6.見たことないモンスター
――――――ハンプティダンプティ落っこちた――――――――――
「とーしーお!」
ぽん、と僕の肩に手を置くなれなれしい男――――高本 陽太。
名前の通りに明るい性格で、……いや、それ以上ににぎやかで元気、かつお節介。典型的な『ウザい』やつだ。
「誰だよ、としおって」
呆れながら僕はかばんを振り回した。陽太の腹に直撃する。
「うぉッ、何すんだ!」
「暑苦しいうっとうしいウザい」
「ひどっ」
「あと、としおじゃないし」
斎藤 健太。それが僕の名前。
中学校入学の日、初対面で『お前、としおっぽい』と言われ、以来ずっと『としお』呼ばわり。今では、もう一つの名前として定着しつつある。悲しいことに。
「高本、お前のせいで僕の本名知らないやつ多いんだからな。責任取れよ」
「いーじゃんニックネーム。つかどーよ、俺のネーミングセンス!!」
「最低レベル」
「……なんか、俺に対してだけそういう態度なのは俺の気のせい?」
「お。陽太じゃーん。と、斎藤さん。おはよ」
ふいに、僕らの後ろから声がした。小柄で、いつも笑顔を振りまいているので、ひそかに年上からモテたりする。その上優しいから、同級生にも人気があるらしい。
「あ、おはよう、ユキ」
「ちょ、としおぉ!!俺のときと違くない!?」
「気のせいじゃない?」
「いや、そんなこと無ぇって!!」
「あいかわらず仲良しだね、2人とも」
「「どこが!?」」
僕と、お調子者の陽太、そして誰に対しても優しいユキ――――僕ら三人は、俗に言う『仲良しグループ』だ。性格でさえバラバラだけど、意外とバランスが取れてて居心地が良い。僕の居場所はここにあるんだと、思っ――――――
「え……?」
僕ら3人、同時に発していた。
目の前に映った光景、音、空気、全てがあり得ないことのように思えたからだ。
――――――――――――大きな音がした。
何かが、くずれる音がした。
100メートルほど先の塀がバラバラになるのを見た。
そこから人が……男が現れた。
でかい男で、遠目から見てもよく鍛えられていると分かるぐらいに筋肉が盛り上がっていた。
いかにも強そうなその男は、自らの拳をふるい、まわりの塀をこわし、つぶし、その姿はさながら『獣』のようで――――
今この数秒の間に起きた出来事をほとんど理解しないまま、僕たちは駈け出していた。ただ、その獣男が放つ殺気から逃れるように……
「――――――――ここまで来れば大丈夫だろ……」
とりあえず校舎の中に入り、一息つく。誰に言うでもなく、ただつぶやくように漏らした僕の言葉に、ガサツな声が重なった。
「だいじょーぶな訳ねーだろ!? んだよアレは!! 人間じゃねーよ」
「うるっさいなー。緊張感まる潰れじゃん」
「いらねーよ、そんな緊張感!!」




