殺人事件の噂
「殺人事件?」
俺が、そう聞き返すと裕太は怪しく笑いながらこう言った。
「そう、なんとも不気味な殺人事件だったらしいぞ」
そこで、どうでもよさそうに彩佳は口を挟んだ。
「その被害者は、頭部を切断されそのまま見つかっておらず、足は潰されたかのように引きちぎられている。胸のあたりには、何度も刃物で刺されたような傷が残っており、方から腕にかけては裂けていた……」
彩佳は口を閉じると、ご飯を口の中に入れた。
「彩佳、何でそこまで知ってるんだよ」
裕太の問に俺も同じ質問が浮かんできた。
「ほら、彩佳ちゃんはお父さんがお偉い警察官だから」
彩佳の代わりに、利穂がそう答えた。そう聞いた俺と裕太は心底驚いた。
「何だよ、そんなの初めて聞いたぞ」
裕太が彩佳に向ってそう言うと、彩佳は利穂を睨むように口を開いた。
「利穂、言わない約束だったでしょ」
「あ……ごめん……」
利穂は反省したように、肩を落とした。
「なぁ、どうしてそんな隠すんだよ」
俺が、彩佳に訊ねると彩佳は弁当箱を片付けながら俺の質問には答えなかった。無視された俺は、しつこく同じ質問をする。
「おい、聞いてるか? なんでだよ」
彩佳は自分の荷物を纏めると素早く立ち上がり、そのまま扉を開け、出て行ってしまった。
「何だよ……アイツ」
裕太が気分悪そうに舌打ちをした。
「あのね、彩佳ちゃんにとって聞かれたくない事とかあるんだよ……」
彩佳が出て行った扉を見つめながら、利穂は優しく言った。
この時俺は、誰にでも聞かれたくないことはあるんだと、改めて実感した。