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殺される俺  作者: @kana
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二人だけの秘密

 五限目の授業が終わり、残りあと一時間だ、もう少し頑張れ自分! と、久しぶりの授業に肩がこってしまった。

「利穂、ちょっといい?」

 自分の肩を手で揉みながら、目の前で、私を見下ろす彩佳を見上げた。

 私は、授業の事なんか全く忘れてこう返事をした。

「うん、いいよ。どこで話すの?」

 彩佳は、戸惑った表情を見せたが、すぐに元の顔になりこうボソリと呟いた。

「いつもの場所」

 私たちにとって、いつもの場所はかけがいのない場所であって、なくてはならない特別な場所だった。だから、授業をサボる時も、お昼も、そのいつもの場所で溜まっている。私たちが通っているこの中学校の屋上は、なぜか誰も使わない。ただ、私たちが入学する前の何年か前に飛び降り自殺があり、一時立ち入り禁止になってから、夜にその飛び降りたはずの生徒がいるとか何とか噂が飛びまくり、ついには立ち入る生徒もいなくなってしまったという訳だ。

 実際、私たちは夜もここに来る様なことはあるけれど、そんな生徒は一度も見たことがないので、ただの噂が歩いていただけだった。

「で、どうしたの、話って。彩佳からのお誘いは珍しいね」

 屋上に着いた私は、手すりに寄りかかった。彩佳はその私の隣で、コンクリートに座った。

「そうだね」

 そう言った彩佳はどこか哀しい顔をしていたような気がした。上から覗くような感じだから、よく見えないけど。

「あのさ……」

 彩花がゆっくりと切り出した。

「あのね、私……好きな人が出来たの」

 私は特に、この相談には吃驚はしなかった。中学に入って、同じクラスになった彩佳は、丁度私の後ろの席だった。隣町から引っ越してきた私は、誰も知っている人がいなくてとても不安だった。そんな時に、分からないことがあって尋ねた時に、冷たい態度を取られた。彩佳の第一印象は最も最悪だった。だけど私はめげずに頑張って話しかけると、彩佳も私に少しは心を開いてくれたのか、とてもいい人だと私は感動した。

 それからというもの、私と彩佳は何でも相談しあって、よくお互いのことを知っているつもりだ。

「へぇ、また年上?」

 その陽気(ようき)な私の質問とは反対に彩佳は物静かに答えた。

「違う、同じクラスの男子」

 その答えを聞いた私は、ある人物が浮かんできた。

「分かった、豊でしょ?」

 私は怪しく笑って見せると、彩佳はまるで何で分かったの? という驚いた表情を見せ、私を見上げている。

「図星だね」

 私は、おかしくなって声を上げて笑った。だけど心の奥底では、どこか息苦しいものを感じてしまった。彩佳は可愛らしく頬を薄ピンクに染めている。そんな彩佳を横目で見ながら私はこう囁いた。

「豊は好きな人いるのかな?」

「え……」

 私の囁いた言葉が彩佳にどう届いたのかは分からない。だけど、眉を寄せてただ私を見つめる彩佳はどことなく、恋する乙女だった。

「もしかして、利穂も好きなの?」

 「何、違うよ」

 彩佳はこうみえても、勘のいい子だなと思った。私は心に強く決心した。これでいいのだと自分に言い聞かせた。彩佳は安堵の溜め息をついた。

「よかった……利穂はいつも私の恋を応援してくれるよね」

 私は、恋より親友を選ばなくてはいけない。親友を傷つけてはいけない。だから、本当の気持ちを隠さなければならない。親友のために……。

「何で? 応援するのはあたりまえじゃない?」 

 今、私はどんな顔をしているのだろう? 無理に笑っていることが彩佳にばれませんように。

「ありがとう」

 どうやら彩花は私の気持ちには気づいていないみたいで、彩佳にとってその言葉はとても珍しかった。

「どういたしまして」

 

 あぁ、神様どうかお願いです。

 この素直な気持ちはどこへ捨てたらいいのでしょうか?


 そっと小さく心の中で呟いた。

「ねぇ、利穂?」

「何?」

 私は、立ち上がった彩佳の顔を見る。彩佳は優しく微笑んでいた。

「これは、二人だけの秘密にしようね?」

 その時の、彩佳の微笑みはまるで私を脅すかのように約束を進めた。初めて彩佳の微笑がこんなにも私を怖がらせるなんて思いもしなかった。

「どうしたの、利穂」

 私の異変に気づいた彩佳は、顔を覗くように優しく問いかけた。その一言一言が、私を何かの術で縛るように、私は動けなかった。

「何でもないよ」

「そう? じゃぁ、二人だけの秘密ね」

 なぜか私はこう思った。


 もう、二度と彩佳に近づきたくない。


 いつも一緒にいて、いつも話していた。だから、彩佳の事は全部とは言えないけど知っているつもりだった。普段はムスっとしているのが彼女の特徴で、五人でいるときは滅多に口を開かない。そんな彩佳は私に少しは心を開いてくれていた。だからこうして、たまに微笑んでくれる。笑いかけてくれる。そんな彩佳が大好きだった。


 だけど……


 どうしてだろう? こんなにも、彩佳が嫌いになったのは初めてだった。


「うん、二人だけの……約束ね」

 その時、授業を終える予鈴が学校中に響き渡った……。

 

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