとか学生服のポケットからカッターを取り出す。そして、手首の縄を切り、次いで足首の縄も切る。
「あんたなんでカッター持ち歩いてんのよ!」
有里が怒る。
「いるいる、いつでも戦えるように、カッター持ち歩く奴。ただの学生がいつ、戦うときがくるんだよ」
新藤が嫌みを言う。
「今だな」
富枝が真面目な顔で言うのであった。
全員の縄がほどけたのを見計らい、警官が仁科たちを先導して走る。ものすごい数の足音が追いかけてくる。すぐに追いつかれそうだ。そのとき、急に警官に腕を引かれ、仁科たちは、コンテナの陰に隠れる。そこは、コンテナがたくさん置いてある、隣の大きな船着き場であった。追っ手は仁科たちに気づかず、走って通り過ぎていく。しかし、追っ手もコンテナのどこかに隠れていることには気づいたようで、追っ手たちのうろうろする足音が聞こえてくる。
パスッ
先ほど聞いた音だ。サイレンサーの音。仁科たちは走る。だめだ。前方、遠くからも足音が急速に近づく。仁科たちは、コンテナの角を曲がる。そして、コンテナにぴったりと張り付いた。暗い夜の港。追っ手たちは、こちらを見たものの、気づかずに通り過ぎていく。
再び走る。警官は足が速く、その後ろを追った。黒い車が見えてくる。警官がドアを開ける。覆面パトカーである。
「緊急連絡、応答願います。こちら――――」
警官の張り詰めた声が、市内の警官たちに届けられていく。仁科たちは、ホットため息をつく。走り回ったためか、汗が流れている。全くもって、寒さは感じなくなっていた。
四話編成の二話目となります。三話目以降も随時投稿していきますので、お待ちください!




