5.居候決定☆
――――――ハンプティダンプティは塀の上――――……
風が吹く――――
僕の髪を静かに揺らす。
鳥が鳴く。陽が笑うように町を照らす。
見慣れたはずの朝の光景が、今日はなぜだか不気味に感じる――――
それは、見知らぬ者を自分の部屋にかくまっている不安からか、あるいは気のせいか……
――――――なにかが、起こる予感がする――――
……なーんて、どこぞの世界の英雄みたいなこと考えてみたり。
通いなれた通学路を辿りながら、僕は昨日の話を思い出していた。
* * * * *
「――――まぁ、仮に君の話を信用するとして……僕にできることは何もないから。出てってくれる?」
「……素っ気ないですね」
先刻、少女が自らの経緯を語ったが、僕はその話を何一つ信じてはいない。そもそも、他人の窓を割り入ってくることからしてあり得ない。
「そんなもんだよ、東京の人ってのは。他人となれ合わない、面倒事は嫌い、いつだって自分が優先」
――――――いや、ちがうか……
それは東京人だけじゃなくて――――人の、性質。
「……いいんですか?」
少女はさっきよりもやや落ち着いた口調で、いやむしろ暗いトーンで言葉を紡いだ。その声音を表すかの如く、顔全体も下の方に向いていて、表情さえ窺い知れない。さらに、聞かれた内容も僕には意味が分からなかった。何が『いい』のか。質問の意味が全く理解できない。
だが――――次の一言で僕は悟る。この少女は……ただの少女ではない、と。
「本当にいいんですか……? ――――バラしますよ。お姉さんに、ぜんぶ」
おそろしく低い声で――――――おそろしく冷たい瞳で。
かくして僕は、この謎だらけの少女を無期限で預かることになったのだった…………




