ある神様が会議に出る話
神様の話その二
多分続かない。
元々、神様というのは自由なんだと、そういう者だというのは理解している。
私とてそうやって一から世界を造り、他の世界を参考にしつつ、試行錯誤を繰り返して世界とそこに住まう者達が幸せに死に、流転する世界を造ろうと努力は怠っていなかった。
それに比べれば、初期の設定だけしただけで、特に他、何もしないで住まう者達の管理すらせずに、混沌とした世界を作って平然としてる上の世界の神や、設定は独創的にするもんだと、適当な設定で、アメーバ程度の生命や、強靭な魔物以外存在できない世界を作って平然としてる下の神よりはましだと思っている。
だが、会議室で詰問されているこの状況を、一言でいえば、非常に納得はいかなかった。
「だから君たちのグループの世界の安定性は最悪といってもいいほど乱れているのだよ。それが周辺の世界にどんな被害をもたらすがわかっているのかね?」
「ええ、わかっています。ですから安定するために私は世界を設定してまわしているのですから・・・・・・」
私がそう言って、汗を拭いている横で、となりの席の神、七色の輝く髪をもち、青いワンピースをきてぐでーとしている女神。上の神が机に身体をのせたままやる気ない声で
「いいじゃん。ほっといて乱れるなら、それが逆にありのままの世界ってことでしょ。乱れてるんじゃなくてそれが普通の状態だってことじゃん」
おいこら、なにいってんだこいつ・・・・っていうか会議室にいる数十柱の神様の殺気がさっきから俺と両側に集中してるんだぞこらやめてくれ
「いやぁ、乱れてるんじゃなくて、それが新しい流れってやつよ。古い考えは捨てて未来に生きたらいいんやないかベイベ~」
こっちは机に脚を乗せて、けだるそうに椅子をゆらゆらとさせながらつぶやく茶髪ロンゲのアロハグラさんの男性神。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
周囲の空気が凍えているのがわかる自分。何が楽しいのがゲラゲラ笑う下の神と、うつらうつらと舟をこぎだす上の女神。上の神はそのまま眠っていてほしいが、要所要所危険なところで爆弾発言を繰り返して部屋の殺気を高めている。
「・・・つまり、それが君たちの総意と受け取っていいのかね?」
「いや、ちょっと待ってください。私は・・・」
「君も乱れた世界を直させることができたのにしなかった?ちがうかね?いや、ひょっとしたらこの中で一番悪いのは何もしなかった君ではないのかね?」
額の汗がどっと噴き出す。確かに、それは正論だったからだ。
だが、わかっているが言わせてもらう。
「じゃあ、どうしろっていうんですか!?」
左右の神を指さしていう。若干声が湿っているかもしれない。
「神々の奇跡の設定がされてないからこちらの干渉が無効化される上と、こちらの干渉でも焼け石に水にしかならない下をどうやって矯正するんですか!?・・・・・・しかもこいつら現状わかっていて、直すきないし、それがスタンダードとすら言い放つんですよ!」
少なくとも俺にどうにかできたとは思えない。そんな無駄なことするぐらいならその分自分の世界をよくした方がよほど効率的だし、そうするべきだと思う。
「・・・・・・・だが、責任は取ってもらうぞ。中の神。お前の世界の管理をとりあ」
「んなこといってもさぁ・・・・・・」
そう言ってさらに言葉を言おうとした神を遮る様に、上の女神が声を発する。
「それぐらい別に問題ないじゃん。ていうか、ちゃんとやったら困るやつも出るんじゃないの?」
そう言って女神はだるそうな目で周囲の神々を見回す。不思議なことにほとんどの神が目を逸らした。
「盗っ人が人の者勝手に持ち出してそれで、世界の安定を維持するほうがおかしいと思うんだけど」
一瞬、会議室が息をのんだ音が聞こえた気がした。
「俺も質問あるぜ。ゴッツさんたちYO」
下の神様が真面目な顔で不真面目な言葉を紡ぐ。
「不法投棄は、ゴットとしてどうかと思うZE 」
そう言って責めていた神に視線を向ける。
「な・・・・・なんのことだ!?」
女神が続ける。
「いやさぁ、盗みすぎて量がたらなくなった補充と、穢れのゴミ捨て場を広げる為とか、そんなくだらない理由で私と馬鹿の領域を広げる為に、真面目な奴の土地奪うのはどうなのさ?神としてさ」
その言葉に私はハッとする。
「な!?・・・・・何を言って・・・・」
「ていうか、ここの連中だって素知らぬ顔してるけど。私の世界の周囲の神々全員、私のとこから盗み働いた馬鹿しかいないじゃん。いくら才能ある人間が多いからって、無断で落ちたように偽装して拝借はおかしいんじゃない?・・・・・・んで、唯一一切そういうことしないくそまじめな奴を責めるって、神としてどうなのよ?」
やる気のない顔でそう言って目の前の神を嘲笑う笑みを浮かべる。
「いくら穢れのゴミだまりみたいなところだと思っても、見知らぬ穢れぐらいわかるに決まってんJYAN
。まあ、うまく組み込んで世界まわすのたのしいから問題ないっていうけとNE」
同じく視線を私達を責めていた男に向ける下の神。
「言っとくけど全部把握してるし手口もわかってるから防ごうとすれば防げるけど?どうする?」
「おれも閉じるのは簡単だよ。侵入防ぐぐらいの濃度の穢れはいっぱいあるし、君たちのおかげDE」
「・・・・・・・・・・・・ま、まて」
「いくよ糞真面目、会議は終わったみたいだから・・・・馬鹿、手伝え」
そう言って眠そうな女神が私の手を取る。
「君のクソ古い考えはNOノーだGa。個人的には嫌いじゃないZE、ごみ一つ落とさない世界はととってもCOOLで気遣いをフィーリンGU」
もう一方の手を持たれ引きづられるように会議室の出口に向かう。
「文句あるなら他の領域の神様揃えて文句良いなよ。そうしたら、こまるのはどっちだろうね」
最後に女神はそう扉の向こうに行って扉を叩きつけるように閉じる。
呆然としている私の手を放し二人の神は
「んじゃ、またね、中の神。少しは気を抜いた方が良いと思うよ~くそまじめに馬鹿の言うこと聞く意味なんかないんだから。私らは自由なんだし~」
「ではさらばDa、中の神。君の下に来たことで、考え古い奴を嫌いきることはできなくなっTA。それはとってもいいことだとおもうZE」
そう言って去って行った。
その背に言葉をかける
「すまん・・・たすかった・・・・・・・・・・だが」
二人の気配が消える。もう聞こえていないことはわかっているが。
「あなたたちに挟まれている私の苦労はどうなるですか!?」
乱れている世界のひずみの影響を最も強く受けているのに、全く恩恵を受け取ってない自分なら、文句言ってもいいだろう。たとえ恩人だとしても、その数倍は苦労かけられているのだ。
気が向いたら続ける




